【劇評220】菊之助の『春興鏡獅子』は、十年後、伝説の舞台となるだろう。
記憶に残る伝説の舞台が生まれるには、なんらかの必然が働いている。
五月大歌舞伎は、三日に初日を開ける予定だったが、緊急事態宣言下にあったために、開幕が遅れた。宣言そのものは延長になったが、僥倖に恵まれ、また、関係者の懸命な努力があって、条件付きではあるものの、十二日から、公演が行われると決定した。
例年五月の大歌舞伎は、團菊祭が行われてきた。
今回は、その看板を掲げてはいないが、第三部の『春興鏡獅子』が出た。音羽屋菊五郎家にとって、もっとも大切は舞踊のひとつである