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君が手にするはずだった黄金について 小川 哲 / 感想

こういった、まさに東京 ハイスペック ストーリーといった文章を読むと、自分も受験競争に巻き込まれていたら、こんな未来があったかもしれないなと思ってしまう。

実際自分がそこまで優秀かはわからないが、わかりやすい競争で知能を図る機会がないまま大人になり、勉強に関してやればできるんじゃないかと思ったまま生き延びてきてしまっているからだ。

これが学歴コンプレックスか…?そんな場面に直面するたびに、恋人のことを考えたりもする。それなりに勉強ができて私大に入って、大手企業に就職して頑張っている…。すごいなぁと思う。尊敬している。
しかし、私にはできないことだなと突きつけられる機会はないまま、私も勉強は得意だったんだよなと未練がましく頭をよぎることが何度もある。

少し偏屈な小説家が主人公で、私の好きな又吉の書く小説も想起させる。

実利的によかったのは、主人公が占いを詐欺だと完全否定するところだ。
私は昨年、四柱推命にハマってから身の回りの人間を当てはめて当たってる…!と感じつつ、その人の性質を勝手に知ったように思って人と接する時の参考にしていた。結構信じていた。
ちゃんと論理的に占いを否定してくれていてよかった。危なかった。
(主人公も少しスピリチュアル的なものを感じていたけれど…)
遊びの範疇で楽しむことにしようと思った。

詐欺に関する話が多いなと思った。
タイトルから興味を持って購入したが、タイトルのような若者のアイデンティティの話というよりは、主人公が人のふり見てわがふり直している描写が多いというか、内省の話だなという印象を持った。

占い、投資、情報商材、炎上、ゴーストライター…。

一度読んだ限りでは、彼らと小説家との共通点を見つけ出し、反省し続けている本にみえた。

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