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『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』感想 映画式視覚型マリオにして傑作エンタメ 原作ゲームへ繋がる新解釈が楽しい


◆映画マリオ見ましたよ(※ネタバレ注意)

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が12月30日にPrime Videoにて配信されたので早速視聴した。以下ネタバレ注意。

とても面白かったです。
「エンターテインメントってのはこういうもんだよな」「これはヒットするしかねえよな」というのをわからせられる。そしてゲーム脳のぼくを「こうきたか!」と見ていて感心させられるつくりだった。こうして感想を綴りたくなったほどのパワーは秘めているのは間違いない。
ただまあ「映画館で見とけば良かったアアアアアアアアアア!!!!!!」と後悔するほどではなかったかなあと。ぼくがマリオ沼にハマっていないのもあるけれど、そんなに積極的にリピートしたくなるほどではなかった。いやほんと良い作品なんですけどね。

ぼくはマリオについては全然詳しくない。
『マリオカート8デラックス』くらいしかマトモに触ったことがない。が、もうぶっちゃけ前情報ナシでも全然見られる作品だった。単独作品として全然イケるつくりになっているし、置いてけぼり感も詰め込み具合もない。まあマリオなんだからそのへんは当たり前を超えた当たり前だが。
なにせ「スーパーマリオブラザーズ」のはじまりの物語とも捉えられる。これについては後述したい。

◆映画ならではの独自解釈マリオ

本作のマリオはNYのブルックリン出身。
最初はマリオにしてはやけにわれわれの世界に近いなと思ったらそうときたもんだ。本来の職である配管工を弟・ルイージと共にやっているし、スマホだって当たり前のように持っている。
そして宮野真守ヴォイスでマリオがふつーに喋る。とはいえマリオらしい声のトーンになってて意外としっくりくるし、十八番のマンマミーヤも再現されている。他のキャラにも共通して言えることだが、「キノピオがキノピオの声でしゃべってる!!」という謎の感動があった。いや自分でも大袈裟だと思っているんだけども。

そんなマリオは意外と負の一面があった。
配管工の仕事はてんでうまくいかないし、家族との対話ではマリオにしては人間臭い負の一面を見せてくる。われわれが知っている「マリオ」という主人公にまだなれていないようだった。
そして実はキノコが嫌いだという意外な独自設定となっている。勿論キノコで巨大化するおやくそくはあるので、それを克服する試練でもある。

これは賛否両論と言われてもおかしくないかもしれない。
本編は意外にも賛否両論と聞いたのだが(個人的には大ヒットした時点で絶賛なイメージだったが)、なるほどしっくりきた。これまで40年もの歴史を築いてきたマリオに「コレジャナイ」という違和感は確かにぼくも感じられた。厄介マリオオタクがこの世の中にいるのかは分からないが、拒否反応を起こす人がいてもおかしくないだろう。喋ること自体慣れない人だっていてもいい。アニメのカービィが喋らないのもぼくは最初抵抗あったもん。

この独自解釈のマリオ。
次項で述べる「異世界転移」によって自分の中で腑に落ちた。

◆まさかの異世界転移

マリオはひょんなことからキノコ王国がある異世界に飛ばされてしまうという、今流行りの異世界転移ものになっている。マリオがキノピオと初めて出会えば「うそ!?キノコがしゃべってる!?キノコが意志を持ってる!?」とめっちゃリアルな警戒していた。
実はこの世界、人間が元々存在していないのだ。ピーチ姫もこの世界出身ではないことが後に明かされる。

面白い所に着目してくれたな、と。

マリオの世界観なんてそんなの深く考えたことがない。
そもそもストーリーが存在するマリオが未プレイなのもあるが。とはいえストーリー自体は「ピーチ姫がクッパにさらわれたのでマリオがステージ進んでクリボー踏んでさあBダッシュ」と極めてシンプルなのは流石に知っている。細かい世界観のことなんて考える余地はなかった。ぼくの中では「元からこんな世界」「マリオはこの世界出身」として世界観を受け入れていた

積極的に世界観考察してみるってのも、うーん。無理して変に話をこじらせちゃってもなあ。ということで考えてなかったかもしれない。
『Dr.STONE』や『さよならを教えて』でマリオがキノコ食って巨大化していたのは幻覚作用というブラックな話はアンオフィシャルだし。(否定しているわけじゃないですよ)

が、冷静に考えるとファンタジー世界なのに配管工ってどういうことだよとツッコみたくあるし、人間キャラは数少ない。マリオシリーズの作品を重ねるにつれてワリオ、ルイージ、デイジー、ロゼッタといった人間キャラは次々と増えていくが、それでも全然少ない。もしかしたらモブとして普通にキノコ王国の一住民として存在しているかもしれないが。

そんなわけでマリオは最初からキノピオという未知の存在に親しんでいたわけではないし、運動神経は転移前からすごいけど、ピーチ姫との訓練パートでは何度もトライアンドエラーを繰り返していた。ニンスイやファミコンのコントローラーを握ってはしょっちゅう穴に落っこちているプレイヤーの分身となるように。
ぼくの中では徐々に原作ゲームとの解釈が一致していく、マリオが「マリオ」という主人公になっていく過程を愉しんでいたわけだ。

◆スーパーマリオブラザーズの誕生

本筋に関してはいつものクッパ撃破物語。
シンプルな構成だし、そこまで深く語れるストーリーではない。ヒロインはピーチ姫ではなくルイージのほうがしっくりきているが。逆にピーチ姫はファイター系になっている。ピーチ姫主役のスピンオフないしスマブラ参戦を成し遂げたからこそ有り得るのだろう。

それでもびっくりポイントはちゃんと存在している。
先にオチを明かしてしまうと、なんとブルックリンと異世界が悪魔合体してしまう。ラストバトルにてマリオがブルックリンに帰ってきた、と思ったら他のみんなも、そしてラスボスであるクッパもやってきたのでそこでルイージと共に最終決戦を繰り広げる、壮大なる盛り上がりを見せてくれる。最終決戦後、マリオが家の窓を開ければそこにはキノピオたちの街が――――と完全に悪魔合体成功。

この展開までは予想できなかった。約束された結末なのに。
勿論これは公式設定だと明かされていないし、単なるぼくの勝手な妄想解釈にすぎないのだが、本映画版が原作ゲームの前日譚として完全に捉えられるようになった。すごぶる面白い解釈だと思う。

そしてこの映画、タイトル回収が見事だ。
見事クッパを倒せば、家族やブルックリンの人々がマリオとルイージを認め「スーパーマリオブラザーズだ!」とものすごくしっくりくる英雄視してくれた。
まあ冷静に考えればクッパがこの世界にやってきてまだ数分も経っていないんだよなあとか、なんでスーパーやねんとか、疑問を投じたくなる。今更過ぎる上に原作ゲームに飛び火かけまくるけど、ほんとなんでスーパーマリオなんだろうな。ハイパーマリオやウルトラマリオじゃないのか。
それでもマリオたちの活躍はスーパー級にしっくりきていたのは間違いない。

クッパはミニマム化されて幽閉されたが、どうにかここから脱出して今度はピーチ姫をさらいに行っていくのだろう。それこそ物語は初代『スーパーマリオブラザーズ』へつづくのだろう。
最後にヨッシーの卵が映し出され、でっていう鳴き声が聞こえたので、確実にやりそうな次回作は『スーパーマリオワールド』を踏襲するのかもしれないが。

◆バラエティ豊かかつメリハリの取れた構成

この映画は飽きさせない構成が巧い。メリハリが取れている。
なんならもう一言で言えば「おれのかんがえたさいきょうのやりたいほうだいマリオ」である。

いつもの横スクロール、マリオメーカーで作ったと思われる特訓ステージ、ドンキーコングの友情出演、マリオカート(レインボーロードを駆け巡る)と、ジャンルを問わないおもちゃ箱のようなつくりになっている。この映画版をベースにした逆輸入めいたゲーム化も実現化できるかもしれない。ボリュームについてはちょっと心配だけど、2000円くらいのゲームならいいんじゃねえかな。

横スクロールパートからもう面白すぎて、視覚的に目で追って楽しむ新解釈マリオになっている。制作側も細かいステージ配置とかひとつひとつ拘り抜いたのだろう。後半のマリオとドンキーの同時移動なんか「これ動かすの相当難しいだろ」が念頭に置かれた感想である。つまるところそれくらい感心している。

もしかして章分けできるのでは?と興味が湧いてきたのでやってみた。
これまたぼくの勝手な解釈で大変恐縮極まりないし、そもそも円盤だと正確にチャプターが分けられている上に更に文節されているかもしれない。あくまで参考程度にしてほしい。

第1章:ブルックリンでの日常と異常(~0:17、約17分)
第2章:キノコ王国へ(~0:34、約17分)
第3章:ジャングル王国へ(~0:53、約19分)
第4章:クッパ城へ(~1:13、約20分)
第5章:最終決戦(~1:23、約10分)、以降ED

第3章までは大体20分弱、終盤の第4・5章は30分で納めているな。
スタッフも「ここのパートはなるべく20分以内に納めよう」と判断したのかもしれないし、泣く泣くカットせざるを得なかった小ネタがあったのかもしれない。この映画は相当小ネタが膨大だと聞いたからなあ。

任天堂公式HPには『マリオ映画の攻略本』という小ネタまとめブックレットが公開されている。これでもほんの一部ってVジャンプの攻略本かよ、いや十分満足したけどさ!誰かアルティマニア作ってくれないか!
なお閲覧するにあたってニンテンドーアカウントにログインする必要があるので注意。

◆ラスボス・クッパの絶妙すぎる憎めなさ

本作のラスボスにしてマリオとライバル関係となるクッパ。
個人的にはマリオシリーズで一番あざとかわいいヴィランだと捉えている。

上記の「Nintendo みまもり Switch」の紹介動画ではクッパJrとの親子なやりとりがめちゃくちゃかわいい。先月発売されたばかりのリメイク版『スーパーマリオRPG』では仲間になればやはりあざとい一面が見られるのだという。いつかやりたいなあ。

そんな本作のクッパ。
「なんかかわいいとこがあって憎めない」「ヴィランだから同情せず倒せる敵になるべき」のバランスが絶妙だった。

本作でもクッパはピーチ姫と結婚したいほどのガチ恋勢であり、そういうところが意外かつさらう理由として納得なのだが(十分ストーカーの部類だが)、ピーチ姫への愛が重すぎるラブソングを歌っていると流石のぼくでもドンヒキする。あの歌唱シーンはギャグにもなっていたけどね!まずクッパがピアノを弾けるギャップが面白可笑しいんだけどね!頭ん中ピーチ姫で詰まっててやべーけどね!

そういうわけで、厄介すぎるガチ恋粘着獣のラインに留めて素直に倒せるヴィランと見做せたし、(当たり前のことだが)倒して消滅ではなくミニマム化して瓶詰してEDでひとりさびしくピアノを弾いているとかわいそすぎない程度に笑える憎めないキャラクターに仕上がったのだ。小型ピアノはキノコ王国の誰かがわざわざ用意してもらったんだろうなあと思うと僅かな救済になっていてほっこりする。クッパが解釈通りのキャラでぼくは満足なわけですよ。

***

欠点はなくはない。
あのネガティブスターは結局なんなんだよ!?つーかなんでここに幽閉されていたんだよ!?と謎が回収されなかったし、ネガ発言は浮いていたのが否めない。「出来過ぎなハッピーエンド」と斜に構えた発言はちょっと水を刺しちゃったのが好きじゃないなあ。ハピエンなのは別に気にしていないのだが…ご都合主義なんか面白ければ大して気にしないし。
ピーチ姫の元の世界に関して掘り下げはなかったが、次回作でガッツリやる、本作では敢えてやらないと割り切ったのかもしれない。

まだまだ語れるところはありそうだが、とりあえず書きたいところは書き上げたので今回はここまで。
マリオにあまり思い入れないぼくでも熱を入れて本作の魅力を言語化したくなったあたり、間違いなく本物の映画である。マリオのゲームやったことない人もマリオのゲームやりつくした人も満足させますマリオです。


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