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2024年夏ドラマ『磯部磯兵衛物語』が思いの外すごく面白いから見てほしいで候(現在TVerで1~4話無料配信中!)


◆磯部磯兵衛物語

磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』という漫画がある。

「処す?」の漫画と言えばおわかりだろうか。
2013年、週刊少年ジャンプの某号にて『ONE PIECE』の休載枠を埋めるための代理原稿(代原)として読切が掲載されたのがはじまりだった。
浮世絵風の絵柄で描かれるシュールギャグ漫画というコンセプトはとてつもなくインパクトがすさまじかった。それはもう一度見たら忘れるほうがむつかしいほどに。
やはり一発ネタな出オチなのは否めないが、個人的にはジャンプは良い暗器を拾って見つけてしまったなと誇りになっていた。もちろんめちゃくちゃ面白かった。寧ろ一発ネタにするには勿体ない逸材だった。

その期待に叶えてくれたのか、翌週号にも読切掲載。流石に翌週掲載は急ピッチなので読者の反響を捉えるのはむつかしいのだが、編集部は明らか期待の新人として投入したと伺えられる。
そして数ヶ月後には正式に連載決定&FLASHアニメ化決定という派手なデビューを果たした。

結果、2013年から2017年と4年間連載された。
合間にはメディアミックスもやはり展開されており、TVアニメではないがショートアニメ化は勿論のこと、

何故か舞台化もされた。なんで?

◆連続実写ドラマ

そして連載終了から7年、何故か実写ドラマ化が決定した。原作者の仲間りょう先生も困惑していたが、われわれファンの殆どは全国一斉に声を揃えてこう思っただろう。「『高校生家族』のほうじゃねーのかよ!?」と。

そも数年前に何故か舞台化した時点でジャンプ御乱心案件なのだが、あいにくそちらのほうは未見。評判は良いらしい。題材が題材だけに面白くならないほうが絶対おかしいだろう。

本実写ドラマ版は初っ端から期待しかしていなかった。どちらかというと期待よりも「楽しみ」のほうが勝っていた。キービジュアルを見て勝ったなガハハの精神だった。そしてPVを見てもう面白そうな予感しかしなかった。

「原作は浮世絵風の絵柄があってこその面白さがあるんだろーが!」「実写でやったらそのまんまで意味ねーだろーが!!」と言われそうだが、原作は途中から浮世絵もどきな絵柄に崩していたし…あれはあれで味があるが。ただ母上様(クソババア)だけは強者の格を維持するためだからか終始THE浮世絵Styleだったが。

というわけで蓋を開いた結果。
予想以上にドチャクソ面白い。全10話とか言わずに第2期や第5期やってほしいしマサムネ編を映画化してやってもいい。

◆原作忠実なグダグダ感とゆるさ

原作再現が高くて見心地が良い。
この言葉がいの一番に連想された感想だった。あ、「見心地」とは「あーなんかたのしーなーこれ、終わらんでほしいなー」となんだか温泉に漬かっているような良い気分に浸れる快感である。
没入感と言えばいいじゃんとツッコまれそうだが、そちらの三文字は本格SFアクション超大作などに見入っているときに使うべきだと思う。ぼくがよく使っている「見心地」とは大抵日常ギャグアニメの感想で打ち出している言葉だ。どのみちどっちでもいいじゃん。

毎話30分だが、4,5本のショートショート構成になっている。
原作自体巻末ギャグ枠にしてページ数が短い。長編もあれば次号へ跨ぐ回もあるが、序盤は基本短編多し。原作のどこまでやるのかは分からないが、とりあえずテンポに関してはまず完璧。理想通り。ショートショートのテンポの良さはアニメだけに限らないことが本作で証明された。

そして、磯兵衛たちのキャラ解像度が高い。
これは視聴前から注目していた点だ。実写化すると磯部衛がイケメンに寄っている気がしたが、磯兵衛の喋り方とか演技を見ていて思わず「これだよこれ!」な納得感があった。なんかもう、磯兵衛らしくすげえバカっぽい。イケメンバフ無効化させたようなバカっぽさがある。いや、寧ろかわいげのあるバカに見える気がするか?磯兵衛はバカ100%だと思っていたのになあ。

なにより母上様(クソババア)の強キャラの期待値がバリクソ高い。
流石に浮世絵フェイスではないが、実写版の母上様は見るからに強そうなオーラがすごいんですよ。それはもうクソババアとルビを振るのはスゴイシツレイなくらい美人。どうしてあんな息子が生まれたのかも謎。
でも異空間から出現したり、宮本武蔵をライダーキックで吹っ飛ばすおかしいところはちゃんと原作再現でほっとした。原作もだが、母上様の活躍は面白さ保証だ。

◆実写だからこそのジワりかた

ぼくが『磯部磯兵衛物語』の好きな理由のひとつとして、江戸時代を下敷きにしていながら時代考証ガン無視かつ謎のワクワク感がある作劇である。浮世絵風の作画なので敢えて古臭く見えるのだが、やっていることは極めて新しい。NEOEDOとも言える。平成末期の漫画だが、今の令和にも通じる。というかもう10年前に始まった漫画なのがやれ恐ろしい。

本作における時代考証ガン無視要素の代表例は平賀源内シリーズで、Wi-Fiやファミコンのコントローラーらしいものを発明しているのが特徴だ。ぼくは原始人にドリームキャストを遊ばせたい夢をクソガキ時代から持ち続けているので、本作では江戸時代ではあるがソレに近い謎の好奇心があった。

その実4話はファミコンのコントローラーで格ゲーコマンドを入力して磯部衛のヘアスタイルを変える話で、もう文体化するだけでも面白いのだが(ヘアースタイルとは無縁すぎる格ゲーコマンド入力なのがミソ)、高杉くんのプロゲーマーじみたコントローラー裁きはめちゃくちゃじわじわきてた。
役者のことは知らないがあなた実はウメハラと一度戦ったことあるのでは?と問い詰めたいほどにガチな入力の仕方で、「これは原作にはできない動画の面白さだ!!」と勝手に誇っていた。誇らせてほしい。誇っていい。

他にもすごい数の磯部衛が集まってきている分身の術とか、母上様のスタイリッシュライダーキックとか、原作を徹底再現した宮本武蔵のチープな下半身とか、「なるほど実写に落とし込むとそうなるのか」な見所さんが多い。CGは多様しているが、そのCGもミスマッチ感が面白さを引き出していると言えるだろう。
もう全部見所さんを吐き出すのはすげえもったいない気がするから、是非あなたの目で確かみてほしい。

◆オリジナルメタ要素

第1話には実写化における会見のシーンがある。
明らか現代が舞台で磯部衛と中島くんがソレを受ける一連のくだり。明らかメタ要素なのでちょっと賛否両論かもしれないが、個人的には『銀魂』がアニオリで勝手にメタ事情やっているようなソレに近いのでアリだった。

そして第5話ではショートショートの話の前にオリジナルトークが入るのだが、もう映画化のことを考えていた。是非やってくれ。

ちなみに監督・脚本の細川徹氏はあまり詳しくないのだが、2018年に『深夜!天才バカボン』を手掛けていた方と知れば納得だった。あれも1話からメタネタがすごかった。『おそ松さん』の二番煎じと言われると否定できなくはないのだが…
ただ『深夜!天才バカボン』は序盤はすごく面白かったのが中盤からのメタネタが受け付けづらくなってしまった思い出があったので、さて本作はどうだろうかと軽く気になっていたら全然許容範囲だった。原作尊重してくれている。原作者の仲間りょう先生も手癖でこういうメタネタやりそうな解像度があった。

◆今ならTVerで無料配信で候

OPEDは主題歌すらない手抜き映像だし(こんなドラマにどんな曲を使えというんだ)、THE時代劇なセットには拘っているがあまり金を使っているようには見えない。WOWOW放送なのも踏まえるとあまり予算がなさそうなのが伺える。

故に現在放送中なのはあまり知られていない気がする。
WOWOWと言われるとぼくの中ではワンランク上のアニメチャンネル並みにハードルが高いイメージが今でもあるのだが、だがブラウザバックせずに刹那ほど待ってほしい。

TVerなら第1~4話が無料で見られる!!スマホでもタブレットでもパソコンでも見られる!!

こういう合法の動画サイトの存在は本当に有難いで候。
まあ4話だけは8月9日(金)までとあるので、もしかすると1~3話は恒常無料配信なケースかもしれないが、別に1話飛ばしてもどの回から見ても全然問題ない。そもそも伏線とか期待する作品ではないし。

放送前は「楽しみ」で気が付けば「あー放送していたんだTVerで見てみよっと」の関心だったのだが、今では「毎週超楽しみ」の枠に入るほどぼくの中では評価が極めて高い。
是非ひとりでも多くの方に見られてほしいし、マサムネ編を劇場版でやってもいいし、このスタッフなら『高校生家族』の地上波放送も是非目指してほしい。オススメですよ。

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