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ジャンクの重鎮 Yashica Electro35 ゴールドメカニカ

 ここからジャンク道に入りました。

注意点

 通常のカメラレビュー記事ならばカメラのスペックやストーリーを述べるだろう。ただこの記事を読む方にはこれからこのカメラを買おうとしているか、または手に入ったけどどうしようという方も想定しているので購入の際に必要な注意点から書いていこうと思う。

購入

 まずこのカメラを欲しいと思いどこかで買おうとしているならば中古カメラ専門の実店舗か、そういった店舗がやっている通販に限る必要がある。長く営業していらっしゃるカメラ専門店ならばこのカメラの癖とチェックは慣れたものだろうと思う。そういったお店で実働品、完動品と書いて出品されているならば安心して購入して大丈夫だ。

 以下につらつらとこのカメラの癖を述べていくが最も危険な購入はインターネットで個人から買うことだ。このカメラは常習故障箇所と故障しているように見えて故障していない箇所と動いているように見えて故障している箇所があり多少慣れていても故障を見落とすことは多いだろう。なので購入する際は値段に諸々のチェック代分が上乗せされていると思って多少高いと思っても買うことを勧める。ジャンクコーナーによく置いてあるが十分な清掃と整備の設備があってメンテナンスが好きな人以外はジャンク品や未確認品のこのカメラには手を出してはいけない。

どこを確認していくか?

 ここからはYashica Electro35 ゴールドメカニカを誰かから貰ったとか押し入れから出てきたとかそういった際にどこを確認していくかについて自分がやる範囲について述べていく。

電池ボックス

 まずこのカメラは電池を入れて使う。古いカメラなので正規の電池は既に終売しており使う際は専用のアダプターを買うかアルミホイルとかで創意工夫する必要がある。そこでまず”あるある”として古い電池を入れっぱなしままでしまい込んでしまい電池ボックスの中で古い電池が液漏れを起こして内部で錆が発生したり電池ボックスと本体を繋ぐ配線の半田が剥がれていたりする。この時点で通電はしない。ただここだけの確認では電池ボックスから本体へ通電しないだけの故障であって本体の故障チェックは別途必要である。

ランプ

 電池ボックスは見た目綺麗、なんとか電池を入れてみたら次はカメラ本体に三か所あるランプを確認する。これらの確認ランプは今のLEDランプではなく、すべて電球(ムギ球)なので電球が切れていることがある。そしてこれらは個々に切れている時もあれば全滅していることもあるので個別に確認していく。本体の裏にあるバッテリーチェック用のランプはどうも切れやすいようだが赤い確認ボタンも普通に押しても反応せず爪楊枝とかで深めに押すと反応することがある。私の場合は深めに押して反応がなければバッテリーチェック用のランプは切れていると判断する。
 次に軍艦、カメラ上部に『SLOW』と『OVER』と書いてあるランプが二つあるのでここを確認する。まずレンズの絞り値を開放のf1.7に設定してASA(ISO)の設定を100くらいにしてから明るい方に向ける。そして巻き上げレバーを動かしてシャッターをチャージ状態にしてからシャッターボタンを半押しにすると設定された絞り値とASAの設定に対して内部のシャッタースピード上限値より明るすぎれば『OVER』のランプが光り、レンズを暗い方に向けてシャッターボタンを半押しにするとカメラ側で「スローシャッターで設定するよ」と『SLOW』のランプが光る。このランプが二つとも切れている可能性や片方だけ使える場合もある、また個体ごとの癖としてシャッターボタンの半押しがとても繊細なことが多い。軽く押すだけで反応する時もあればシャッターが動作するギリギリで反応する時もありこの辺はその個体ごとの癖を探す意味で丁寧に確認してみてほしい。

その他

 レンズにカビやクモリ、チリなどの混入などはないかはシャッター設定を『B(バルブ)』に設定してフィルム室の裏蓋を開けて明かりに照らして見ると分かりやすい。ファインダー内の汚れやチリ、二重像の状態は室内より遠景を見て確認すると分かりやすい。あとフィルム室の遮光材(モルトプレーン)が加水分解してボロボロになっていると蓋の隙間から漏光してしまい写りに影響が出てしまうので貼りかえる必要がある。込み入ったところだとピントの無限遠と二重像の無限遠位置が合致しているかなどがあるがここまでくると分解する必要が出てくるのでおすすめはできない。
 一番確認が難しいポイントはこのカメラはシャッタースピードが今何分の一速になっているか全くわからないので裏蓋を開けてチェックメーターで計測しようにも自動決定と計測値が一致しているかさっぱりわからないのでこの点は正直ぶっつけ本番になる。
 ざっくりあげるとこんな感じになるがここからはカメラの話をしよう。

Yashica Electro35 ゴールドメカニカ

 基本的には初代Yashica Electro35と同じ性能だがこのカメラの名前にあるGはゴールドのGであり、どうやら内部の電子接点に金が使用されているらしく錆防止や通電性能が良くなっている、らしい。らしいというのは私はこのカメラの電装系の分解整備は心の底からやりたくないので見たことはない。
 ランプ周りのプレートも点灯が分かりやすいように初代機では白いプレートが使用されていたがゴールドメカニカでは黒いプレートになっている。あとは巻き上げレバーにプラスチックの指あてが追加された。これは使う時にとても助かる改修で金属むき出しの巻き上げレバーは指が痛くなるし冬場は冷たいのであまりいいことはない。

スペック

搭載レンズ:Yashinon-DX f1.7 45mm
デカい。

レンズ

 DXの名に嘘偽りなく本当に大きいレンズが付いている。当時のセールスは「ロウソク一本の明かりでも写る」だったらしい。実際にやったことはないがf1.7ととても明るいレンズが搭載されておりISO 400以上の感度を持つフィルムならば三脚を使わず手持ちでもちゃんと保持をすれば誕生日ケーキのロウソクくらいでも撮れそうな気がする。

物足りないかも知れない感度設定値

 カメラ上部、軍艦部には入れたフィルムのASA(ISO)の値をカメラに設定するダイヤルが付いている。ただこのダイヤルの上限値は500までであり現代の高感度フィルム、ISO 800などは設定できない。つまり概ね使えるフィルムは感度400程度までである。後に出るYashica Electro35シリーズでは高感度にも対応していくがゴールドメカニカの時点では上限値が500までであることは十分留意しておく必要がある。

うわさ

 当時のヤシカはどうも新発売するカメラであっても直近のカメラから部品を流用できるならば割とやっていたらしい。例えば初代機の指あて無しのゴールドメカニカがあってもおかしくはない。またフィルム室の裏蓋に入れたフィルムの名前や感度を記入して入れておくビニール製のポケットが付いていたり付いていなかったりする。マイナーアップデート機もあるとかないとかでゴールドメカニカだけどASA設定ダイヤルが1000だかまであるものがある噂もあり私も試したいことがあるので探している。

めんどくさいけどすごいよ

Yashica Electro35 G
Yashica Electro35 G
Yashica Electro35 G
Yashica Electro35 G
Yashica Electro35 G
Yashica Electro35 G

 明るかろうが暗かろうが、絞ろうが開放だろうが、無限遠だろうが手前だろうが撮れる、とことん撮れるのがこのカメラだ。最短撮影距離は0.8mでマクロ撮影までは厳しいが寄ろうと思えば寄れる。そして完全動作品であるからこそ測光が正確かつシャッタスピードが定格通りに出るのでレンズの描写性能をカメラ側が見事に引き出していた。

 大口径故か、レンズ検品の正確さか、なぜここまでの色や質感の描写が可能になったかはわからないが私はこのレンズを並みのレンズとは言えないし、このカメラのすばらしさを否定することはできない。

価値

 確かに今に残るこのカメラは故障品が多い。買う際には注意が必要だし、使う際にも気遣いが必要だ。まともな検品を経た個体は決して安い値段ではないだろう。それでも値段と価値は全く乖離していない、一度使えば手放したくなるなるだけの良さがこのカメラにはある。Yashica Electro35シリーズの中でも初期のものであり、後の名機や癖機ほど語れることもないがむしろElectro35のスタンダードな良さを楽しめるカメラがこのゴールドメカニカだと思う。機会があったらぜひこのカメラを手に取って好きなフィルムの一本でも撮ってみてほしい。スタンダードなフィルム、高級フィルム、エフェクトフィルム、どんなフィルムであってもこのYashica Electro35 ゴールドメカニカは応えてくれるだろう。

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