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ほこりの中から、 Konica ⅡB
届くカメラは大体ほこりまみれだ。
いつも届いたカメラは掃除をしつつ正規の操作手順ができるか確認していく。巻き上げはできるか、シャッターチャージに引っかかりはないか、ヘリコイドは動くか、ファインダーはどうか、普通に使う分に差支えがあるかどうかを探していく。
何もせずにそのまま使えるカメラというものはない。どこかに何かがあってそれを見つけて掃除をするなり整備をするなりがいつものオキマリというやつだ。今回のカメラもそんなオキマリを経て使えるようになったものだ。
小西六のKonica ⅡB
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今の最新機、デジタルミラーレスからすればこのカメラは全く違う機械といえる。写真一枚を撮るために35mmフィルムを装填して都度に巻きあげて、シャッターレバーを引きバネをチャージ、レンズユニットをくり出して、ヘリコイドを操作して目標をファインダーの二重像枠に合焦させる。ここまでやってようやくシャッターボタンを押せる機械。1955年発売、2022年現在からすれば67年前になる。取付レンズはF2.8、シャッタースピードはB/1~1/500。このシャッタースピードの指標値は整備してもあまりアテにはならない。詳細な説明は避けるがこのカメラは1/500などの高速シャッターを動かす場合にはアシストの巻きバネと主力の引きバネの二つの力でシャッター羽を弾く。整備をする際には汚れをすべて掃除して低速側のガバナー等に注油をするがこのバネ、とくに引きバネに関しては経年による弱りが生じていることが多い。シャッタースピードを1/500の最高速度に設定しても主力の引きバネが弱っていると簡易計測でも1/250近辺が出ていればいい方になる。
じゃあ全部ジャンクやんけ
とはならんのだよ。ここではジャンク品の定義を目的の用途を機能不全などで達成できなくなった機械ということにするが引きバネや巻きバネが弱ったKonica ⅡBでもひとまず掃除と整備をすれば1/250くらいのシャッタースピードは出る。つまりISO感度が高めのフィルムを入れて適時絞るなりすれば撮れるわけだ。使う際に感覚を最高1/250くらいまでのシャッタースピード優先カメラにすればいい。被写界深度とかそういうツウなことは忘れろ。では実際に納戸の奥からほこりと共に出てきたKonica 200のいつ期限が切れたかわからないフィルムを装填して撮影してみた結果をみていこう。
人間だろ。なんとかしろ
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カメラは人間が使う道具だ。絞れ、シャッタースピードが足りないならとにかく絞れ。露出計が出した適正値より一段暗く絞れば丸の内のビルに反射した陽光、しかも逆光相手であってもこのカメラに付いている小西六のHexar 50mm 1:2.8なら期限切れフィルムでもちゃんと撮れるんだ。
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日陰から撮ってもシルエット、空の雲と青の差、ビルのガラス質感などが奇麗に映る。ただブレ抑制はシャッタースピードが一段遅くなるにつれて厳しくなるし、絞りを開放にすればするほどシビアな合焦は難しくなる。つまり現像後に拡大プリントなどをする場合は三脚は必須だろう。
期限切れフィルムの苦手な空間
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絞ってシャッターを速めにすると暗めに撮れる。だがこの写真では期限切れフィルムという悪条件も揃ってか画面内の物体質感以上に銀塩の粒子感が出てしまった。
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こちらの写真は水の質感やコンクリートの質感などかなり欲しい描写を得られた。ただ僅かにブレている点が否めない。そしてこの写真は快晴の午前中に撮影したが夕方か? という印象になってしまった。
こういうの好きだろ?
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よく古いカメラやレンズを扱っていると「ぐるぐるボケ」という言葉を聞く。これはレンズ性能の”悪さ”に起因する問題だが現代では好まれるらしい。この写真では合焦点の背景が大きく渦を巻いている。快晴かつ午前中の強いEV環境で絞りを開放f2.8、シャッタースピードは一応の1/500にして撮影したが順光でも思わずこの描写になってしまった。
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こちらの方がこのレンズ本来のボケ感に近い。同じ快晴の日だったが撮影した時間が午後の夕方前、前出の写真とは全くEVが異なる環境だ。つまり適切な明るさ(EV)であればこのように真っすぐなボケになり、過剰な明るさになるとレンズに入る光量が多すぎてぐるぐるボケになる。
埃と誇り
かつてメーカーが誇りをもって世に出したカメラは今や埃を被りカビくさくなっている。しかし発売から67年経過してもカメラから誇りが失われたわけではない。レンズは掃除して透き通るならそれでいい、シャッターも弱りはあるが撮り方で工夫すればいい。67年前の誇りに積もった67年分の埃を掃除して整備、そして撮り方で工夫することは67年後の自分ができる誇りなのだから。