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『稽古相手を選ぶこと』のリスク

稽古相手を変えない人

本部道場では、一時間ずっと同じ相手と組む稽古と、技ごとに相手を変える稽古があります。

相手を変えない稽古は基本的な型稽古が多いです(道主、関師範、小林師範、金澤師範など)。

一方、相手を変える稽古は応用技の稽古が多い傾向にあります(遠藤師範、安野師範、宮本師範、栗林師範など)。

ここで言う応用技とは、相手の体格や状態に合わせて技を変えていくという意味です。マニアックな技という意味ではなくて。

応用技を行う上では、相手に応じて臨機応変な対応をすることが求められるので、その稽古として頻繁に相手を変えることはとても理にかなっています。

ですが、中には師範から指示されても稽古相手を変えようとしない人がいます。

つまり、今組んでいる相手を選んで稽古しているということです。

ぶっちゃけて言うと、私は稽古相手を変えない人がとても嫌です(笑)

なぜなら、稽古相手を技ごとに変える師範はそこにメリットがあると思っているわけで、相手を変えないことはその師範の意に反することに加えて、他の稽古人のメリットも阻害しているからです。

なぜ相手を選ぶ人がいるのか、何かいいことがあるのでしょうか?

稽古相手を選ぶことのメリット

先述のとおり、稽古相手を変えるメリットは「応用技の稽古において、適宜相手を変えることに意味がある」という点です。

そのメリットを放棄してまで相手を変えない理由は何でしょうか?

それは「自分のやりたい稽古があるから」に集約されるでしょう。

上手い人や対等な人と自分の技で稽古したい、元気に動ける人と気持ちよく稽古したいなど。

そういう人にとっては、誰と組むか分からないという状況はリスクでしかないんですね。

稽古相手を変えたときに、次の相手が技術的に劣ると満足のいく稽古にならない。だから相手を選んでしまおうと。

稽古相手を選ぶことのリスク

確かに稽古相手を選ぶことにメリットはあるだろうなと思います。

その一方で、応用技の稽古に限らず、稽古相手を選ぶことによるリスクは存在します。

それは「稽古相手のワンパターン化」です。

稽古相手の基準を狭めることで、同じような相手との稽古が増えます。そうなれば確かに自分のやりたい事はやれるでしょう。

しかし、異なるスタイルの技術や新しい知見を学べず、新たな出会いも少なくなることで、自分の合気道が悪い意味で狭くなっていく危険性があるということです。

例えば、学生は部活動でほぼ同じような相手としか稽古できません。

しかし、本部に行けば技術の高い指導員やベテランの意地悪な稽古人、筋骨隆々な外国人など、様々な方がいらっしゃいます。

その方々から得られる技術や知見は、同世代との稽古だけではまず得られないでしょう。

(その環境を、空き時間があればいつでも、無料で利用できる都内の学生は羨ましい限りです)

もちろん学生でない私でもそうで、最近全く異なるスタイルのおじさまに声を掛けられ、みっちりレクチャーされました(笑)

稽古したい方ばかりを選んでいたら、その方から学ぶことはできなかったでしょう。

既に進む道を決めている高段者の方は別ですが、そうでなければ様々な方と稽古できる柔軟さを持ちたいものです。

その柔軟さを失うと、稽古相手のワンパターン化によって新たに学べることが少なくなり、自分の合気道が狭まってしまうリスクが生まれるでしょう。

稽古相手を選ぶ「段階」がある

ここは私の及ぶところではありませんが、先述のとおり「高段者の方」に関しては話が違ってくると思います。

この方々は、新しいものをインプットするより、既にインプットしたものを具現化することを優先する方たちで、あれこれ手を出すことが悪手になるかと思います。

ですので、稽古相手を選ぶには必要な水準があり、高段者でない者が稽古相手を選びだすと危険と言うこともできます。

例を挙げると、せっかく猛者がウヨウヨいる本部で、

・同じ大学の学生とばかり組んでいる子
・軽くて柔らかく、投げやすい人とばかり組んでいる若者
・自分より明らかに上手い人との稽古を避けるオジサン

などなど(笑)

相手を選ぶことで勿体ないことになっている人は多いのではないでしょうか。

もちろん、指導員や高段者の方を積極的に選んで挑んでいく場合は別ですが。

変な人に当たるリスクへの対応

これまで、稽古相手は選ばずにいきたいというスタンスで話してきました。

しかし、「本音を言えば選びたくない…」という稽古人もいるでしょう。

一般的に問題視される稽古人は①怪我させる人と、②稽古が成立しない人と、③教えたがる人です。

怪我させる人は自分の安全のために避けるべきでしょう。

受けの回避の技術を学べるかもしれませんが、大怪我したら技術もへったくれもありません。

稽古が成立しない人は、技術を磨きたい人にとっては辛いところかもしれません。

その方に向上心があれば良いのですが、有段者向けの稽古の場合はそうでないことも多々あります。

稽古の目的が違えば避けるのもやむなしかもしれません。

教えたがる人については、一度は受け入れるべきだと考えます。

なぜなら、スタイルや考え方の違う方の意見はとても貴重で、自分のやりたい稽古ばかりしていると気付けないポイントが多いからです。そこに相手の上手い下手は関係ありません。

もちろんあまり意味のない意見もあるでしょう。その場合は避けるのもやむなしかもしれませんが、まずは素直に受け入れたほうがいいと思います。

選びたい相手、選びたくない相手がいるのは自然

色々言ってきましたが、実際のところ稽古相手を選ぶ人は多いのではないかと思います。特に段位が上がれば上がるほど。

目的があって稽古に来ているのですから、それは当然のことでしょう。

ですが、相手を選ぶことなく色々な方と稽古をした方が、自分の合気道が広がっていくかもしれません。

自分の合気道を広げるべきか、狭くするべきかは人によりけりですが、少し考えてみるのもいいかもしれませんね。

それでは、明日も楽しく稽古しましょう!!

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はるとび@合気道
大学合気道部のコーチをやっております。頂いたサポートはコーチの活動経費(交通費)や大学合気道部の寄付に充てています。