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フランス映画の巨匠ジャン・ルノワールの インド映画 : 河 (The River/ Le Fleuve)

父親が印象派画家のオーギュスト・ルノワールである、フランス映画の巨匠ジャン・ルノワールの初のカラー映画『河』は、ルノワールの絵画を見ているような色彩鮮やかで柔らかい雰囲気と、インドのスパイス色が散りばめられたエキゾティックな陶酔の映像美を背景に、3人の少女の儚い恋心が織り交ぜられた傑作。1951年ヴェネツィア国際映画祭国際賞を受賞。

制作年 : 1951年
制作国 : アメリカ
原作 : ルーマ・ゴッデン
キャスト : ノラ・スウィンバーン、エスモンド・ナイト他

あらすじ
インドの聖なるガンジス河と共に生きるインド人の人々、風土、文化を背景に、ガンジス流域にあるベンガル地方の村で黄麻工場を営む、英国家族の長女ハリエット14歳と、裕福な地主の一人娘で18歳のヴァレリー、そして隣家のインド人と英国人との混血の娘メラニーの3人が、メラニーの父を訪ねに来たアメリカ人の退役軍人ジョン大尉に恋に落ちてしまう。思春期の3人の恋の芽生を軸に、子供から大人に成長していく様子を描いた物語。

ジャン・ルノワール監督について
『大いなる幻影』や『ゲームの法則』で世界に名を馳せたジャン・ルノワールは、ナチス占領下のフランスを逃れてアメリカに渡り、ハリウッドで『南部の人』や『自由への闘い』等の作品を創り上げた。
叙情的な原作『The River』に感銘を受け、フランスに戻る前の1949年にインドに渡り、初めてのカラー映画に挑戦する。原作者のルーマ・ゴッデンと共同で脚色をする一方、撮影補佐として、インド映画界の巨匠サタジット・レイが加わる。

見どころ⑴ ルノワールによるインド映画ーマーティン・スコセッシの解説
まず、インド版『若草物語』のような物語なので、子供から大人まで見られる。DVDのオプションに、アメリカの映画監督(この方も巨匠)のマーティン・スコセッシの解説が10分程度あるのですが、スコセッシも9歳の時に父親に連れられて、この映画を観たのが初めてだったそうだ。多くの映画人がジャン・ルノワールの助監督を務めたり、彼から多大な影響を得るのだが、スコセッシもその映画人の一人。そんなスコセッシにとって、ルノワールの映画で一番好きなのがこの『河』である。

スコセッシがまず惹かれたのが、色彩豊かな映像。ルノワールの色使いは父親譲りなのか、絵画を見ているようなそんな錯覚を起こさせる。次に、インドの風景と人々の暮らしぶり。インドについて何も知らなかったスコセッシは、初めてヒンドゥー教の祝祭であるディーワーリーやホーリー、音楽やダンスなどの文化を知ることになる。ルノワールの撮る、メラニーがラーダになってクリシュナの前で踊る婚礼のシーンは見事である。

そして監督として何より惹かれるのが、ルノワールの映画に関わる人々への思いやりや愛情が、スクリーンから感じ取れるという点であると述べている。主役の大人たちを除いて、ほとんどの役者はアマチュアだった。このバランスも映画に反映され、少女や子供達や自然でイキイキとした演技を見せてくれた。片足が不自由なジョン役のトーマス・ブリーンは、実際に戦争で片足を失ったため、彼の苦悩も現実としてにじみ出ている。


見どころ⑵ ガンジス川と少女たち成長
英国人の植民地だったインドということから、この映画は上流階級の西洋人から見た、型にはまったインドを描いていると批評されたかも知れない。
しかし、原作者の ルーマ・ゴッデンの実際にインドで幼少期を過ごした記憶に残る70年前のベンガルはとても美しく、人間同士が河の緩やかな流れのように、静かに穏やかに関わりあっているように見える。階級制度はあったにせよ、そこには人間同士の暖かいふれあいがあったように思える。

少女3人が初めて見た白人の青年ジョン大尉、しかもハンンサムときたら恋に落ちるのも当然。3人は初めての恋に戸惑いながらも、ジョン大尉をものにしたがる。自分に自信が持てないハリエットは、ジョンへの恋心を文章で綴る。ヴァレリーは大胆にジョンに近づき気を引くことに成功する。自分がジョンに恋をしていることを認めたがらないメラニーは、ヴァレリーとジョンがキスする場面を見てショックを隠せずにいる。思春期の少女の感受性が上手く表れていて、誰もが経験する初恋の思い出に心をキュンとさせる。

ある日、家族みなが昼寝をしている最中に、一人息子がコブラに噛まれて死んでしまい、平穏だった家族に悲劇が生じてしまう。弟をしっかり見張っていなかったハリエットは弟の死に責任を感じ、ある晩ガンジス川に身投げしようと試しみる。助けられたハリエットは、駆けつけたジョン大尉に生きることの素晴らしさを教わる。そしてジョン大尉も、生きる希望を取り戻してアメリカへと発つ。死別の悲しみの後、家族に6人目の娘が誕生し笑顔がもどってくる。
この映画は、人生はガンジス川のように永遠と流れていくことを教えてくれる。人が死んでも、またどこかで生まれるように、少女たちの実らなかった初恋や人生で出会う悲劇も、川のように流れる時がゆっくりと癒してくれる。



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