【映画「チョコレートな人々」が教えてくれた、おまじないと勇気の欠片】
愛知県を本店とし、全国に40店舗、57拠点を展開している「久遠チョコレート」。創業者の夏目浩次氏と、スタッフの奮闘の日々を描いたドキュメンタリー映画「チョコレートな人々」が、現在公開されている。
制作を手掛けたのは、「人生フルーツ」「さよならテレビ」などで知られる、東海テレビドキュメンタリー劇場。鈴木祐司氏が監督を務め、宮本信子氏の穏やかなナレーションが、作品にやさしい空気を添える。
久遠チョコレートは、障がい者雇用の促進と適正な賃金の値上げに力を入れて取り組んでいる。従業員のおよそ6割が障がい者で、そのほかにも性的マイノリティ、発達障がいなどの悩みを抱えている人が多く働いている。
一般的な障がい者の月収は、各作業所にもよるが、1万円にも満たないケースが数多く存在する。その現状を変えるべく、夏目氏が一念発起して起業したのが、2003年。そこから19年にも及ぶ葛藤ともがきの日々が、本作では切実に描かれている。
以下のコラムが、映画テキストサイト「osanai 」にて本日公開となった。
映画の内容に一部触れているが、もし気になった方は、ぜひ読んでみてほしい。
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映画の感想はコラムに綴ったので、こちらでは「久遠チョコレート」について少し紹介したい。
コラムにも記したが、劇場で販売されていた久遠チョコレートをひとつ購入した。
こちらのパッケージに入っていたのは、3種類のQUONテリーヌ。国内の食材とピュアチョコレートを組み合わせたQUONテリーヌは、なんと150種類以上もある。(2022年度)
石臼で引いた茶葉をブレンドしたり、ドライフルーツやナッツをふんだんに混ぜ込んだりと、色彩と食感が豊かなQUONテリーヌは、贈答用にも重宝されている。
映画鑑賞から帰宅後、軽い夕飯を済ませ、いそいそとQUONテリーヌを小皿に並べた。お気に入りの小皿は、以前、旅先で訪れた陶芸作家さんの個展会場で購入したものだ。白いシンプルな焼き物に、色とりどりのチョコレートが映える。
3種類を、パートナーと“わけわけ”して、それぞれ口に運ぶ。私たちは、“半分こ”のことをいつも「わけわけする」と言う。私が子どもたちに対して使っている言葉が、彼にも移ったらしい。そういう小さな変化に、ささやかな幸福を覚える。
口いっぱいに広がるカカオの風味と、ドライフルーツのアクセントを、じっくりと味わう。本当においしいものを食すとき、多くの言葉は要らない。ただ、その味わいと芳醇な香り、なめらかな口溶けを楽しむ。おいしいかどうかは、互いの顔を見れば一目瞭然だ。私も彼も、頬がだらしなく緩み、目尻が下がっている。
人が持つ可能性の広がりを、チョコレートを食べて感じる日がくるなんて思いも寄らなかった。贔屓目でもなんでもなく、久遠チョコレートは、おいしい。大切な人への贈り物に使いたいと思うほど、おいしい。
私自身も障がい者で、できないことがたくさんある。でも、たとえ障がいがあっても、「できること」もたくさんある。映画「チョコレートな人々」は、小さく丸まりがちな私の背中を、力強く伸ばしてくれた。
映画にたびたび登場するフレーズは、とても温かく、やさしかった。おまじないみたいな言葉を、失敗するたびに唱えよう。
大丈夫。きっと、やり直せる。
何度でも、何度でも。
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【映画「チョコレートな人々」公式サイト▼】
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