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繊細さんへの声かけのヒントは近所の歯医者さんにあった

わが子にとって、何が正解なんだろう。

HSP・HSC―いわゆる「繊細さん」への対応って、本やネットで情報収集しても、一人ひとりタイプが違うから、その人にとっての「ベスト」を見つけるのが難しい。

そんな絶賛修行中の私ですが、師匠と呼びたい方に出会ってしまいました。場所は、近所の歯医者さん。

数日前、娘の歯の定期健診に付き添った。

彼女はHSC気質だ。

小学生になったばかりの頃は、歯が抜けそうになるたび大騒ぎだった。血が出るのが怖くて、食べ物が触れて歯が抜けないよう、3日間何も食べなかったこともあったくらいだ。

だけど、そんな娘も、だいぶ歯が抜けるのに慣れてきたようだ。歯医者に行くのも抵抗がなくなった。


赤い薬が示した事実

担当の歯科衛生士さんに案内されて、娘は席についた。まずは、磨き残しがないかをチェックするために、歯全体に赤い薬を塗られる。そして、軽く水ですすいでから、イーッと口を横に開いた。

見事に全部の歯が真っ赤だった。ちゃんと磨けていない証拠だ。鏡で確認した本人も、思わず「フフフ」と笑っている。

ちなみに、仕上げ磨きは、本人の意思でだいぶ前に卒業している。

ちゃんと磨けていないことを、うすうす感づいてはいた。それなのに、特に何も言わなかった私の責任は、まあまあ重い。

意外な指摘

「これからはもっとちゃんと磨こうね!」と、改めて娘に注意しよう。そう思っていたら、歯科衛生士さんから意外な指摘を受けた。

お子さん、感覚が敏感ですか?歯ブラシが歯茎に当たるのが気持ち悪いのかもしれないですね。それで、磨けてないんだと思います。

マジですか。

聴覚過敏については、耳栓やイヤーマフで対策してきた。だけど、触覚については、服の素材以外は気にしていなかったな…。HSCの母として、まだまだ修行が足りないようだ。

歯科衛生士さんの提案で、しばらく毛先が柔らかいタイプの歯ブラシを使うことになった。

歯垢を取り除く力は小さいけれど、今よりは自分で歯茎も磨けると思います。本人が慣れてきたら、もう少し毛先の硬い歯ブラシに変えていきましょうか。

と歯科衛生士さん。

「これなら大丈夫かな?」と尋ねられ、娘が大きく頷いた。

虫歯問題と解決策

ほっとしたのも束の間。

虫歯が2本できていた。

しかも、歯に穴が空いて、食べたものが詰まっているらしい。どちらも子どもの歯だから抜けてしまえばいいけれど、痛みが出るのは時間の問題だろう。

それなのに。

機械で削るのが怖いのか、「娘は治療したくない」と言う。

せっかく来たんだから、ついでに治してもらえば解決するのにと、私はもどかしくなった。

そこで歯科衛生士さんが提案してくれたのが、虫歯の進行を遅らせる、「黒いフッ素」を塗ることだった。

初めて聞く、黒いフッ素に不信感たっぷりの娘。気持ちを察したのか、歯科衛生士さんは不安をひとつひとつ取り除くよう、彼女に説明を始めた。

黒いフッ素やったら、塗るだけやから削らんくていいねん。ただ、ベロで塗ったところに触れちゃうと苦いから、塗ったらすぐに椅子を起こして、お水でブクブクしよう。すすいだら味もせんくなるから。

大人はさ、虫歯があるって知っているのに、何もしないことはできないんよ。○○ちゃんやって、そのままにしとって痛くなったら困るやろ?だから、虫歯の進行を防ぐフッ素だけ塗っとこう。

あと、虫歯がひどくなっていないかチェックしたいから、次に歯医者さんに来るまでの期間を、ちょっと短くしてほしい。どうかな?

娘がうなずいたのを確認してから、「お母さんも、それで大丈夫そうですかね?」と言って、私を見た歯科衛生士さん。

いつのまにか親子それぞれの希望を上手に擦り合わせてくれていた。頭が下がります。

しかも、会計時に

今日はいろんなことしたから、疲れたよね。おうちでゆっくりしてね。

と娘に優しく声をかけてくれた。

最後まで神対応だった彼女を「見習いたい」と強く思う。








▼HSC気質の娘に書いたエッセイはこちらのマガジンから読めます。


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春野なほ|エッセイスト・ライター
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