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絵本を通して、親子で「死」について考えた話

当たり前だけど、生きていれば必ず「死」がやってくる。

それなのに日常のなかで死について、語り合う機会が少ないのはなぜだろう。

何となく話題としてタブーというか、暗くて重い雰囲気になりそうだし、死ぬのは怖いからあまり考えたくない……。そんな理由で、無意識に避けてきたのかもしれない。

けれどある日、「死についてちゃんと向き合おう」と思う出来事が起こった。それは当時5歳だった娘からの、以下の質問がきっかけだ。

「ママもいつか死んじゃう?ずっと生きていてほしい」
「死んだあとはどうなるの?」
「死んだらバロン(昔飼っていたフレンチブルドッグ)に会える?」

突然だったから、うまく答えられなくても仕方ないのかもしれない。とはいえ、娘より人生経験が豊富な大人としては、動揺せずスマートに答えたかった。

「死ぬことに対して恐怖感をもちすぎないでほしい。だからこそ、嘘をついたり、ごまかしたりするのは嫌だな」と思った。

娘に「死」を思うように説明できず、モヤモヤしていたある日、一冊の絵本に出会う。それが、ヨシタケシンスケ著の「このあとどうしちゃおう」だった。

■絵本「このあとどうしちゃおう」とは

まず絵本「このあとどうしちゃおう」の著者、ヨシタケシンスケさんについて、簡単に説明しておく。

・NHKの人気番組「あさイチ」などでも取り上げられる、注目の絵本作家
・斬新なアイディアや、読者が想像を楽しめる作風が特徴

当著では永遠のテーマである「生と死」がユーモラスに描かれ、子供も大人も楽しめる内容となっている。

物語は主人公のおじいちゃんが遺した、一冊のノートからはじまる。主人公がページを開くと、生前におじいちゃんが想像した、天国の楽しい様子が描かれている。内容は思わずクスッと笑ってしまうものばかりだ。

■死に対するイメージが変わる

「このあとどうしちゃおう」を読み終えると、死に対するネガティブなイメージが薄まった。「この絵本があれば変に構えなくても、親子で自然に話し合えそう」とも思った。

実際に寝る前、布団に入って娘とページをめくりながら

「天国ってどんなところかなあ」
「〇〇(娘)は生まれ変わったら何になりたい?」

など、言い方は奇妙だが「楽しく」死について話せていた。

■死を通して「どう生きたいか」が見えてくる

この絵本の魅力は、死だけでなく「生」について考えるきっかけにもなることだ。死んだあと自分がどうしたいかを想像すると、どう生きたいかが見えてくる。

本の中で主人公の男の子は、おじいちゃんが遺したノートを見て、自分も同じように「死んだあとどうしたいか」を書き出していく。それによって、たくさんの「いきているうちにやりたいこと」に気付くのだ。

■大切な人を失ったとき、きっと思い出したくなる

「このあとどうしちゃおう」は、死について考えるきっかけになるだけでなく、大切な人を失ってしまったときも、静かに寄り添ってくれそうだ。

絵本に登場するおじいちゃんが遺したノートの中に、「みんなをみまもっていくほうほう」というページがある。

そこには月やりんご、かさぶたといったものに生まれ変わった、具体的なおじいちゃんの姿が描かれており、温かい気持ちにさせられた。

生と死は常に隣り合わせだ。いつかは私も死んでしまう。もちろん絵本一冊で、誰かを失った悲しみが、完全に癒えるとは思っていない。

だけど、この本を思い出し「会えないけれど姿を変えて、どこかで見守っている」と、少しでも信じられれば、つらい涙を一粒でも減らせるかもしれない。

■大切な人と繰り返し味わいたい一冊

言葉で説明するのが難しい「死」。「このあとどうしちゃおう」を読めば、重い雰囲気になりすぎず、自然に話し合えるだろう。限りある今を大切に生きるためにも、大切な人と何度も味わいたい一冊だ。

「ママは生まれ変わっても、また〇〇を探すからね」。普段は照れくさくて、なかなか言えない我が子への想いも、自然に伝えられそうだ。

#創作大賞2023
#エッセイ部門

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