活字の秋とわたしの秋と。【シロクマ文芸部|お題「秋と本」】参加記事
今回も季節に相応しいお題をありがとうございます、小牧さん。貼付記事以下、参ります。
秋と本、と言えば思い出す作品がある。シンプルな題名と内容のギャップに少し驚かされるそれは、今では青空文庫などでも公開されている。
題名だけを見ると、季節にちなんだ話が展開するのかと思いきや、芥川には珍しい近代心理小説である。ある姉妹の心理、その相克は理屈では割切れぬやるせなさを読む者に残す。冷涼な秋風が頬を掠めた時の冷たさ、冷たさを感じたときの痛みにも似た感情を。
「取りあえず、ここまでで小休止するか」
独り言が奥の書斎から聞こえてくる。お湯も沸いたし、マドレーヌは今朝焼いてある。こちらも準備は万端だ。ちょうどよいタイミングだよ、雅也。
「お疲れさま。来週の準備、目処はついたの?」
「ああ、何とかな。100パー狙ってもな。7割で充分、二割打者でいいんだよ、俺は」
「ふふっ。では名バッターさま、お茶にいたしませんか?」
たわいない遣り取り。いつもと変わらぬそれに安堵する。文豪は勿論、物書く人の筆には決して昇らぬだろう私たちの時間。それを慈しみ、味わいたいと思いつつ、私は二つのソーサーに紅茶を注いだ。
拙稿題名:活字の秋とわたしの秋と。
総字数:448字
よろしくお願い申し上げます。
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拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。