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吹き抜けたあとに残るものは【青ブラ文学部|お題「一陣の風のように」】参加記事

#青ブラ文学部  お題「一陣の風のように」、参加します。

突然、私の目の前に現れ、ひと夏の後に去って行った人がいる。一陣の風のように私の前から消えた、嵐のような人だった。思い出と呼べるほどのものは、私の中には残されていない。この部屋も去年の春と同じように、彼がいたときも、いなくなってからも、同じように殺風景なままだ。数少ない「落とし物」のような、残された1個のポストンバッグ。ずっとファスナーを開けていなかったそれを、今日はじめて開けてみた。

中から転がり落ちてきたのは1枚のディスク。

君が望むなら
それは強く応えてくれるのだ

今は全てに恐れるな
痛みを知るただ一人であれ

M八七 作詩作曲・歌:米津玄師


……彼は伝達者だったのかしら。何かのメッセージを私に伝えてくれる目的で、私の目の前に現れ、夏の嵐のように吹きすぎていった、心を揺さぶったまま、私をここに残して。

孤独を怖れるな、と告げる為に。


ディスクに収められたPVが終わった。私は部屋の鍵だけを持って外へ出る。そのまま非常階段を駆け上がり、マンションの屋上へと出た。平素は閉鎖されているドアを開ける。防災担当者である私は、この鍵を管理組合から預かっている。本当は私用で使うことは御法度なのだけれど、これは単なる私用じゃないからいいのだと、自分に言い訳をして。



柵に背を向け、風を感じる。
勿論、屋上からバンジージャンプをするつもりなどない。ただ、この日常から自分を引き剥がしてみたくなった。一陣の風。それを待つのではなく、一陣の風が吹き抜けるような、そんな生き方をしてみたいと思った。




拙稿題名:吹き抜けたあとに残るものは
総字数:634字(原稿用紙一枚半相当)



よろしくお願い申し上げます。

#青ブラ文学部募集要項



①「 #青ブラ文学部 」のタグをつける。可能ならば、この記事を埋め込んでください。

②記事のタイトルあるいは本文中に「一陣の風のように」という言葉を使用してください。
⚠️英語で記事を書かれる場合は、
like a gust of wind 」という言葉を使用し、英文の他に日本語訳を添えてください。

③エッセイ、小説、詩、イラスト、写真など、表現方法は自由です。文字数の制限もありません。

④一応の締め切りは、2024年4月7日(日)までとします。

⑤ご応募していただいた作品は、私のマガジンへ登録したり、御紹介させていただくことがあります。あらかじめご了承ください

山根あきら|妄想哲学者🙄様 2024年3月30日 00:11 記事より引用

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春永睦月
拙稿をお心のどこかに置いて頂ければ、これ以上の喜びはありません。ありがとうございます。