大切なことは全部紫蘇が教えてくれた
去年のことになるが、アパートのベランダで紫蘇を育ててみた。
コロナの影響でどこにも行けない中、おうち時間を少しでも楽しむために始めたことだった。
家庭菜園ど初心者のわたしは『紫蘇 育て方』とネットで調べ、ホームセンターで買ってきた紫蘇の苗をてんやわんやしながらお世話した。
紫蘇を育てる中で、「おお紫蘇よ。お前は人間の縮図か」と驚き、学ばされた出来事がいくつかあったので、ここに書き記してみる。
昼は葉を広げて日光を浴び、夜は葉を垂れて省エネする
ある夕方にベランダを覗いてみると、紫蘇が葉を垂れてだらーんとしていた。見るからに元気のなさそうな姿だった。「昼間はぴんと葉を広げていたのに!なんで!」焦りながら『紫蘇 葉 垂れる』と検索するわたし。
すると、なんということだろうか。
紫蘇は昼間は日光をたくさん浴びるために葉をめいっぱい広げ、夜になると無駄なエネルギーを使わないよう葉を垂れるのだそうだ。
人間もいつも走り続けることはできない。休むべきときに、しっかり休まなくては。と思わされた。
肥料が根から近すぎると葉が黒ずむ
ある程度紫蘇が育ってきたら追肥が必要と知ったわたしは、野菜用の肥料を買ってきた。ネットによると、紫蘇から15センチ以上離れたところに肥料を蒔くと良いそうだ。
しかしわたしは「そんな遠くに蒔くよりも、もっと根の近くに蒔いた方がよく育ちそうだ」と思い、根から数センチだけ離れたところに肥料を蒔いた。
数日後、紫蘇の葉の何枚かが黒くなっていた。
実は、肥料が多すぎたり根から近すぎると、肥料過多による肥料焼けを起こしてしまうのだそう。遠くに蒔くことで、その肥料を目指して紫蘇が根を伸ばそうとし、大きく育つらしい。
うーむ。人間も欲しいものがいつでも自由に手に入ってしまう環境だと、努力や我慢する気持ちを忘れて心が腐ってしまう。欲しいものは遠くにある方が成長できるのだろう。
摘芯で茎を切ると収穫量が増える
(↑摘芯前)
摘芯とは、植物の茎の先を切り、脇芽の成長を促すこと。摘芯をすると、切った部分から脇芽が2つでき、2本、4本、8本と、元々の数の倍の茎が育ち、結果的に収穫量が増えるのだそうだ。
摘芯をするときは「せっかくここから伸びようとしているのに・・。」と、とても心が痛んだ。
しかし摘芯をした後、2つの脇芽は大きく成長し、そこからたくさんの茎が伸び、葉が育った。
前だけを見てまっすぐ走っていると見えないことがあるように思う。その道が絶たれ挫折して初めて、自分の周りの小さな幸せに気づいたり、他にも道はいくらでもあるのだということに気づくのかもしれないな、と感じた出来事だった。
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そんなこんなで紫蘇は大きく大きく育った。わたしの手よりも大きな葉もあった。
愛情を込めて育てた紫蘇は硬くてなかなか噛みきれず、あまり美味しくなかった。「スーパーで売ってる紫蘇の方が美味しいな」とボソッと呟いた。
我が家のベランダには日光があまり当たらないから強く育たないのではないかと心配していたが、むしろ日光が当たりすぎていたようだ。
買うよりも、自分で丹精込めて作ったものの方が美味しい?いや、実際はそんなこともない。
心配しないでも植物は育つ。
そう知ったのもわたしが紫蘇から学んだこと。
いつかまた紫蘇を育てるときには、もう少し柔らかくて美味しい紫蘇を育てたい。
今年はパセリから学ぶ予定だ。