作りかけの自由な荒っぽいものを
もう2ヶ月ちかく前か、昨年末、松濤美術館で船越桂さんの個展「私の中にある泉」を観た。初期〜現在に至るまでの彫刻作品と、彫刻のための(と思われる)ドローイングが中心だったが、家族のために自作したという"おもちゃ"が集められた部屋もあって──その部屋には、小さなメモ用紙に書かれたことばもたくさん貼ってあった。それがとにかく面白い。「個人はみな絶滅危惧種である」とか「新しいものは自分の中に見つけよう」とか。「理論化できないことは、物語らなければならない」というのは、ウンベルト・エーコのことばらしいが、そんなのもある。その中に、「作りかけの自由な荒っぽいものをいっぱいつくって放っておく」というのがあって、あっ、と思った。いつものぼくのやり方を言い表してくれたから。