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もう少し先まで

何か大きな意味のある仕事をしようというようなことは、なるべく考えないようにしている。意味がありそうな仕事であればあるほど、考えないようにしたい。ただ、目の前にある作業をこなしてゆこう、と考える。平和がなければ、それも難しいことかもしれない。しかし自分には必ずしも平和が感じられてはおらず、いつ殺されるか(この社会に)という感じもあるので、平和だろうが何だろうが、ただコツコツと手を動かすことはできる、という信念というか、信仰のようなものにすがってやっている。それでも、1冊仕上げると、抜け殻のようになってしまう感じがある。なるだけそうならないようにしたい。営みが、途切れないように。この1冊も、仮の姿だ。仮にこうなったが、それはone of themであり、自分にはそのthemの可能性が広く捉えられている。だから仮のものが完成すると、自分では窮屈な感じを受けるのだろう。

全てを、完成の数歩手前で終わらせておくことができたら、どんなに良いだろう。

若い頃には、ひとつ完成させると、必ず落ち込んでいた。仕上がりに心残りがありガッカリしているということではない(もちろん心残りはあったとしても、それとは違うのだ)。いま、落ち込むという程ではなくなったが、酷く冷めた気持ちになるのは変わらない。もしかしたら、それがある限り、続けられるのではないか。楽なことではないけれど、この心持ちがあれば、自分はもう少し先までゆける。もう少し先まで行ってみよう。

(つづく)

『アフリカ』最新号、発売中。近々、ここ(note)でも詳しくご紹介しようと思っています。


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