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本と芸術をめぐる旅|松本・信濃大町

11月の三連休を利用して、夫と長野県の松本と信濃大町を旅してきた。
毎日何らかの書店に赴き、中日には芸術祭へと足を運んだ二泊三日のことを記録していこうと思う。

書店めぐり

栞日

学生時代からずっと気になっていた松本の書店・カフェ「栞日」。
旅行初日についに足を運ぶことができた。
急な階段を登って二階に上がると、天井近くまで本やZINEが並んでいる素敵な空間が広がっていた。
あいにくの雨だったが、静かな店の中に入ると雨音がいいBGMに聞こえてくるから不思議だ。

夫とそれぞれ本を物色していると、一階で注文したスコーンとミルクティが運ばれてきた。
彼がスコーンの味を誤って注文してしまったようで凹んでいたが、二人で半分こして食べてみると寧ろ間違えた味の方が美味しくて、なんだかそれが嬉しかった。

店内には松本をはじめとする地方都市をテーマにした本が多い中、日記の本もいくつかあった。
初めて見る作家である星野文月さんの『私の証明』を手に取ってページをめくった時、私のしたい文章表現はこれだと思えた。
どこか植本一子さんイズムを感じるなと思ったら、『降伏の記録』の写真が本の中に収められていて妙に納得した。

帰り際に雑貨スペースで素敵な2025年のカレンダーとヒノキの香りのキャンドルを購入することもでき、心ゆくまで満喫できた。

書麓アルプ

二日目に訪れたのは信濃大町の「書麓アルプ」。
OZマガジンで見て、こちらも注目していたお店だ。芸術祭のルート内に位置しているからか、店内はたくさんの人で賑わっていた。

主に山岳関係の書籍が並ぶ中、小説やエッセイなどジャンル問わず古本が並んでおり目移りした。中でも気になったのはこの前ちくまで文庫化していた『平熱のまま、この世界に熱狂したい』の単行本。
ここで再び出会ったのは運命だと思って購入した。
カバーにつけてもらったアルプスの山々の絵がかわいらしい。

ALPSCITY BOOK PARADE

最終日はたまたま松本パルコで開催されていたブックイベント「ALPSCITY BOOK PARADE」へ。
以前行った「本は港」でも出店されていた出版社さんたちも並び、出発前のわずかな時間では見切れないほど充実感のあるイベントだった。

ちょうど前日にnoteの記事で読んだ石田月美さんの『まだ、うまく眠れない』とかわいいアヒルの栞をマルジナリア書店で発見し、購入してみることに。
店主さんのご好意でトートバックまでつけてくれた。

三日間の購入した本たち


北アルプス国際芸術祭

鈴木理策

今回の芸術祭で最も楽しみにしていた写真家・鈴木理策の作品。
蔵をそのままギャラリーとして用いて、一階では四季折々の風景写真を展示していた。
現代美術に多い前衛的な表現ではなく、真っ直ぐに瑞々しい信濃大町の自然を撮影していて心が洗われる。春の儚い桜を撮った写真が私は一番好きだった。

二階では階段を隔てて写真と映像の対比が行われていた。
特に写真のスペースでは実際に現像で使う定着液などを入れるためのバッドや、感光を防止するための赤いセーフライトなど、暗室そのものを巧みに表現していた。
写真というものができるまでの工程を立体展示することで、改めてモノとしての写真や、その中に写された像の時間軸へ思いを馳せることができる。

目[mé]

夫に山道を運転してもらってたどり着いたのは、近年話題のアート集団 目[mé]の作品だ。一面が白く穴の空いた不思議な建物は、十和田現代美術館で観たエルヴィン・ヴルムの《ファット・ハウス》を彷彿とさせる。

開けたスペースに着くと大きな窓から向かいの山と町並みが見えた。夕方に来た甲斐があって、雲の隙間から山の斜面に沿うに後光が差していた。

建物を出る時にはこの大きな窓の目の前を通るような順路を案内された。
この順路に意図があるとするならば、見る/見られるの関係が逆転するように意識させるためかなと思うと興味深い。


面白かった出来事

またしても何も知らない夫さん(28)

この旅行でも相変わらず夫が笑わせてくれた。
二日目に泊まったホテルでは夜ご飯にバイキングかコースかを選ぶことができ、私たちはバイキングを選択。芸術祭の感想を伝え合いながら美味しい料理に舌鼓を打っていた。

するとここで事件が勃発。
右隣隣の人がバイキングで料理を取って帰ってくる時に、自身が座る席を席を間違えてしまったのだ。
そして運悪く間違えられた側の人がクレーマー気質で「ちょっとここ、わたしの席なんだけど!」と叫んでいる。
完全に修羅場である。
しかもその人に新たに用意された席は私たちの左隣。
挟まれた…と思っていながらよく見ると何と、席を間違えた人はコース選択なのに間違えてバイキングの料理を食べているではないか。
「逆にこの人何が合ってるんだよ」と思い、勝手に面白くなる。

部屋に戻った後、早々に「さっきの出来事やばかったね」と夫に伝えると「なんか騒がしいなとは思ったけど、何のこと?」ときょとんとしている。
あれだけ修羅場の中心にいたのに何も知らない夫が一番面白い。
図解して説明してあげたらすごい笑っていた。

ちなみに泊まったホテルは山々を眺めながら過ごすことのできる高級感のある施設で、とても素敵なところだった。

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