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【物語】彗星のカケラ①

 流れ星のようだと、その時は思っていた。

 でも今になって思い返してみると、あの子は流星というより、彗星という方が正しかったように思う。

 あの子は待っていると言って、僕は必ず行くよと言った。
 それは誓いにも似た願いだった。

 もうすぐ、その悲願が達成される。

「ストライク、バッターアウトっ!」

 審判がうだるような暑さを振り払うように右腕を天に突き出し、声を張り上げた。

 あと一人だ、と僕の胸は今更になって高鳴る。ここまで決して楽ではなかった夏を戦い抜いてきたのに、本当に今更、呼吸が浅くなるような胸の締めつけを感じる。

 この気持ちは、マウンドから降りたあの子のことを考えている時のそれと似ていた。

 ――この夏が終わるまでは、私のことは忘れて。

 胸が押し潰されそうな、なんとも言葉にできないあの思いと、とても似ている。

 あと一人を抑え込んで、勝って、夏の甲子園出場が決まって、そして。

 そして、僕は約束を果たす。

 早く行かねば。

 二つ目の夏で――あの子が、待っている。

          *

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