プロローグ4-1(ガスズの仕官)-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「シャギ殿、お初にお目にかかりまする。ガスズ・アーヴィンソンと申します」
中世にいたという東洋の剣士のような姿かたちのガスズなる者が、シャギの前で跪いた(覚えている方もいるだろうが、プロローグ2-5でムサシにしこたま鉄拳をお見舞いした男である)。
カイバの提督におさまったシャギはさらなる野望をかなえるために、腕に覚えのあるパイロットを募集していた。
しかも、通常の相場の倍の給料がもらえるとあって、連日多くの仕官を希望する者が殺到していたのだ。
一段高い場所にある提督の椅子にどかりと座る仮面騎士シャギは、仮面の下から血走った眼をぎょろぎょろさせながら、実際は眠気におそわれてあくびをしていた。
「珍しい客人ではないか、地球からわざわざやってきて、このシャギ党に加わりなさると?」
「腐れ縁がございましてな、どうしてもこの手でやらなくてはいけない奴がおりまして…客将として雇っていただけるならば、必ずやその価値以上の手柄を立てて見せましょう」
若武者と呼ぶのがぴったりのガスズは、臆面もなくこう言い放った。
実を言えばガスズはムサシが月歌に行くと決めるよりも前に、賞金を稼ぐために月歌に行くことを計画していた。
というのも群雄割拠の真っただ中にある月歌では、腕利きのパイロットは引く手あまたで、勢力拡大を狙う提督らがのどから手が出るほどほしがっていたからである。
傭兵出身で、賞金稼ぎだったガスズは、財を築くため、また腕を上げるため、月歌にやってきていたのだ。
ガスズは常日頃から強くなるには実戦あるのみという考え方だった。
地球(テラ)はコロニー連合との戦争を優位に終えたため、しばらく平和である。
であるならば、戦乱著しい月歌に行くのも一興と、訪れていたのである。
「仕官を希望なさるということでござるな…」
シャギは全く気乗りしないというように、椅子のひじかけに頬杖をついて言った。
「仕官ではございませぬ、客将として迎えていただきたい」
「ガスズ殿、現在、このシャギ陣営には各地から多くの人間が仕官を求めてやってきておるのだ。どういうこか、おわかりかな?」
「と申されると…?」
つづく…
プロローグ:4-2
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