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リアル菊次郎の夏

僕はかつて、南国のゲストハウスに住んでいたことがあります。
そこは、ヒエラルキーでいえば、一番お金がない人が集う場所でもありました。刺青のあるかた、文字通り鼻が曲がるほどにくさい浮浪者、洒落にならないやばい人💦、色々な方がいました。もちろん、普通の人もたくさんいましたよ笑(というかそれがメイン)、プロ野球のキャンプを見に来る親子とか。

そこの目の前にまったく繁盛していない、屋台風の食堂をやっている、中年のおじさんがいました。料理はおいしいけれど、人通りがほとんどないところなので、当然、お客さんも少ないところでした。「Tシャツ一枚もかえねーよ」とおじさんは、口癖のごとく言っていましたし、実際にお金はなかったのでしょう。本職は企業舎弟で、裏の方ともお知り合いのおじさんです。

身体にはタトゥーがはいっており、角刈り、強面、身体は中肉中背ですが、どことなく筋肉質。朝の支度をしていると、僕の方をぎょろっとにらんでいる。僕もとっつきにくい性格ですから、なんか重たい雰囲気がつづきました💦 

そんな場所の近くにマンションがあり、ハーフのイケメン少年がいて、よく食堂に遊びにきていました。まだ、子供ですが、将来は絶対に女の人を泣かすな、と思うぐらいイケメンでした。小学生、低学年くらいだったと思いますが……。その男の子、お母さんはいるけど、どうやらお父さんはいない。お母さんは妹をかわいがっているけれど、お兄さんの男の子はあまりかわいがってないような、そんな感じを見受けました。というのも、男の子はいつもおなかをすかせていたのです。

そんな男の子は、妙に食堂のおじさんになついていました。どうやらおじさん、ただでカレーライスとか食べさせていたのです。それを見てから、僕はおじさんに一目置いて、敬意をもって接するようになりました。だって、お金がないのに優しいと思いましたからね!
すると、不思議と仲も良くなり、僕にもご飯をくれたりしたんですね。

で、ある夏の日のことでした。おじさん、どうやら江戸っ子のようで、花火大会があるせいか、朝からおおはりきりでした。そして、ゲストハウスにいる男たちに声をかけて、みんなで花火大会に行くことになったわけです。
夜になって、ゲストハウス勢が歩いていると、おじさんは後ろがかごになっているバイクで登場。後ろには、あの男の子がのっていました。男の子はうれしそうにおじさんに抱き着いています。はたからみたら、親子にしかみえません。しかも、かなりやんちゃな笑
おじさん、酔っぱらっています💦。でもやっぱりうれしそう。聞けば、東京には生まれて間もない男の子を残しているそうです。

無事につくかなと思いながら、おじさんと男の子がのるバイクの後ろ姿を眺めていると、花火がばーん、ばーんと、黄昏の空に上がり始めました。




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