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『海の向こうでこんなこと言われた』#13
「イッツ・ユアカントリーズ・フォルト」
話は半日遡る。
ベラニー氏のアトリエに行った翌日、ヘレンがホテルに迎えに来てくれて再びベラニー邸へ。
カンバスを見てびっくり。
巨大なプロスペローがいた。
明け方まで描いていたというベラニー氏が起きてきて
『ここから色を重ねて行くんだよ』
(実は僕は完成画を見ていない。描き上げてすぐ某博物館が買い取って行ったという。後に写真は貰った。それがこれ↓)
![](https://assets.st-note.com/img/1654948102648-k35546yT1k.jpg?width=1200)
その日は夜公演のみ。
『友人がガーデンパーティーをやるんで行かないか?』
「喜んで!」
で車に乗った。
運転中のヘレンが
『ちょっと美術館に寄るわね』
スコットランド国立美術館。
玄関を入ったロビーの正面の壁に巨大な画。
『これ、彼の作品なのよ』
なにっ!?‥
このジョン・ベラニーという人、
スコットランドナンバーワンの画家だったのだ。
貧しい漁師の息子から画業を志し「ミスター・スコッツ」の称号を得る。
後日談だが、英皇室からの依頼でエリザベス女王の肖像画を描く。
彼の画は、敢えて言うならモジリアニとシャガールをミックスしたようなシュールな画風で、しかも人物の眼球を描かない。それでエリザベス女王の肖像画を描いたから大論争が起きた。
「不敬だ!」「いや素晴らしい!」。
この論争は一瞬でケリがついた。
女王陛下が「私、この画大好き!」と仰ったのだ。
彼は『サー』の叙勲を受けた。
その後会ったベラニー氏が最初に言った冗談は『私をサーと呼べ』だった。因みにそう言いながらニヤッとした強面の彼の笑顔は抜群に可愛いのだ。
さてその後のガーデンパーティー。広い庭のある家に4家族程が子供連れで来ていた。親たちは全員『テンペスト』を観たという。
ヘレンが一緒にいて、人々からの質問などを僕に分かる程度の英語に「翻訳」してくれる。「歩く英英辞典」。楽しいひと時だった。
各家族の子供たちが5、6人「キャッキャッ」と木に登り芝生を走り回って遊んでいたが、気が付くとピタッと静かになっている。
見ると、全員が座り込んで各々ゲームボーイに熱中していた。
お母さんの一人が僕を見て
『ジョー、イッツ・ユアカントリーズ・フォルト』
(あれ、おたくの国のせいよ)
なるほど‥「FAULT =過ち」ねぇ。
他のお母さん達が一斉に頷いた。
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