『海の向こうでこんなこと言われた』#13
「イッツ・ユアカントリーズ・フォルト」
話は半日遡る。
ベラニー氏のアトリエに行った翌日、ヘレンがホテルに迎えに来てくれて再びベラニー邸へ。
カンバスを見てびっくり。
巨大なプロスペローがいた。
明け方まで描いていたというベラニー氏が起きてきて
『ここから色を重ねて行くんだよ』
(実は僕は完成画を見ていない。描き上げてすぐ某博物館が買い取って行ったという。後に写真は貰った。それがこれ↓)
その日は夜公演のみ。
『友人がガーデンパーティーをやるんで行かないか?』
「喜んで!」
で車に乗った。
運転中のヘレンが
『ちょっと美術館に寄るわね』
スコットランド国立美術館。
玄関を入ったロビーの正面の壁に巨大な画。
『これ、彼の作品なのよ』
なにっ!?‥
このジョン・ベラニーという人、
スコットランドナンバーワンの画家だったのだ。
貧しい漁師の息子から画業を志し「ミスター・スコッツ」の称号を得る。
さてその後のガーデンパーティー。広い庭のある家に4家族程が子供連れで来ていた。親たちは全員『テンペスト』を観たという。
ヘレンが一緒にいて、人々からの質問などを僕に分かる程度の英語に「翻訳」してくれる。「歩く英英辞典」。楽しいひと時だった。
各家族の子供たちが5、6人「キャッキャッ」と木に登り芝生を走り回って遊んでいたが、気が付くとピタッと静かになっている。
見ると、全員が座り込んで各々ゲームボーイに熱中していた。
お母さんの一人が僕を見て
『ジョー、イッツ・ユアカントリーズ・フォルト』
(あれ、おたくの国のせいよ)
なるほど‥「FAULT =過ち」ねぇ。
他のお母さん達が一斉に頷いた。