時をかける少女
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2006年の日本映画。筒井康隆による同名小説をベースに、原作の物語の20年後を描いた青春SFアニメ作品です。監督は『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』、『バケモノの子』の細田守。
原作は筒井康隆のSF小説
ご存じの通り、本作の原作となっているのは筒井康隆のSF小説『時をかける少女』。初版が刊行されたのは 1967年。なんと、わたしが生まれた年です!
こちらは現在書店に並んでいる、新装版の表紙。アニメのヴィジュアルがそのまま使われていますね。
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小説の初出は、学研の学年誌『中学三年コース』および『高1コース』の連載(1965~1966年)だったとか。
「中三コース」ですか~! 懐かしい! わたしの頃はこんな感じでした。
百恵ちゃんや、聖子ちゃん、キョンキョンに、石野真子ちゃん、河合奈保子ちゃんなど、表紙を飾る当時のアイドルたち。
「学研」の『中○コース』に対して、「旺文社」の『中○時代』というライバル誌があって、少年少女の人気を二分していた記憶があります。
わたしはどちらかを定期購読していた訳ではないけれど、テレビCMが盛んだったこともあり、旺文社の「時代」シリーズの方が馴染みが深いかな?
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筒井康隆のSF小説、面白いですよね。わたしもまさに中高の学生時代、ハマって読み漁った思い出があります。
ナンセンスで、ブラックで、ゾワッと粟立つような “得体の知れない怖さ” が、お子様向けコンテンツでは少し物足りなくなってきた十代のニーズにぴったりというか。同級生たちの間でも筒井康隆や星新一が流行ったりしていたなぁ。
今でも覚えているのが『走る取的』(とりてき)という短編作品。
普通のサラリーマンがちょっとしたきっかけでお相撲さんを怒らせてしまい、ただ、ただ、ひたすらに追いかけられるお話なのですが、これがもう、とにかく怖いんですよ~!
確か、どんな格闘技の使い手よりも力士がダントツに破壊力を持っていて、この世で一番恐ろしい存在なのだ―― という描写がありまして。それを読んだわたしはとても驚きを感じ、以来「お相撲さん=人類最強」というイメージができてしまいました。笑
幅広い世代に愛される「時かけ」
「時かけ」の略称で幅広い世代から親しまれている『時をかける少女』。刊行以来、何度も映像化されています。
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わたしたちの世代は「時かけ」といえば、やっぱりこの曲! ほぼ自動的に脳内再生されてしまいます♩
原田知世ちゃんが初々しい! 可愛い!♡(当時15歳。初主演)
1983年の実写版『時をかける少女』です。知世ちゃんは、原作小説と同じ主人公の「芳山和子」を演じています。
この映画は、2020年に亡くなられた大林宣彦監督の「尾道三部作」(*)のひとつであり、角川映画全盛期の作品。
原田知世ちゃんが歌う主題歌『時をかける少女』は、ユーミン(松任谷由実)による作詞/作曲。上の動画をご覧いただくとおわかりのように、エンディングのスタッフロールが始まると同時に流れます。
映画のシーンの中で倒れていた知世ちゃんがむっくり起き上がり、ちょっとした NGテイク集の後、作中の各シーンを知世ちゃんが歌いながら、さながら「タイムリープ」のように渡り歩きます。
観ていると、ついつい一緒にくちずさんでしまうし、リズムに合わせて体を左右に揺らしたくなる♩笑 さすがユーミン! 名曲ですよね。
そして、ラストのこの名ショット。
なんと可憐で爽やかな笑顔! 最高ですなぁ♡(おじさんか……笑)
当時の少年たちは、この微笑みに一瞬で恋してしまったことでしょうね♩
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実は、角川春樹氏が自ら監督としてメガホンを取った、別の実写版『時をかける少女』(1997年)もあるそうで――。
映像を見つけました。こんな感じみたいです。
音楽がユーミン♩ おまけに(わたしの大好きな)渡瀬恒彦さんも出てる~! ナレーションは原田知世ちゃんが務めているのだとか。
ちょっと気になりますね。
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こちらは、2010年の実写版『時をかける少女』。
アニメ版で主人公の声を演じた仲里依紗さんが、こちらの作品では、芳山和子の「娘」という設定の主人公「あかり」を演じています。共演の中尾明慶さんとは、この作品で出会い、後にご結婚されたのだとか。
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映画の他にも、テレビでは、島田淳子(現:浅野真弓)、南野陽子、内田有紀、安倍なつみ、黒島結菜―― などの主演で、これまでに5回もドラマ化されています。
映画が3作、ドラマが5作、アニメが1作。すごい回数ですよね! 作品の人気の程がうかがえます。
アニメ版は原作の20年後を描く
さて、今回も前置きが長くなりました。ようやく本題へ。笑
アニメ版の本作は、高校2年生の「紺野真琴」がヒロイン。原作で主人公だった芳山和子の「姪」という設定で、原作のお話の20年後を描いています。
ひょんなことから、自由に時を飛び越え、過去へ戻ることができる「タイム・リープ」の能力を得た主人公の女の子。幼馴染の男の子。そして、もうひとりの男の子。――という “ドリカム編成” の男女3名を中心に物語が展開してゆくのは原作の通り。
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SFを題材として描かれてはいますが、実はこの作品には「青春」という要素が欠かせないのですよね~!
「青春」というものを語る時、今も昔も、必ずしも全員がキラキラした青春時代を過ごしているわけではないことは承知しております。「陰キャ」「黒歴史」なんていう言葉もあるように、ね。
それでも、やっぱり肉体や精神は若々しく、感受性もみずみずしく、些細なことで喜び、些細なことで傷つき、周りと比べたり、自分が何者なのかをずっと手探りしていたり――。
そういう意味では「青春」って誰もがキラキラしいている年代ではないでしょうか。
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原作の主人公、原田知世ちゃんが演じた「芳山和子」も、20年後の姿でちゃんと登場。真琴からは「魔女おばさん」と呼ばれています。笑
30代後半、独身。博物館に勤務し、絵画修復の仕事をしている真琴の叔母、という設定です。
背景。トーハク。くるみ。てんとう虫。
わたしが本作を初鑑賞した時のツイートには、続きがありまして――
背景がね、本当に美しいのです!♡
新海誠さんの作品とはまた違った、精緻な美しさ。
美術監督は山本二三(やまもと・にぞう)さん。ジブリ作品『天空の城ラピュタ』(1986年)、『火垂るの墓』(1988年)、『もののけ姫』(1997年)などの美術監督も務めた方です。
「二三雲」と呼ばれる、もくもくとした雲の描き方が特徴。
わたしの大好きな男鹿和雄(おが・かずお)さんも「背景」としてクレジットされています。
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作中、“魔女おばさん” 芳山和子の勤務先として、「トーハク」こと東京国立博物館が登場するのもうれしいです♩
おお! あの正面階段っ♡
わたしがお散歩でトーハクを訪れた時のブログは、こちら。
トーハク、超絶おすすめですよ~!
歴史の教科書や資料集に載るような、絵画、書跡、彫刻、工芸、考古資料など、本物の「国宝」がゴロゴロしているので、見学しているうちにだんだんと感覚が麻痺してきます。笑
コレクションの品々が本当にすごいです(語彙力)。一見の価値あり。また行きたいなぁ♩
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原作小説や1983年の実写版では「ラベンダー」がタイム・リープの大切なキーアイテムになるのですが、アニメ版の本作では「くるみ」がその役割を果たします。
この「くるみ」について、細田監督はこんなことを語っていらっしゃるようです。
そっかぁ、『銀河鉄道の夜』なのね♩ わたしも大好きな作品です。
宮沢賢治の小説はもちろんのこと、アニメ作品(監督:杉井ギサブロー/原案:ますむらひろし/1985年)も、プラネタリウム作品(KAGAYA studio/2006年)も!
賢治さんのいた花巻へも、いつか行ってみたいな――。
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最後に、おまけ。
本作では、いろんなところに「てんとう虫」が出てきます。
よかったら注目してみてくださいね♩
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