菜々緒の土下座を見て泣いた話
田舎から出てきた就活生が、出版社の前に緊張した面持ちで立っている。
その場面を見たときから、嫌な予感はしていた。
今年最初の目標は「ドラマをたくさん観る」。
私は、世の中の流行にとにかく疎い。
昨年noteを始めたあたりから、自分の「読めるもの・書けるもの」の範囲をもっと広げたいと思った。「今」を知っているだけでも、話題の作品のレビューやコラム等、読み物の幅も、その受け取り方も大きく変わる。もっといろいろなエンタメに積極的に触れて、自分の感想をもって、できれば言語化していきたい。そうして自分の好きなものが増えればラッキーだなと思う。
手始めに、大好きなKis-My-Ft2のメンバー、玉森くんも出ていることだし、これを観ることにした。以下、俳優さんのお名前は敬称略で失礼します。
TBSの火曜ドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』。
「普通、人並み、安定が一番。」
安定志向の就活生・鈴木奈未(上白石萌音)は幼なじみを追いかけ東京の大手出版社に就職。しかし希望ではない新設のファッション雑誌編集部、しかもカリスマ編集長・宝来麗子(菜々緒)の雑用係に任命される。規則的な勤務時間、確保された休日を第一に考えていた奈未にとって、正反対の職場。そこで麗子の“召使い”のような仕事をさせられる…という始まり。公式サイトのあらすじはこちら。
ドラマについて書くけれど、内容は個人的な話になります。物語の流れとは異なる個人的なポイントのみで話すため、作品レビューとして読むのはオススメしません。だからドラマを観ていなくてもあまり関係ないです。ここから先、ネタバレ祭りとなっておりますのでご注意ください!
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主人公の奈未にイライラした。
冒頭、羽田空港にて幼なじみの“健ちゃん”(犬飼貴丈)と電話をするシーン。電車の乗り換え方法を尋ねるのはまだわかる。熊本から来てるんだもんね。わかる。でも、「東京でやっていけないぞ?」と言う健ちゃんに対しての奈未の返事、「わかんなかったら健ちゃんに聞くも〜ん。」って。
あ〜〜いるよね〜〜〜
自分で調べればわかることを試しもせずに聞く人、すごく苦手。うわ〜仲良くなれませ〜んと半笑い。(仲良くなる機会はない)ほかの場面でも度々、うわ〜〜〜と思いながら観ていた。
奈未が配属された「MIYAVI」編集部には、カルチャー誌から急遽異動になった中沢涼太(間宮祥太朗)や、編集アシスタントの和泉遥(久保田紗友)がいる。それぞれの野望を胸に宝来麗子のもとで必死に働く編集部のメンバーとは、仕事に対する向き合い方がまるで違う、「夢」と呼べるものをもたない奈未。それでも、彼女はなんとか走り回った。
編集部は社運をかけた「MIYABI」創刊号の表紙撮影にとりかかる。ところが和泉のミスにより、使用予定だったバラの花の手配ができず、明日の朝イチに迫った撮影は大ピンチ。しかし奈未の案によって、バラ園でのロケ撮影に切り替えることになった。残された問題は、バラ園の使用許可が降りるかどうか。翌朝、奈未と中沢が揃って頭を下げるも、バラ園の園長は首を振る。
そこでカリスマ編集長宝来麗子が、「土下座」をしたのだ。
私はそれを見て、アホみたいに泣いた。文字通り号泣した。
実を言うとその前にも、一回泣いた。中沢がカルチャー誌から異動になって渋い顔をしていたにも関わらず、ファッション用語の辞典に付箋をいっぱい貼って勉強していた場面だ。口は悪いけどかっこいいやんけ…と思うと同時に、気づけば涙が出ていた。
(ドラマの流れとしては、このあと園長は承諾し、無事に撮影を決行。奈未は今の仕事に対する心構えが少し変わる。玉森くん演じる潤之介との関係も変化しながら、第二話へと続く。)
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宝来麗子と中沢、私が泣いた二人の場面に共通していたのは「目標のために、やりたくないことを全力でやっている」こと。
そしてそれは、私が昨年、できなかったことだった。
奈未がいるような世界で働くのが夢だった。
私も半年前まで同じ就活生だった。同じく出版社志望で、同じように羽田で迷った。奈未が面接までの時間、対策本を片手に慣れない東京でうろうろする姿はまるで、自分を見ているようだった。玉森くんみたいな美青年にベンチで抱きしめられることはなかったけれど。
私は、「やりたくないこと」がとことんできなかった。それが全滅した理由のひとつだと思っている。宝来麗子と中沢を見て泣いたのは、頑張ったのに報われなかった自分を思い出したからではない。編集者になりたいなんて大層な夢だけ掲げておきながら、「頑張りたいこと」「できること」しかやらなかった自分との違いを突きつけられて、それはもう、めちゃくちゃに、痛かったからだ。
理想の自分を空想して書く時間は楽しかったから、エントリーシートに対しては本気だった。もともと苦手な時事問題を解く時間は楽しくなくて、ついついスマホを眺めていた。試験時間内に三題噺を書き上げるための練習は何度もした。しかしおうち時間を言い訳に、大学で開かれる面接対策の面談には一度も足を運ばなかった。総合職でどの編集部にチャンスがあるかわからないのに、自分の興味のある分野しかまともに勉強しなかった。それこそ、あまり得意でないファッション誌関係は、遠ざけた。
今年度の就活には誰でも使える都合のいい言い訳がある。自分の場合は努力不足だとわかっていたのに、何ヶ月も前から必死で頑張って採用そのものが中止になってしまった同級生たちと同じように、無念の表情をしていた。
奈未を見てイライラしたのも、楽観的で、現状に文句ばかり言って、自分の希望ではないことに対して嫌な顔をしながら最低限しか動かない様子が、自分と重なって見えたのが理由だと思う。
最初に書いた、「世の中の流行にとにかく疎い」という話も例外ではない。流行や、好きになるかもしれないものよりも、今確実に好きなものだけに時間を注ぐ。それは決して悪いことではないのだけれど、出版社、編集者を目指す者としては、どうなのだろう。(これに関してはいろいろ意見があるかもしれないけれど。)
ラブコメドラマ、しかもその第一話でまさか泣くとは思っていなかった。
菜々緒演じる宝来麗子の土下座は、自分の甘えを、鋭く突きつけたのであった。
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もう就職先は決まった。そんなことを言っても今更だ。
そうは思いたくなくて、今これを書いている。
人に見られる場所に、この文章を残そうとしている。
「ドラマをたくさん観る」というざっくりした目標の中で一番最初に観たのがこの作品だったのも、何かの縁だろう。
「それをもっと好きになる」文章を書く。誰かの「好き」を応援する。
今の私に足りないものは、きっと、夢のために全力になる姿勢だ。夢のためにやりたくないことを全力でやる、というのはあまり現代の価値観にそぐわない気もする。でも、「やりたくないこと」からひたすら逃げてチャンスを逃した今の私を変えるには、必要なことだと感じる。だから、頑張ってみる。
まずは、「興味がない」を理由に動かないのを、やめにする。最初はかなり意識的に行うことになるだろうけど、何にでも興味をもって触れてみる。そうして都度、できる限り感情を言語化する。訓練する。
今年中には、note以外のメディアにも挑戦したいな。
4月から始まる社会人生活。
こんなことを言うのもよくないが、いずれ転職するつもりで入社する。でも、絶対に何か実績を残してからしか辞めないと決めた。その実績の内容は配属されてからでないとわからないけれど、まずは最初の場所で全力を尽くして、次の場所へ行く。カルチャー誌の編集長への道に繋がると信じてファッションについて夜中まで勉強する中沢さん、めちゃくちゃかっこよかったから。すべてを自分の力にする。推しもいるし、元気をもらいながら頑張る。
新年早々暑くるしいスタートを切ってしまいました。今年も自分らしく、「あらすじでは語られない日々のこと」、綴っていけたらいいなと思います。
前回のnoteを読んでくれた方々へ、今更ですが卒論、終了しました!わーい!スキありがとうございました!
卒論期間に書きたいことがそれなりに貯まったから、いっぱい書きたいです。
本年もよろしくお願いいたします。
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