桜とくず/北日本文学賞4次選考通過作品
桜とくず(約9000字,文庫本23p相当)
――昨日旦那と別れたんでしょ? 今日うち来るよね?
リビングにいる石本美咲は携帯電話をジーンズの尻ポケットにねじこんでから、キッチンに向かって声を上げた。
「ねえ佐々木、ちょっとちょっと」
「なにー?」
佐々木裕二がキッチンの下から首だけを出して、それにこたえた。
「このテレビさあ、どっちが買ったんだっけ?」
「さあ、どっちだっけ?」
「なにそれ。じゃあどっちが持っていく?」
「んー、どっちでも」
美咲の方を少しだけ見たあ