
旦那への気持ちは、自分の叫び
朝から旦那にイライラしている私がいた。
理由は 明確だ。
朝の挨拶 そこそこに私の悪口を言ってくる旦那がいたからだ 。
私が荷物が届いた時の段ボールを、旦那のクローゼットに隠していた。
それを見た旦那は、開口一番、「ねえ何あの段ボール」と、不機嫌そうに言ってきたのだ。
私は笑って「あ、ごめん」と言った。
「何なの ?ザ 適当」
その言葉にグサッと来たが 私は洗い物を続けた。
心の中では、ぷつぷつと湧き上がってくるものがあった。
(なにさ、昨日具合が悪いからって 1日 家事も育児も手伝わないで休んでいたくせに。)
(私が全部回したんだから。)
(ご飯だって美味しいものを作ったんだ。ありがとう ぐらい 言ってよ)
(昨日の夜だって作ったものをテーブルに出し忘れただけでグチグチ言ってきた)
(なんで私の忘れたところだけ見てやったところを見てくれないの)
その後 、「あー腹減った」と聞こえるように言ってくる旦那の声を無視した。
(かってにしろ)
と心でつぶやいた。
すると 冷蔵庫から昨日炊いたご飯やキムチ、納豆を取り出して旦那が食べ始めた。
もう娘を保育園に連れて行く時間になる。
「ねえ あーちゃん 起こしてきてよ」
旦那に声をかけると、
「今はムリ。今は食べないと。今日は今から仕事するんだよ。あと5分後だったらいいけど」
(は?起こして準備してからご飯食べればいいじゃん。何なの 自分ばっかり)
私は 心のざらつきが増してくるのが分かった。
(そうだ 期待してるから辛いんだった)
(いないものと思えば、上手くいくんだ)
私は会話をするのをやめ、自分で2階で寝ている娘を起こしに行った。
今日は娘の誕生日だ。
昨日 、「あした、5さいになるんだよ」と言っていたのが可愛かった。
まだ寝ぼけている娘を、お姫様抱っこで1階まで運ぶ。
「あーちゃん、誕生日おめでとう!」
そう言いながら。
1階に降りると、旦那が台所でプロテインドリンクを作っていた。
聞こえるように、
「あーちゃん 5歳だね、 おめでとう!」
と言った。
でも旦那は、気づいていない。
たまらず私は、
低い声で、「ねえ今日誕生日だよ?」と圧をかける。
旦那はこっちを見ない。
「ねえ今日 あーちゃんの誕生日だよ?」
こっちを見たが、何の反応もない。
何こいつ。
「ねえ、誕生日だよ?」
旦那を睨んだ。何のつもりだ。
すると 娘に近寄って
「あーちゃん、5歳になったんだね」と声をかけていた。
どうせ、絶対忘れてたんだろう。
そのぐらいなんだろう。
もう私は旦那の顔を見たくなかった。
あと2人の子たちはもうよろしく。
仕事だろうと 何だろうと。
そう 私は心でつぶやいて、娘の大好きな 塩にぎりを手に、娘と共に玄関を出た。
園に向かう車の中、
可愛い娘との会話が私を癒してくれた。
「しおおにぎり あったかいねえ。あーちゃん、だいすきなんだよ」
そう 微笑む娘。
さっきまでの心の荒波が、だんだんに静まっていく。
ありがとう。
ママもパパに感謝してないわけじゃないんだけど。すごくイライラしちゃったなあ…。
娘と会話しながら、もう一人の自分が つぶやいていた。
娘を送ったあと、自分の胸に聞いてみた。
「どうして、旦那にイライラしたの?」
「だってさ、全部私がやってるって思っちゃったんだもん。クリスマスケーキやプレゼントの準備も、今日の誕生日の準備も。
もっと、旦那と一緒に考えたかったよ。頑張って準備してることも分かって欲しかったよ。なんで私だけって思っちゃった。」
そうかあ…。
わかってほしかったよね。
一緒に、家族のイベントを考えたかったよね。
私は、いつも仕事を頑張ってくれているパパに、感謝できてないわけじゃなかった。
だけど今日のイライラで、
なんでこんなにムカつくんだろう?
感謝できてないんじゃないか、
その表面だけを見てしまいそうになっていた。
私は、自分に寄り添った。
「そっか、 分かって欲しかったよね。
ごめんね 。
私はちゃんと、イベントのこと大切にしてる。それって子供たちのことを大切にしてるからだよね。大好きだからだよね。
それって当たり前じゃなかったんだよね。私はちゃんと頑張ってるよ。 私が一番見てるからね。
子供達とっても喜んでくれたよね。 嬉しかったよね。
今度はイベントの前に"一緒に考えよう、準備しよう" って旦那に言おう。
それを言わなかったから相手もわからなかっただけだよ。本当は誘って欲しかったのかもしれない。自分は蚊帳の外 って思っていたかもしれないよ。」
私は今日の朝のイライラの原因が、
私自身にあることを理解した。
──『当たり前』じゃない。
そのことが、日常の小さなことで感じられている時には、たとえそれがどんなに小さなことでも幸せ感は大きい。
でも、
一方で、こうなると、とたんに心は荒む。
それは、「ない」ものに注目してみたり、
「当たり前だよ」と自分を認めてあげられなかったりすること。
『自分の出した想いは3倍になって返ってくる』
イライラした時はこれを思い出して、
一旦 思考をストップさせる。
そして、なぜイライラしたのか その原因を見つけてあげる。
大抵 自分だけで頑張っている時だったり、自分を小さく 見積もっていたり、認めてあげられなかったりしている時だから。
それがわかってくると、流れを変えられるよ。
まず、自己否定をやめられる。
そして、自分を認め、「ある」ことにフォーカス。
ポジティブ回路への道に入るんだ。
だから大丈夫。
私も、今日の朝はイライラしちゃってごめんね。
と旦那に想う。
今日もまた 誕生日パーティー、
子供達に喜んでもらえるようにしよう。
旦那と一緒に、あーちゃんに手紙を書こう。
2人の子供なんだから。
2人の愛を届けよう。
*
50分ほど、1人で過ごし、自分の気持ちと向き合えたことで、
私の気持ちは一旦落ち着いたかに見えた。
家に帰り、Zoomで友達と1時間ほど話す。
さっきまでの黒いモヤモヤした気持ちはどこかへ飛んで行ったかのように
冬至の楽しい思い出や、最近の取り組みについて共有し、笑い合った。
話し終わってから、冬休み中の息子が、お昼ご飯に「カップ焼きそば」を食べたいと言ってきた。
これはいいぞ、と私も同意し、息子は初めてのカップ焼きそば作り。
私も一緒に作って、2人で美味しいねと微笑みながら頬張った。
旦那は在宅の仕事中。まあ、自分で用意するでしょ、と頭の片隅に思いながら。
──すると、旦那が二階から降りて来た。
出来上がったカップ焼きそばを、ズルズルと食べる私たちを見て、開口一番、毒を吐く。
「は、また手抜き料理か。だからそうなるんだよ」
これはいつも、私の体型について嘲笑する言葉。
そして首を伸ばしながら、周囲を見渡すジェスチャーをして、言い放った。
「ねえ、どこ綺麗になったの?」
大掃除のことを、彼は言いたいのは分かっていた。
「え?もうやってあるでしょ。台所とか。あとは換気扇とかだよ」
「終わってないじゃん。
家中の通信機器の電源全部切るぞ」
私が、さっきまで友達と話していたのが聞こえていたんだろう。そして、日頃からそうしていることも知っていて。
なぜ、「やらない」ことにフォーカスして言って来るんだろう。
私は、彼に、言わないのに・・・。
そうして、私の心がヒクヒクと痛みを感じ始めた。
言いたい、どうして私だけ責められるの?
あんただって、やってないじゃん。全部イベント事、私に任せっきりじゃん。
子供達があんなに楽しみにしている事も、無関心でいてさ。
クリスマスイブにだって、飲み会行って、子どもたちからの電話に出なかったよね?──何さ、単身赴任だからって、好きに時間使っててさ。同僚と、クリスマスイブに飲み屋にくる物好きを見に行こうって話になって、って言ってたけど、そんな変な理由で。
私の、なんでやってないことばっかり見てくるの?
やったことを見てよ──。
言いたい。言いたい。言いたい。
「だってさ、イベント事とか、全然協力してくれなかったじゃん。
もっと一緒に考えて、一緒にやりたかったよ。
なんで私ばっかり」
「─は? それとこれとは別だろ」
──別じゃない、全然別じゃない。
私の中では繋がってるの。
悲しい、私だって、こんなにやってるのに。
“熟年離婚” 。なぜかそんなワードも脳裏に浮かんだ。
きっと、そうなる夫婦の、奥さんの気持ちは、これだな。
ずっと、ずっと、頑張ってきたのに、大好きだった主人には評価されないで、
「当たり前」として見られて。
そのうち、「おい、お茶」と、小間使いのように扱われて。
我慢していることさえ自分で気づかないで、
ある時、プッツンと、切れるんだ。
もう、無理です、って。
──わかるよ、そうなるよ。
だって、旦那は、社会的に安定して人と世間と繋がっていて、仕事した分評価されて、給料もよくて。
私のことを下に見ている。正直、そうだよ。
そうして、私は、いつの間にか、お金を出してもらっている私、という見方を、自分でしていたんだ。
「小さい私」に、自分でしていたんだ。
いいの?
ううん、よくない。
“私は、私に対して、旦那が「ひどい扱いをする」ことを、許さない“
私の目には、怒りからの火が灯った。
やっと、やっと、私は私のことが好きになったのに。
私の欠点にばかり、やらないことばかり、目を向ける人に、おいそれと付き従う義理はない。
主張するんだ。私は、私のことを大切にするんだ。
ちゃんと、いやな事は、いうんだ。「イヤだ」って。
「私だって、いつも、料理や洗濯、家事をちゃんとやってるよ? なんでそこを見てくれないの?なんでやってない事ばっかり見るの?」
私は、主張をした。大人っぽくはないかもしれないけど、喚き散らしてもない。ほかにどんないい伝え方があるのかはわからないけれど、これが、いまの精一杯の伝え方。
もう私の目には、涙が溢れてきていた。
「だって、ちゃんとやってくれる人だから、俺はあっち(単身赴任先)にいられるんだよ」
そう取ってつけたような旦那の言葉を遠巻きに聞きながら、
私の思考は、「私を守り、私を主張し、私が尊重される世界」を描いていた。
それから2人の会話は止まった。私が会話を切ったからだ。
私主導で、変えられることに、ほんの小さなことだけど、気づいた。
そして、きまりの悪くなったであろう旦那が、息子とおもちゃの整理をし始めた。
旦那の得意な片付けを、一緒にしてくれるのは、ありがたい。
旦那が、なんだか私に話しかけてくるが、よく聞き取れないし話したくないので返事をしなかった。
私は、下の子を寝かしつけに入った。
どうしようか、このまま昼寝をして、嫌なことを忘れようか──。
いや、寝れないな。
目が冴えて寝れずにいたため、諦めて一階のリビングへ。
旦那と息子が2人で楽しそうに片付けをしているのを耳で捉え、
さて、私は、と意識をどこに向けようかとした途端、
風呂場周りの埃が気になっていたところに焦点が合った。
ここやろう。
そうして、黙々と、1cmもの埃が積もった換気扇周りや、スノコの洗浄、外への日干し、お風呂用おもちゃの破棄などをおこなった。
掃除している最中から、綺麗になっていくにつれ、どんどんと心が気持ちよく晴れていくのに気がついた。
結果して、私はできた。
今まで、気になっていても手を入れなかったところを、綺麗にできた。
頭の片隅で、これは、旦那のお陰だと感じた。
今日は「怒り」から、出発したところだったけれど、
こうして掃除ができてよかった。
ということは、これももしかしたら、こうなるようになっていたのかもしれない。
つまり、私が、潜在意識的に、「できない私」のままでいさせるつもり?!って怒って、旦那にそれを言わせて。
要するに、この「怒り」の感情は、必然だったってこと。
そんな風に、少し、俯瞰して見ている自分がいた。
この世って、やっぱり上手くできているよね。
(巻き添えくらっちゃった旦那よ、ごめん・・・。)
私が最初から計画を立ててやっていれば、違うパラレルな道もあったのかも知れない。でもこれはこれで、「自分はできた!」「家も綺麗になった!」「旦那に気持ちを伝えられた!」で、結構いい道だったね。ありがとう。
さっぱり気持ちよく、心も鎮まり、思考も整ってきた中で、
今夜、誕生日会に渡す、あーちゃんへの手紙を書いた。
そして、旦那にも便箋を渡した。
しばらくして、
私は、旦那に、
「綺麗になったでしょ?」
と少し鼻高々に微笑んだ。
旦那は、私の掃除したところを見て言った。
「ふうん、まあね。でもあと、外に干してるのをしまうのも必要なんじゃないですか?」
私は、言葉は相変わらずだけど、顔は嬉しさを隠しきれない旦那のことが見えていた。認めてくれたなというのが分かった。
だから、嬉しかった。
(やっぱり私、自分で掃除して無かったことを、後ろめたく思っていたんだな。
旦那よ、きっかけをくれて、ありがとう)
*
その後の誕生日会は、大成功したのはいうまでもない。
みんなで歌を歌ったり、手紙を渡して、兄妹で朗読してくれたり、下の子がご飯をひっくり返したり(笑)6号ケーキをペロリと平らげたり。
子供達の成長を実感しながら、幸せな時間を味わった。
こうして、家族で過ごすために、旦那もいてくれているんだ。
この温かな家があるのも、安心して暮らせるのも、旦那のお陰だ。
ありがとう、の感謝を伝えられてなかったのは、私だったなあ。
私は、私が自分で行動したこと(旦那への主張、掃除)、
私には、意思がある、私は私を大事にしたい、と思った事、
「できた」ことにフォーカスしたことで、
心が安定して、旦那の「ありがたさ」「やってくれていること」に目を向けることができた。
やっぱり、自分の世界は、自分で作っているんだ。
私が、「私をどんな風に思い、扱うか」が、そのまま外の世界に反映されているんだ。
旦那や、周りから、「ひどい扱い」を
されていると感じた時は、点検してみよう。
「私は、私のことを大切にできている?」
「できるのに、過小評価してない?バカにしてない?」
って。
朝はもう、心がひび割れた皮膚のようにガサガサしていたが、
その後の自分の行動に救われた。
気づきに、救われた。
よかった。
ありがとう。
この出来事で、色々気づけたよ。
ありがとうね。
自分に、ちゃんと、お礼の言葉を届けた。
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