銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_4

C社からの帰り道、田中が運転する車の中で
「決算書の分析資料作成しといて」
と新支店長がいった。
 ※決算書の分析とは、税理士が作成した決算書を「自行の貸借対照表、損益計算書」に転記し、自己資本比率等を算出する作業のことである。当時、本部が作成したEXCELソフトが、支店に配布されており、EXCELに数字を打ち込めば、「貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書」を自動で作成してくれた。
これを協議書に添付する

翌日の昼過ぎ、田中は新支店長とC社を訪問し、C社社長と面談した。
新支店長は、カバンから「企業要録」を取り出し、C社社長と雑談を交えながら、「企業要録」を埋めていった。
 ※企業要録とは、会社の事業内容、社長個人の経歴、資産内容等の情報を記載したもので、協議書に添付する

田中は、新支店長が、田中のOJTとしてこの場を設けたことに気づいていた。
「この新支店長は、今まで仕えて来た支店長とはタイプが違う。本当にありがたい事だ」と感激していた。

新支店長は
「社長、1500万円の手形貸付、◯市の社長の土地を担保にして下さい。手形の書換は半年ごと、ただし恒常運転資金なので、書換の都度、面倒な書類の準備はいりません。田中が持参する手形に、社判、社印を押して貰うだけです。おまけにある時払いの催促無しです」と言った。
C社社長は、
「OKです」とあっさり融資条件が決まった。
その後、C社社長室の奥にある、車の仕入用のオークションサイトを使う様子も見せてくれた。

C社への融資実行後、
田中は、「経営分析」の本を購入し勉強を始めた。
「いつか新支店長のような人になり、部下が出来たら仕事を教える人になる」と心に誓った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?