不意打ちドリアンを知っているか
夏です、梅雨です、じめじめします…。
湿気が街に充満すると、やはり思い出すのは広州時代。広州の湿気の多さと日本のそれとでは比べ物にならないのだけど…。
そう、何せ広州は服がかびますのでね。あ、キノコも生えますよ、壁に。
一瞬、ドアを開けたときに漂うもやっとした空気。それとともに香る(匂う)服の生乾きのような…梅雨時期の独特なにおいに思わず広州に連れ戻される感じがする今日この頃。
広州ではしょっちゅう感じていたけど日本に帰ってきて実は、まだ一度も嗅いでいない臭いがあります。それは…
ドリアン。
広州には不意打ちドリアンというのがあるのですよ。ご存知ですか?知らない方も多いでしょう。なぜなら私の造語だから。
不意打ちドリアンを説明する前に皆さま、ドリアン、これ、実物の香りをかいだことはありますか。ガソリンのような、刺激に満ち溢れたかおり。そばにあることが瞬時にわかる存在感あるかおり。
簡単に言いましょう。ドリアン、それはそれは、実にまことに強烈に臭い。んですよほんまに。
中国語をまだよく知らなかったある時。広州でコーヒーを頼んだことがありました。メニューにある写真と「咖啡」という中国語からあたりをつけ多分これがコーヒーやろ、と思って注文しました。
手に取って、口に含んだその瞬間、おのれなにやつ!盛ったのか!?と感じるほどの刺激臭が私の鼻をつきました。文字通り、突いたのです。
そう、なんとそれは、ドリアンフレーバーのコーヒーでした。
ドリアンフレーバー。なぜ、そうした。ドリアンに慣れぬ身からしたら、手違いでしかないその商品開発に意義を唱えたくなるのですが…広州ではドリアンが大人気なのです。そう、すごい好きな人が多い。イオンとか言ってもフロアにめっちゃおいてある。さぁ。ドリアンの香りに包まれるイオンを想像してみてください。
だから、何にでも結構、ドリアンフレーバーがある。コーヒーのみならずピザ、ケーキ。しかもきゃつらは「ドリアン」を前面に出さない。しれっとドリアンフレーバーになってる。いや、メニューには書いてあるのですよ。だからそれしっかり見ておかないと後で商品を家で開封して泣きを見る。
前置きが長くなったのですが、不意打ちドリアンとはこのように油断したときに出会うドリアンフレーバーの商品のこと。
嗅覚は特に、記憶と強く結びついている気がします。
きんもくせいが咲きだすと、小学校の頃に友人と作ったきんもくせいの香水を思い出すし、ガソリンの臭いに気づくと、アフリカで嗅いだ、トラックが横を通りすぎる時の臭いを思い出します。
梅雨の時期。思い出すのは雨にけぶる広州の街並み。そして、ドリアンの香に包まれたあの店、この店、そしてドリアンコーヒーの衝撃なのでした。
ドリアンの名誉のために申し上げると、味はすごくおいしいらしいです。好きな人は、相当好きです。私もいずれまた広州に舞い戻る機会を得たら、今度こそドリアンを食すと心に決めています。臭いに負けないで。