本に残された形跡 見知らぬ誰かとの接点
冷たい雨が降る土曜日。
図書館で目にとまったのは'風鈴'の本。
季節外れなのは構わず、興味の赴くまま借りてみる。
子供達が寝静まった夜。
『風鈴』を開くと、1枚の薄い紙が挟まっていた。
図書館で本を借りた際に発行される、手のひらサイズの紙。
貸出図書一覧と返却期限が印字されている。
それは、私よりずっと前..誰かが2022年7月に『風鈴』を借りた形跡。
同じ日に星座の本も借りたようだ。
7月といえば七夕。
〜その人は、'星座'の本を見ながら夏の星空を見上げている...そこに'風鈴'の涼を運ぶ響きが重なる〜
ある夏の夜の情景を勝手にイメージしてしまう。
会ったことが無く名前も知らない人と、
私のただ1つの接点は同じ本を手に取ったこと。
どんなことを感じたのか
どのページに心惹かれたのか
とりとめもなく想像を巡らせている内に....
何年も前の似たような記憶が蘇った。
◇◇◇
個人で営む古本屋で購入した小説。
挟まっていたのは...九州のバスカード。
テレフォンカードのような、利用すると穴が空くタイプ。
地域は違えど、私も磁気カードを使ったことがあるので、なんだか懐かしい。
けれども..本の狭間にバスカードを見つけた当時は、SuicaなどのICカードが流通しており、既にそのバスカードは廃止されていた。
〜バス乗車中に本を読んでいて...降りる時、しおり代わりに挟んでそのまま。
数年後、県をまたいで本とバスカードは旅をして...私の所まで辿り着く〜
新品の書籍を購入した時には起こり得ない出来事。
図書館の本や古本を手にした時、偶然見つける付箋、メモ紙、レシート。
それは、見知らぬ誰かのワンシーンを想起させるささやかな形跡。
見つけると少し嬉しいのは、
同じ本に興味を持つ同志を見つけたような...そんな気持ちになるからだと思う。
週末、また本を借りに行こう。