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どんな香りが好きですか
ねぇ、今日はどこの香水を使ってるの?
私のお友達の一人は、私が使っている香水を褒めてくれる。
私はそれほど強い香りのする香水は付けないし、たくさんの種類を持っているわけではない。
香水だけではなく、洗濯洗剤や柔軟剤の香りなのかもしれない。
でもそのお友達はいつも、私から漂ってくる香りが好きだと言ってくれる。
その友達だけでなく、多くの友達、そして見ず知らずの女性からも、あなたの使っている香水を教えてくださいと言われた事が何度かある。
多分私の使っている香水が、大衆ウケするものだからだろう。
初めて香水を使ったのは、いつだろうか。
思い返してみると、それは当時お付き合いをしていた彼からのプレゼントだった。
彼は私を香水売り場に連れて行き、ある香水を手に取った。
そして、その香りが好きかどうか、私に尋ねたのだ。
それは、柔らかな淡いグリーンの瓶に入った、ブルガリのEau Parfumée Au Thé Vertという香水。
私はそのグリーンティーの香りを、とても気に入った。
素直にそう答えると、彼の少し不安そうだった顔が一気に晴れて、良かった!と大きな笑顔で笑った。
そしてその日に、彼はその香水をプレゼントしてくれたのだった。
誕生日でも、何かの記念日でもなく、ただ私にこの香水が合う気がしたからと言って、彼はプレゼントしてくれた。
こうして私はしばらくの間、この香水を気に入って使い続けた。
香水をサプライズでプレゼントするのではなく、私が好きかどうか聞いてくれた彼は、かなり思慮深い人だったと思う。
自分の好きな香りが、他の人も好きだとは限らないし、むしろ苦手な香りである可能性さえある。
彼はいつもそんな風に、静かに深く、他人を思いやる人だった。
globeの歌の歌詞にもあったけれど、今でもグリーンティーの香りと共に、彼のことを懐かしく思い出す時がある。
カルバン・クラインのEternityも好きだったし、クロエのEau de Parfumの香りを初めて嗅いだ時には、驚くほど気に入ってしまい、今も好きで使う。
ディオールのMiss Dior Blooming Bouquetにも一目惚れ(一嗅惚れ?笑)して、今も使っている。
ジョーマロンのEnglish Pear & Freesiaはお友達からプレゼントで、クリームと小さな香水を頂いたのがきっかけで知った。
多分、これらの香水はとても人気があり、良く知られているものだと思う。
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そして同じように、今回はディプティックの香水と巡り合った。
小さな箱に、綺麗に並んだ5本の香水。
お友達が、私が好きだろうと思った香水や、似合うと思うものを詰め合わせてくれたのだそうだ。
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さすが、私の好みを充分に知っているだけあって、どの香りもとても気に入った。
夏に使いたいようなフレッシュな香りのOyedoは、柚子の香りが元気を与えてくれる。
薔薇の花束がそのまま薫るようなEau Rose。
同じくローズ系のL‘Ombre dans l‘Eauは、誰もが好きになる香りではないだろうか。
そしてビターオレンジが優しく香るEau de Sens。
白檀が、まるでお香が焚かれたお寺にいるような落ち着いた気分にさせてくれるTam Dao。
毎日、その日の気分に合わせて色々な香りを身に纏える。
素敵なプレゼントを頂き、私は歓喜してしまった。
友達が、私を思いながら一つ一つ選んでくれた時間さえも、本当に愛おしい。
私は、365日香水を付ける。
好きな香水を身に纏うと気分が良いし、しばらくしてから手首に残った香りを嗅ぐと、落ち着いたりする。
どこにも出かけない日でも、ただ自分のために香りを纏う。
蛇足かもしれないが、私はほんのちょっと、人よりも鼻が良いようだ。
いつだったか、こんな出来事があった。
友達と旅行に出掛けている時、どこか遠くからマリファナの匂いがしてきた。
なるべく早くここを離れようと友達に言ったところ、何故かと聞き返されてしまった。
マリファナの匂いで吐き気がしてしまうのだと説明すると、そんな匂いなどしないから妄想だと笑われた。それでも私の意見を聞き入れてくれて、その場を離れようとした。
少し歩くと、しかしその匂いは急に強くなってしまった。
私達の方向に向かって、マリファナを吸っているらしきグループが歩いてきた。
この人達から匂っていたのだと私はすぐに納得したのだが、友達はその事実を目の当たりにして、驚愕していた。
こんなに遠くの物が匂えるなんて、Ditoの鼻はまるで犬みたいだと、また笑われた。
鼻が良いのは、このようにデメリットがある。
苦手な匂いが近くにあると、吐き気がしてしまうし、頭痛がする。
何事も鈍感なほうが、生きるのは楽かもしれないなと、ふと思ったりもする。
そういえば、『パフューム ある人殺しの物語』という映画があった。
ドイツ人作家パトリック・ジュースキントの作品を映画化したものだ。
原作は後から読んだのだが、映画の印象があまりにも強烈で、読みながらもそれらのシーンが思い浮かんでしまったほどだ。
私は、あの小説の主人公ほど鼻が良いわけではないけれど、他人よりは敏感であり、それ故に苦手な匂いというのも多い。
全くそのかたに非があるわけではない事を前置きしておくが、こちらに住むようになってから、体臭が強いかたの割合が多い事に、嫌でも気付かされた。
日本ではスメハラという言葉があるそうだが、臭い対策の商品がたくさんある。
こちらでは、強い体臭を、更に強い匂いで誤魔化すせいか、匂いのキツイ商品がドラッグストアの棚に並んでいる。
体臭と共に、匂いのキツイ様々な商品は、私にとっては耐えがたい時がある。
日本ほどでなくとも、混んでいる電車では電車内の移動ができないこともある。
電車を降りてしまえばよいが、それでは会社や待ち合わせに遅刻してしまう。
なんとかしたい。
そんな時には、私は手首をそっと嗅いで、お気に入りの香水の匂いで自分を守ってあげている。
これからは、毎朝香水を纏う度に、お友達の事を思い出すだろう。
香りと共に、お友達の優しさが私を包む。
私を守ってくれる。
それは香りよりもずっと強い力で、私を幸せにしてくれる事だろう。
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皆さんの好きな香水は、どんな香水ですか?
オススメがあれば、是非教えてください!