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ベルギー三都物語①ヘント(追記あり)

ベルギーはドイツから近く、食べ物が美味しく、街並みも美しいので何度でも訪れたくなる。
今回は、ベルギーの三都市を巡る旅。
旅の目的は、ヤン・ファン・エイクの絵を、それぞれの都市で見ること。
つまり、ヤン・ファン・エイクを巡る旅というわけだ。

思い返してみると、私が絵画に初めて興味を持ったのは、小学生の頃。
ルノワールが描いたピアノを弾く少女たちの絵に一目惚れし、このポスターを部屋に飾り飽きるまで眺めていた。
あれから今まで、各地の美術館を訪れてきて、素人なりに色々な画家を知り好きになった。
ここ最近、ヤン・ファン・エイクの作品を改めて数点見る機会に恵まれたのだが、それがきっかけになり、私はどうやら彼の絵の魅力に取り憑かれてしまったようなのだ。
彼の作品を、今まで見てきたものも含めて、できる限り多くこの目で見てみたい。
ベルギーに出かけるならば、クリスマスマーケットの開かれている冬がいい。
これらの願いが重なった事が、今回の旅の出発点となった。

まずはヘント。
ヘントはフラマン語のGentで、英名ではゲントGhent。以降こちらの記事内ではヘントと記載。
この街の名前がそのまま使われている『ヘントの祭壇画』または神秘の子羊とも呼ばれるヤン・ファン・エイクの最高傑作と言われる絵がある街だ。
その祭壇画のあるバーフ教会へ、ようやく足を運ぶ事ができた。
予約の時間まで余裕があったので、まずは街歩き。

市庁舎

ゴシックとルネサンスの二つの様式が見られる建物としても有名。
ここは、カトリックとプロテスタントが和解した『ヘントの和解』が交わされた場所でもある。
外から眺めていたら、市庁舎からちょうど出てきたヘント市民らしきおばさまが、中にも入れるから見てごらんなさいと教えてくださった。

大肉市場 

屋内市場で、普段はレストランなどが営業しているらしいが、生憎工事中。

フランドル伯城 

1180年に建てられたこの城は、1353年までフランドル伯の居城として利用されていた。
今回は外観のみ。

グラスレイ&コーレンレイ

レイは河岸を表すそうで、グラス(香草)とコーレン(穀物)の意味。
富と権力を存分に表すかのように、壮大なギルドハウスが建ち並び、中世にタイムスリップしたかのような一角は、街での人気の場所。
昼も夜も、どちらもとても美しい場所だ。

聖ミカエル橋

ギルドハウスを見渡せる場所に架かる橋。
橋の中央には、ミカエルの像が立つ。
大きな建物は旧郵便局。

コーレンマルクト広場

この辺りはレストランが集まり、賑わいを見せている。
クリスマスマーケットの準備がされており、大きな観覧車もあった。

聖ニコラス教会

ゴシック様式で、内部は素晴らしいステンドグラス。

鐘楼と繊維ホール

この鐘楼はこの街のシンボルで、高さは91m。
ベルギーとフランスの鐘楼軍の一つとして、世界遺産に登録されている。
設立は1300年ごろ。
フランドル地方の発展を支えたのは、毛織物。
古くから羊毛の産地として知られていたこの地方は、イギリス産の羊毛を輸入するようになり、さらにその生産活動は活発になった。
繊維ホールは1425年に設立され、当時この街の有力者、権力者のオフィスとしての役割を担っており、会議場としても利用されていたそうだ。

エレベーターで、楽々頂上へ。
91メートルの高さからの街の眺め。
15:30には、カリヨンの鐘が街に響き渡る。
先ほど見ていたニコラス教会。

反対側は、聖バーフ教会。
こちらもクリスマスの飾り付けがされて賑やか。

途中の階には、鐘楼の頂上に飾られているドラゴンや、カリヨンの展示もある。

聖バーフ大聖堂

そしていよいよ、聖バーフ大聖堂へ。
大聖堂の前には、フーベルトとヤン二人の像が建てられている。

屋台があり背後からの撮影となってしまった

大聖堂の見学は、ゴーグルを付けてVRを体験できるコースを予約しておいた。
30分ほど詳しい説明を聞いてから、いよいよ祭壇画のある階へ。
入り口には、ルーベンスの絵があるのでお忘れなく!と係のかたが教えてくださった。

兄フーベルトが描き始め、1432年に弟ヤン・ファン・エイクが完成させたと言われているこの祭壇画。

ブルゴーニュ公に使えていたヤン・ファン・エイクは、当時の最高レベルの報酬を得ていた画家と言われている。
この祭壇画は、ヨドクス夫妻が聖バーフ教会に寄進したもので、大きさは3.4x4.6m。
第二次世界大戦中、美術コレクターでもあったヒトラーにより祭壇画は持ち去られてしまったが、モニュメント・マンによって取り戻された。
この様子については、映画モニュメント・マン(邦名ミケランジェロ・プロジェクト)でも詳しく描かれている。

祭壇画を目の前にすると、言葉を失うほどの感動で鳥肌が立つ。
恥ずかしながら、この絵の前で涙が出てしまった。
祭壇画にはあらゆる情報が無駄なく描かれており、さらにその描写の細かさに驚く。
人々の顔の表情が豊かで、物体の質感がこれでもかというほどにリアルで細密だ。
VRの世界で、この絵について当時の様子を体験できるのも素晴らしいアイデアだ。

祭壇近くまで見学できる
兄フーベルトのお墓

街は、クリスマスマーケットの開催へ向けて準備が進められていた。

宿泊は、市庁舎の向かいに位置するNH Gent Belfortにて。
鐘楼にも聖バーフ教会にも近く、とても居心地の良い滞在をさせて頂いた。

ベルギーといえば、ワッフル。
1日目のヘントでは、ブリュッセル風のワッフルを注文。
焼きたての甘い香りと共に運ばれてきたのは、さくらんぼとクリームの乗ったワッフル。
サクサクと軽い口当たりで、とても美味しかった。

神秘の子羊を礼拝するシーンは、人々にとって最終的な平和が訪れた瞬間。
私も、一番見たいと望んでいたヤン・ファン・エイクの祭壇画を見る事ができ、心に平和がもたらされた一日、そして素晴らしい旅のスタートとなった。

ミカエル橋から見た教会・鐘楼

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追記
いつも記事を書く時は、旅が終わってしばらくしてからにしています。感動した事、考えた事を頭の中でゆっくり纏めたいからです。
しかし、今回はあまりにも感動してしまい、祭壇画を見た日に一気に記事を書いて、アップしました。

話は変わりますが、私は山田五郎さんのオトナの教養講座というYouTube番組がお気に入りで、全て欠かさず見ています。
五郎さんのお誕生日が12月5日で、翌12月6日には66歳のお誕生日祝いのLIVE配信をされる事が決まっていました。
番組をご覧になったことのある方はご存知かもしれませんが、LIVE配信の前に質問を募集して下さいます。
いつもどんな質問が出てくるか楽しみですが、一度も質問をお送りしたことはありません。
しかし、五郎さんが体調を崩されてからずっと心配していたこと、そして五郎さんの解説を思い出しながら祭壇画を鑑賞できた事に対して感謝の気持ちでいっぱいだった事、そして奇しくも五郎さんのお誕生日にヘントにいた事が重なり、初めてメッセージを送りました。
五郎さんに感謝の言葉が伝われば良いなと、ただそれだけの思いでした。
LIVE配信は、旅の途中で移動しており見ていなかったのですが、翌日の朝、早速いつものようにYouTubeを見始めてビックリしました。
私からの質問を、何と一番最初に取り上げて下さっていたのです。
そんな事があり、ヘント旅行はまた一つ思い出が増えました。
せっかくなので、五郎さんにお返事を頂いた思い出も、こちらに貼っておきます。

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その他、ベルギーを訪れた時の記事はこちら。

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