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ドイツの移動遊園地 ラインキルメス
ドイツには大型遊戯施設が少ない。
その代わりに、移動遊園地やサーカスなど、期間限定のものが頻繁にやってくる。
移動遊園地は、ドイツ語でKirmesキルメスと呼ばれている。
デュッセルドルフには毎年、大小合わせて何度か移動遊園地が来るが、その中でも一番大きなイベントが、毎年7月に開催されるもので、ラインキルメスと呼ばれている。
近隣の街と比較しても、かなり大規模な移動遊園地だ。
入場は無料なので、どのように計算されているのか不明なのだが、たった10日間の開催期間で400万人が訪れると言われている。
2020年、2021年ははコロナの影響で開催されなかったが、今年は久々の開催となり、15日からスタートした。
ライン川の川岸に、少しずつ遊具が組み立てられていく様子を見ると、あぁ今年も移動遊園地の季節が来たなと思う。
観覧車やジェットコースターなど、遠いところからも見えるものがどんどん形になると、さあ、今年はいつ遊びに行こうかと、無意識に計画してしまう。
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ドイツの満員電車は珍しいけれど、最寄りの駅までもみくちゃにされながら到着すると、コロナ前と同じ景色がそこにあった。
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お菓子からビールまで、屋台もたくさん並んでいる。
アーモンドの炒った香り、フライドポテトを揚げる香り、焼いたり煮込んだりされているお肉の香り。綿菓子の甘い香り、たくさんの香りが鼻を刺激してくる。
去年、小規模の移動遊園地に出かけた時には、まだ入り口でコントロールがあり、場内もマスク着用している人が多かった。
今回は入場コントロールは無く、マスクをしている人には数人しか出会わなかった。
マスクがないと、様々な香りがこんなにもはっきり分かるのだ。
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観覧車は、子供の頃からずっと大好きだ。
ドイツの観覧車は、ゆっくり一周ではなく、かなりの高速で何回転もするので、初めて乗った時にはかなり驚いた。
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観覧車からの眺めが大好き。
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観覧車に乗っている時間が、日没と重なった時のもの。
ライン川の夕焼けがとても綺麗。
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移動遊園地は、決して子供達だけのものではない。
遊園地の一角には、本格的なビアホールも建てられるので、大人は遊園地目当てではなく、ビール目当てで出かける人も多いのだ。
ウェイトレスさんはドイツの民族衣装を着て、ライブでドイツ音楽が演奏される。
小さなオクトーバーフェストとも言えるかもしれない。
さて、移動遊園地は、このように街を移動するたびに組み立てられるものなので、日本の安全基準から考えると、とんでもなく危険だと思うことがしばしばある。
冗談ではなく本当に、数年に一度、ジェットコースターで亡くなったというニュースを耳にする。
日本のギネス記録レベルのジェットコースターはもちろん怖いけれど、死ぬかもしれないと思いながら乗るジェットコースターは、比較にならないほど怖い。
私も一度だけ、恐ろしい目に逢ったことがある。
私は友達数人と出かけており、みんなで一斉にジェットコースターに乗ることになった。
そして、安全バーがしっかり固定されていないのではと思う中、発車のベルを聞いた。
体とバーの間に隙間があるので、カーブや車体が落下する度に、落ちないように必死にしがみつく。
浮いた体が、安全バーにガンガン当たる。
地獄のような数分間だった。
落ちてしまうのではないかと不安で、体の筋肉全てを使って、バーにしがみついていた。
無事に停車した時、私は泣いていた。
本当に怖かった。
足がすくんで椅子から立てず、友達に引きずり出してもらった。
友達に話をしたら、そんなことがあったとは気づかなかったと驚かれた。
今になって冷静に考えると、なぜ発車のベルを聞いた時に、大声を出してでも止めてもらうように言わなかったのかと思うのだけれど、その時には、友達にも声をかけることができないくらい、とにかくパニックだった。
家に着く頃には、安全バーにぶつかっていた肩や二の腕辺りがじわじわ痛くなり、翌日にはその痛みが増し、しばらくすると、ぶつかった場所が広範囲で青あざになってしまった。
私は、フジヤマやフリーフォールが大好きだったのだけれど、それ以来絶叫系には乗れなくなった。
観覧車には今でも乗るけれど、頂上に近づくと少しだけ怖い。
ジェットコースターの事故ニュースを聞く度に、幼い子供が振り落とされたという内容であることにショックを受ける。
私と同じ状態だったのかなと、つい想像してしまう。
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そんな思い出があっても、私は移動遊園地の、あの非日常感が好きだ。
子供の笑顔も可愛いけれど、大人が子供以上にはしゃいでいるのを見るのも面白い。
とにかく、みんなが幸せそうだから、そこにいるだけで幸せな気分になってしまう。
移動遊園地を思う時、私は桜の花を思い浮かべる。
淡く繊細なピンク色で、人々に春を告げる桜。
見るだけで、幸せな気分になる。
それなのに、桜は無情にも、あっという間に散ってしまう。
春の長雨が、私はいつも少しだけ憎い。
でも、すぐに散ってしまうその儚さが、より一層桜の美しさを引き立てるのかもしれない。
移動遊園地も、この街に夏の訪れを告げるもの。
見事な賑わいで、人々を幸せにする。
コロナ規制から解放された人々は、今年はより一層笑顔が明るい。
でも、その賑やかさが嘘のように、あっという間に、跡形もなく他の街に引っ越してしまう。
そして、ライン河岸はいつものように、羊が草をはむ場所になる。
短いからこそ、移動遊園地が恋しくなるし、また行きたいと思ってしまうのかもしれない。
楽しい思い出の場所だからこそ、是非、安全対策はしっかりして欲しいと思う。
楽しい思い出が、つらい思い出になって欲しくないから。
そして、来年もまた無事に開催できるように祈っている。
子供や大人のとびっきりの笑顔を見に、また移動遊園地に出かけたいから。
もしくは、単にビール目的かもしれないけれど。
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