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南ドイツ一人旅⑦学生の街テュービンゲン

テュービンゲンTübingen。
旅行の宿泊地に選んだアルプシュタットと、州都シュトュットガルトの、ちょうど真ん中に位置する。

テュービンゲンとは

テュービンゲンは、ハイデルベルクと同じくネッカー川のほとりの街。
そして、同じく大学街だ。
街の歴史は古く、ローマ人が植民地として85年頃にこの辺りに進出したという。
12世紀頃からは交易の中心として、街は発展する。この頃、ローマ教皇フリードリッヒ1世は、街に修道院を贈ったそうだ。

1342年、ヴュルテンブルク伯爵がこの街に居城を構えた事から、街の発展は揺るぎないものとなった。
その居城は今も残っており、このお城は今は大学として使用されている。
ドイツで最も古い大学の一つに数えられ、設立は1477年。
ヴュルテンブルク-ウラッハ エバーハルト5世によって建てられた事から、大学の正式名称は、エバーハルト・カール大学テュービンゲンだそうだ。

毎年選出される、世界の大学ランキング100。
2023年には、ドイツからは9つの大学が選ばれ、テュービンゲン大学は86位。
大学に関係するノーベル賞受賞者は、11人もいるそうだ。
他にも、天文学者ケプラー、詩人ヘルダーリン、哲学者ヘーゲルなど、著名人を多く輩出している。

アルプカードで、市内観光ガイドを見つけたので、早速申し込みをしてみる。
この日は38人も参加者がいて、グループを2つに分ける必要があったほど。
人気の街だという事が伝わってくる。

ネッカー川の中洲

ガイドさんに連れられ最初に来た場所は、ネッカー川の中洲。 
ここは、なんと人口中洲だというので驚いた。
真っ直ぐに造られたプラタナスの道。

フリードリヒ・ジルヒャーの像

この中洲には、フリードリヒ・ジルヒャーの像がある。
街の合唱団を創設した彼は、ある曲が有名だ。
ハインリッヒ・ハイネの詩に、彼が音楽を付けた曲、ローレライ。ライン川の川下りをすると、船内に必ず流れる曲でもある。

ガイドさんのお話によると、毎年、市ではフォトコンテストが開催されるそうだ。
ここからのアングルが、一番綺麗だと言う。
上下に緑を入れて、額縁風にする良いとか。

ヘルダーリンの塔

テュービンゲンに関係する有名人は多く、詩人ヘルダーリンもこの街に30年暮らしたそうだ。
このとんがり屋根の付いた黄色の建物に、精神を病んだ彼は、長い間幽閉されていたという。

橋まで戻り、街の顔ともいえるネッカー川ほとりの街並みを一望する。
尖塔は聖ゲオルグ教会。
奥の高台に見えるのが、お城だ。

橋を渡ってすぐ、かつての城壁に沿って小道がある。
ここを歩き、ネッカー川沿いに旧市街へ向かう。

城壁にはたくさんの人が座って寛いでいるが、ガイドさんによると、この城壁でプロポーズをすると幸運が訪れる、という言い伝えがあるのだとか。

テュービンゲンのボート

ネッカー川を走るボートの椅子は、とても面白い形をしていて、向き合って座るタイプ。

ヘルダーリンの塔を、街サイドから。

ブルゼ

学生寮、研究施設。
大学町テュービンゲンと名乗っている通り、この街は大学無しには語れないそう。
街の人口は9万人に対し、学生数は2万9千人。
ほぼ3分の1だ。
これは、ドイツ国内の人口対比で、一番多いらしい。

プロテスタント神学校

ここは多くの有名人を輩出した場所でもあり、ケプラーなどもここに通ったそうだ。

入り口には、メーリケの鎖骨が飾られていた。

第二次世界大戦の被害も少なく、街には多くの古い街並みが残されている。

ガイドさんが壁を指差す。
城壁は年々高く積み上げられ、その影響で付近の家々も高く増築したそうだ。
よく見ると、黄色の家の上階部は、壁が下層の建物とは違う方向を向いている。

また、密に隣り合わせて建てられているので、火事の延焼を防ぐため、家々の間に壁だけの空間を造ったそうだ。

うさぎ通り

次にガイドさんが私達を連れてきたのは、この道。

Hasengasse うさぎ通りだ。

可愛い名前だなんて思っちゃいけないよ、とガイドさんはちょっぴりニヤニヤしながら話し始める。

この道が何故、うさぎ通りなのかって?
それはね、ここは昔、うさぎのような大きさのネズミが走り回っていた路地だからだよ。

みんなが一斉に、うわぁ!と声をあげる。
大丈夫、今はネズミなんていない。
しかし、少しだけ居心地が悪いものだ。

旧市街

この通りの付近は旧市街で、古い建物がたくさん残っている。 
どんなに古くて小さくて不便でも、この辺りの家賃相場は、かなり高いらしい。
それは、大学に近い場所を重要視する学生が多い事が原因。
寝坊しても、ここに住んでいたら、走って5分で大学に到着するという訳だ。

市庁舎広場

ガイドの最終地点、市庁舎広場へ。
週末市が開かれ、とても賑わっていた。

立派な市庁舎には、全体に見事なフレスコ画が描かれ、中央上部には天文時計も飾られている。

周りはぐるりと木組の家が建ち並んで、とても美しい。

ここで市内観光ガイドは終了となったので、ここからは私が個人的に訪れた場所。

とうもろこし市場

まずは、街の北に位置するKornmarkt。
今は郷土博物館になっている。

材木市場

もう一つの大きな広場、Holzmarkt 材木市場。
ここには、街のシンボルの一つともいえる聖ギオルグ教会がある。

聖ギオルグ教会

尖塔からの眺めは素晴らしい。
こちらは、広場側の風景。

そしてこちらは、ネッカー川の風景。
多くのボートが行き交う様子が分かる。

そしてこちらが、お城方面。
お城は、他の建物よりも一段と高い場所にあるのが分かる。

聖ギオルグの噴水

市場周辺にも、見どころがたくさんある。
まずは、聖ギオルグの噴水。

ゲーテがここで?

ある建物の前で、観光客が集まって写真を撮っている。
よく読むと『ここでゲーテが吐いた』と記されている。
知り合いを訪ねてこの街に来たゲーテは、飲み過ぎて、ここで吐いてしまったのだそうだ。

アルテ・アウラ

旧テュービンゲン大学の講堂は、ドイツで二番目に古いという。

ヘルマン・ヘッセの記念館

広場に面した木組の家の一つが、この記念館。
ここは本屋さんで、ヘルマン・ヘッセが働いていたそうだ。
中は本棚のようになっており、見学自由。

テュービンゲン城

最後の見学地は、お城。
頑丈な門をくぐる。

今は大学の施設や、博物館として利用されている。

あまり期待せずに博物館に入場したのだが、そのコレクションの数に驚いた。

Ratskeller

最後は、食べ物について。
どの街にも大抵あるRatskellerは、その土地の名物をいただく事ができる。
直訳すると市役所の地下。

シューベービッシュ地方には多くの名物があるが、その中の一つがマウルタッシェン。
大きな餃子のようなものだ。
この料理ができたのには、面白い経緯がある。
これを作ったのは、ある修道士。
お肉を食べてはいけない断食時期に、どうしてもお肉が食べたくなり、こっそりパスタ生地に隠したというのだ。
上に乗っていたのは、ローストオニオン。
お肉と香ばしいオニオンがマッチし、とても美味しかった。

飲み物も、この土地ならではの物をいただいた。
この辺りには色々なサイダーがあるのだが、お店のお勧めテュービンゲンショーレを注文。
暑い日にピッタリの爽快な喉ごしだった。

色々な著名人を輩出した街は、今も学生を多く抱え、人々が集まる魅力ある街だ。
次回は是非あのボートに乗り、街をネッカー川から眺めてみたい。

ネッカー川沿いの学生街、ハイデルベルク

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