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俺ら東京さ行ぐだ

おいでませ。玻璃です。

今のようにスマホがあるわけでもない、そんな昭和で青春時代を過ごす私の夜の楽しみと言えば漫画本。

別冊マーガレットが大のお気に入りだった。
紡木たくさん、いくえみ綾さん、くらもちふさこさん、多田かおるさん…。大好きな漫画家さんのオンパレード。
連載が気になって気になって発売日には学校帰りの駅のキオスクで即購入していた。
別マも好きだったが、この頃の私がこよなく愛していた漫画家さんは吉田まゆみさん。
単行本を買って何度も何度も読んでいた。
特に好きだったのは、「B.Dフィーリング」、「ロコモーション」、「アイドルを探せ」。

風邪で休んだ日や、夜の寝るまでの時間など何度も何度も読み返す。
どの作品も都会で暮らす女の子の姿を等身大で描いていて、美化されていないクスっと笑える恋のエピソードが心地いい。
作品の中で出てくるサザンやユーミンの曲を聴きながら読むのが至福の時だった。

特に大ヒット作品の「アイドルを探せ」は私の東京への憧れの炎にドバドバと油を注いだ。

「あ~早く東京で暮らしたい。」
「テレビ関係の仕事を絶対にするぞ。」
「東京で恋をする!」

毎日のように東京で暮らす自分を想像して、時計の針をぐるぐると早回ししたい心境に埋もれていた。

そんな中、京都&東京行きの修学旅行がやって来た。
でも、東京の滞在はわずかな時間。
それでも一日グループで自由行動があり、私たちは原宿に向かった。
竹下通りを田舎者丸出しの長いスカートのセーラー服で、小声で方言を話しながら、買い食いをしたりいろんなお店を覗くたびにワクワクが止まらなかった。

「私はここで暮らす。
休みの日には、道なんか調べなくてもスイスイと電車に乗って、おしゃれな服を着ていろんな店に行き、恋をして華やかに暮らす。」

そんな夢がここにある!

東京にはさゆり姉さんも舞姉さんも住んでいたので、この上ない安心感もある。
(月子姉さんは海外暮らし)
中学生の時に、舞姉さんのところに泊まらせてもらって、できたばかりのディズニーランドに行ったっけ。

修学旅行で泊まったホテルに、舞姉さんが面会に来てくれた。

「玻璃ちゃんも卒業したら東京だね。」

この頃、バリバリとダンサーをしていた舞姉さんは、萩では見かけない派手な服装と髪型でホテルに登場し標準語で話す。
更に私の夢は膨らんだ。

私がどうしてこんなにも東京に憧れるのか。
東京に来てみて一番感じた想い…。

誰も私を知らない!!
なんて自由なんだ!!

この頃、いろんな事業に手を出しては失敗していた両親のために、実家の近所ではなんとなく住みにくさを感じていた。

すれ違う親戚や近所の人の目が怖かった。
私が勝手にそう思っていたのかもしれないが…。
そんな思いも手伝って、漫画を読んでも、ドラマを観ても私の頭の中は「東京」という文字で埋め尽くされていた。

俺ら こんな村 いやだぁ〜
俺ら こんな村 いやだぁ〜
東京へ〜出るだぁ〜

もしかして、この頃の私の1番の共感曲は、サザンでもユーミンでもねぇ、吉幾三「俺ら東京さ行ぐだ」かもしれねぇ。

ではまたお会いしましょう。

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