
キーマンは君だ
おいでませ玻璃です。
ヒロシくんとお別れしたピキンと寒い冬の日から、緩やかに時は流れ、フワリと暖かい春の空気をまとって私は高校2年生になった。
担任は持ち上がりで、わが校の理事長の孫でボンボン教師のチビしんだ。
ただ、マサエとはクラスが離れてしまった。
さて、誰と一緒に行動する?
どこのグループに属するかは、今後の高校生活を華やかに過ごすか、地味に過ごすかを大きく左右する。
クラスには一年生の時と同様、萩市から通っている生徒は少なく、高校のある地元長門市の子が多かった。
そんな中、クラスの中ではメインとなっているグループのユキエと話す機会があった。
なんと、ユキエもヒロシくんの元カノだった。
私が付き合うより前に、少しだけヒロシくんと付き合っていたらしい。
ある日の昼休みにユキエが話しかけてきた。
「玻璃ちゃんって水高のヒロシくんと付き合っとったんて?」
「そう、3ヶ月くらいやけど」
「あたしもそれくらいかな〜」
という会話から始まり、ユキエが
「ヒロシくんて、重くない?一番引いたのは窓にフィルムであたしの名前を貼っとんたんよ!」
「え?あたしも!それ写真見せられた!」
ヒロシくん、バレました、みーんなバレましたよ。
そこから、私とユキエは急接近。
クラスでも中心にいる長門グループに無事入ることができた。
ヒロシくん、ありがとう。
そこからはまた違った私の高校生活が始まった。
だが夏休みは、その長門メンバーとは会うこともなく、私は地元の萩通学メンバーと遊んでいた。
バイトと遊びに楽しい夏休みが終わって、2学期に登校してみるとクラスの長門メンバーに異変が起こっていた。
夏休みの間に長門メンバー内で、年上の男性を巡っての色恋沙汰があったようでグループは分裂していた。
なぜ分裂が起こったのか何も知らない私は、放課後のグラウンド脇でユキエから夏休みの出来事を丸ごと聞いた。
夕日が姿を消す直前のオレンジと藍色が混ざりこんだ空に
「帰りの列車がなくなるよ」とせかされるまで、じっくりとユキエの話を聞く。そしてユキエの話に納得したし共感もし、それからはユキエと一緒にいる事が増えた。
後からヨーコ、ナカさんも入って、2学期からは改めて4人でツルむ生活が始まる。
ここから卒業までこのメンバーでいつも一緒にいた。
恋のことも家庭のこともいろんな事を話せる友達に出会った。
卒業してから、ナカさんは間もなく高校時代ずっと付き合っていた先輩と結婚し、すぐに女の子を出産。
その頃にLINEがあれば、関東に出た私との繋がりも続いていたのかもしれないが、残念ながら子育ての忙しくなったナカさんとはそのまま疎遠になってしまった。
でも、ユキエとヨーコは今もグループLINEで繋がっているし、帰郷するたびに会っている。
次回の帰郷の時は二人の生前遺影の撮影を頼まれている。
ご縁とは不思議なもの。
この先も二人とはずっと繋がって行くだろう。
そのキッカケをくれたのは誰でもないヒロシくん。
こうやって、人生の中にはキーマンとなる人物が登場する。
マイナスに思える出来事も次へ繋がる鍵なんだな。
高校卒業まであと2年。
この仲良しメンバーで、どんな高校生活が待っているのだろう。
ではまたお会いしましょう。