サーモンピンクの薔薇
サーモンピンクの薔薇
情熱は控えめ
灰色の壁を背にして真っ直ぐに
アンティークの両開きの窓は開放され
眼前に快晴の空が広がる
底を縁取る燻んだ街はどこまでも続き
ビルの頭が点々と小さく飛びだしていた
大きめのダブルのベッド
真っ白なシーツを皺くちゃにして
裸の男が眠っている
その肩はほっそりとしていて
頼りなさげだが骨格は美しい
知らないはずの男の名を愛しげに呼ぶと
男は無造作にシーツを引き寄せ
再び眠ってしまった
一昔前のパソコン
剥げた木の机
側には赤いランドセル
こつこつと、このマンションの一室で
うっすらと生きている
主張しないのが私たちの取柄
エメラルドグリーンの冷たい床を
裸足でペタペタと歩く
旗めくこころは
窓枠にすくっと立つと解き放たれた
サーモンピンクの薔薇がすこし揺れた