【超短小説】年雄の全力坂
年雄はコースを決めずにジョギングを開始した。
40分程度のジョギング。
この町に住んで5年。
まだまだ知らない道は沢山ある。
通った事のない道を選びながらのジョギング。
大通りを避け、小道に入る。
右に曲がって左に曲がる。
適当に。
そんな年雄の目の前に、傾斜20度はありそうな坂道が現れた。
登りたい。
全力で。
登り切った所で、誰も褒めてくれない。
誰も見ていない。
でも・・・登る!
全力で!
登り出してすぐ、背中が痺れるような感覚。
その痺れが腰に渡り、お尻まで下る。
そして・・・肛門に。
ヤバい!
出る!
今すぐ止まりたい!でも・・・年雄のスポーツマンシップがそれを許さない。
登り切るまで全力!
譲れない!
でも出そう!
くぅ・・・!
登り切った年雄は、ガードレールに手をついて大きく息を吸った。
そして、大きくケツから吐いた。
浜本年雄40歳。
限界ギリギリってこういう事。