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【超短小説】年雄のモヤモヤの正体。

なんだか朝からモヤモヤ。 モヤモヤ。 年雄はそのモヤモヤの正体が分からない。 悪い事があった訳ではない。 いたって普通。 何も変わらない。 でも、朝から何か引っかかる。 なんだろう? なんのモヤモヤ? ふぅ。 考えたったしょうがない。 こんな時は散歩に限る。 30分、いや、1時間は歩こう。 モヤモヤを抱えて。 しばらくして、雨に降られる。 突然の雨だったもんで、びしょ濡れ。 もう夏じゃないから、寒いもんだ。 夏の終わり。 びしょ濡れ。 ・

    • 【超短小説】年雄、飽きた。

      年雄は携帯ゲームをやっている。 五年やっている。 ランクももうすぐ1000になる。 無課金だ。 毎日毎日、コツコツとやっている。 派手ではなく、地味。 そんなゲームの楽しみ方。 今日もいつものように、ゲームアプリを開く。 開いた瞬間だった。 年雄は思った。 飽きた! 五年、コツコツやってきたゲーム。 楽しむというより、手癖のような感覚。 今後も手癖のようにやるんだと思っていた。 でも違う。 飽きた! もうやらない。 多分。 浜本年雄40歳。

      • 【超短小説】年雄、誰に合わせる?

        年雄の家の近所にある公園は、9月いっぱい手持ち花火ができる。 年雄は毎年期間中に2回ほど花火を楽しむ。 もちろんルールはある。 申し込みをする。 音の出る花火はしない。 ゴミは持ち帰る。 ルールを破れば、公園での花火は中止となる。 みんなでルールを守り、楽しむ場所。 年雄は今年もいつやるかと楽しみにしていた。 平日だろうな。 人が少ない。 年雄は平日に申し込みに行った。 すると「今年はもう中止になりました」と言われた。 理由を聞くと「ルールを守らなか

        • 【超短小説】年雄と換気扇

          年雄は清掃員だ。 普段はマンションやビルの廊下、窓ガラスなどを清掃している。 でも年に2.3回ほど、換気扇の清掃が入る。 今日はその日だ。 換気扇の清掃は苦手だ。 何故かというと、人が生活している部屋に入るからだ。 廊下や窓ガラスを黙々と綺麗にするのとは違う。 普段より綺麗な制服を着て、家に入る前に新しい靴下に履き替え、道具もなるべく新しい物を使う。 そして、住人の方に笑顔で挨拶をする。 なんなら会話も。 油まみれの換気扇を、ベトベトになりながら掃除するの

        【超短小説】年雄のモヤモヤの正体。

          【超短小説】年雄と季節の終わり

          雨が降っている。 多分、季節が変わる。 年雄はそう思った。 だから散歩する事にした。 夏と秋の境目。 今日はそんな日だ。 傘をさして歩く。 ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ。 わざと水溜りの上を歩く。 今年最後の水遊び。 そんな気分。 明日から秋がやってくる。 さて、何食べよう。 浜本年雄40歳。 次の日、雨が止んだ。 死ぬほど暑かった。 まだ夏!

          【超短小説】年雄と季節の終わり

          【超短小説】年雄と一口チョコ

          年雄は一口サイズのチョコを、ぽいっと口に入れた。 噛まずに口の中でゆっくり溶かす。 この食べ方がいい。 そして思う。 "なんて可愛くなったもんだ"と。 豪快に、勢いよく。 そんな男の子に憧れていた。 でも歳重ねて、憧れた自分と本当の自分に差があると気付く。 だんだんと本当の自分を出した結果、一口チョコをゆっくり食べるのが好きだと気付いた。 そう。 年雄は可愛い。 見た目は違う。 おじさん。 でも、中身は違う。 一口チョコ並に可愛い。 漫画のキャラ

          【超短小説】年雄と一口チョコ

          【超短小説】年雄が悪口を言う時。

          年雄だって誰かの悪口を言う。 それは上司だったり、部下だったり、社会だったり。 悪口を言うって事は、聞き手がいる。 大体1人か2人。 友達。 年雄が悪口を言うと、友達は大抵「うんうん」と頷き聞いてくれる。 何かが変わるわけではない。 ただ聞いてもらう。 友達も年雄に誰かの悪口を言う。 「それはムカつくな!」 年雄は一緒になって怒る。 でも何も変わらない。 そんなもんだ。 ただの感情の揺れ。 これといって覚悟があるわけではない悪口。 聞いて欲しい人

          【超短小説】年雄が悪口を言う時。

          【超短小説】年雄とテレビショッピング

          年雄はテレビショッピングを観ている。 シャワーヘッドを紹介している。 「水道代が5千円もお得!」 「毛穴まで綺麗に!」 「13000円!」 うーむ。 欲しい。 今のシャワーヘッドに不満は無い。 だが、よりいいものを知ると欲しくなる。 テレビショッピング、恐るべし。 さて、どうする年雄。 不満の無いシャワーヘッドが、急に不便に思えてきた。 よりいいもの。 よりいい生活。 より、より、より。 うーむ。 キリがないか。 浜本年雄40歳。 満足して

          【超短小説】年雄とテレビショッピング

          【超短小説】年雄と顔。

          歳をとると、性格が顔に出ると言う。 本当だろうか? 年雄はおばあちゃんの顔を思い出した。 いつもニコニコの優しいおばあちゃんの顔。 性格が出ている。 おばあちゃんの性格? そういえば、おばあちゃんの性格知ってるのか? 年雄にとっては、優しいおばあちゃん。 だって孫だから。 ニコニコ水アメをくれたおばあちゃん。 だって孫だもん。 その一面が、年雄にとってのおばあちゃん。 一度だけ、母親におばあちゃんとおじいちゃんの馴れ初めを聞いた事がある。 詳しくは言

          【超短小説】年雄と顔。

          【超短小説】年雄、イライラ。

          年雄はイライラしていた。 理由はない。 朝起きた時から、なんだかイライラしていた。 たまにそんな日がある。 人間だもの。 テレビをつけようとして、リモコンを取ろうとしたら、リモコンがない。 あー!もう! 靴下を履こうとしたら、小指に引っかかった。 あー!もう! Tシャツが臭い。 あー!もう!もう! 髪がパサパサ。 あー!もももう! 外に出る。暑い。 がー!もう! なんだ今日は! ちっともいい事がない! イライラする! 人間だもの! 浜本年

          【超短小説】年雄、イライラ。

          【超短小説】年雄の欲望。

          年雄は仕事の休憩時間に、公園に来ていた。 広々とした公園。 平日のせいか、ほとんど人もいない。 貸切。 年雄は今、目の前にある大きな滑り台を滑りたいと思っている。 公園の滑り台。 子供がいたら滑れない。 だって大人だから。 でも今は誰もいない。 これはチャンスだ。 とても大きな滑り台。 どこにでもある訳じゃない。 ウズウズ。ウズウズ。 滑りたい! どうしても! 年雄は誰も見ていないか確認し、滑り台に登った。 上から見ると、滑り台の大きさを実感す

          【超短小説】年雄の欲望。

          【超短小説】年雄と小銭

          年雄は缶コーヒーを買う為、自動販売機の前で止まった。 130円。 "高くなったもんだ"そう思いながら財布を開ける。 100・・・10・・・20・・・120円しかない。 10円足りない。 仕方がないので、お札を出す。 10000円。 自動販売機では使えない。 あと10円。 コンビニで崩すか。 近くのコンビニを検索。 ・・・800メートル先。 遠い。 この暑い中、800メートル先は途方もない距離に感じる。 あと10円。 ワナワナしながら年雄は思った。

          【超短小説】年雄と小銭

          【超短小説】年雄と入れ忘れ。

          年雄はハンバーガーセットをテイクアウトで購入した。 家に帰り着き、食べようと袋を開けたら、ポテトが入っていなかった。 年雄は電話した。 店員「申し訳ありません。すぐお作りしますので、取りに来て下さい」 ・・・取りに行く? 年雄はポテトを取りに行った。 「申し訳ありませんでした」とポテトを渡す店員。 年雄「取りに来るのめんどくさいので、入れ忘れしないでください」 揉めたい訳ではない。 ただ一言言いたかった。 店員「お電話して頂けたら、こちらから届けました」

          【超短小説】年雄と入れ忘れ。

          【超短小説】年雄、待つ。

          定食屋で注文してから15分が経つ。 年雄は待つ。 頼んだのは揚げ物だ。 時間はかかるさ。 携帯ゲームで時間を潰す。 ニュースなんかも見ちゃう。 動画も見たいが、WiFiがない。 ふぅ、っと息を吐き、周りを見回す。 注文してから20分は経っただろうか。 まだ出てこない。 厨房を見ると、なんだか忙しそう。 「まだですか?」なんて言ったら悪い気がする。 年雄、待つ。 天井を見て待つ。 歴史を感じる天井。 長年続く定食屋って感じ。 注文してから25分。

          【超短小説】年雄、待つ。

          【超短小説】年雄、踊る。

          たまには踊ってみよう。 年雄は部屋で一人、そう思った。 携帯で動画サイトを開く。 "素人 ダンス 踊る"と検索。 最初に出てきた動画をポチ。 軽快な音楽。 小気味良いリズム。 簡単なステップ。 踊れる。 フォウ! 流れる汗。 心地よい。 年雄、レベル2へ。 先程のダンスより、ステップが複雑。 頭で考えるな!リズムを落とし込め! フォウ!フォウ! みーぎ!ひだり!うえ!うえ!しーた! フォーリン! 浜本年雄40歳。 部屋で滝汗。 この日痛

          【超短小説】年雄、踊る。

          【超短小説】年雄と中年とジャンプ

          「いつまでマンガなんか読んでんの!ろくな大人にならないよ!」 年雄が中学生の頃、母親に言われた言葉だ。 それを言われた時、年雄は「大人になったらやめるよ!」と返した。 「それじゃ遅いんだよ!」 と母親に返された。 年雄は今だに少年ジャンプを読んでいる。 ろくな大人かどうかは分からないが、働いている。 人にも優しく接しようと心がけている。 普通でいようとしている。 勉強は苦手だが、笑ってはいる。 なんとかかんとか大人だ。 母親はろくな大人じゃないと思ってい

          【超短小説】年雄と中年とジャンプ