【超短小説】年雄がぐるん
突然だった。
年雄がソファーにゴロンと寝転がった時、目が
ぐるんぐるん回った。
初めての経験。
それは立てないほど回った。
年雄は恐怖を覚えた。
このまま立てなかったらどうしよう。
ぐるんぐるんは、少ししたら治った。
ちょっと安心して、体を起こすとまたぐるんぐるん。
年雄は恐怖の中病院に行った。
病院で診てもらった結果、良性発作性頭位めまい症と診断された。
聞き慣れない病名だが、先生が言うには「大丈夫」だそうだ。
「大丈夫」と言われると寝て起きる度におきる、ぐるんぐるんが楽しくなってきた。
寝てぐるんぐるん。
起きてぐるんぐるん。
慣れてきた。
それを繰り返していると、年雄はこれは人生のようだ、と思いはじめた。
初めはぐるんぐるんが恐怖だったが、今はぐるんぐるんが楽しい。
今自分に起こる事を、楽しむか怖がるかは自分次第。
これが人生だ。
浜本年雄40歳。
なんて言ってみたが、早く治るといいなと思う。
心から。