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パワーが必要な「カルミナ・ブラーナ」を小さな編成で演奏したCDを聴いた(クラシックの編曲作品を聴く楽しみ)

オルフ(ヴィルヘルム・キルマイヤー編曲)/カルミナ・ブラーナ(2台のピアノと打楽器版)

今日一日、なんか憂鬱。。。
何とか気分を「スカッ」とさせたいんだけど。。。

そんな時のわたしが、引っ張り出して聴くCDのひとつが、ドイツの作曲家カール・オルフが作曲した「カルミナ・ブラーナ」である。

わたしが、この曲を知ったきっかけは、1988年に小澤征爾がベルリン・フィルでこの曲を指揮。その合唱を担当したのがアマチュア合唱団の「晋友会合唱団」であったということが大きな話題になったことだと思う。


この「カルミナ・ブラーナ」。出だしの部分はCMやドラマなどでよく使われるようなパワフルでキャッチーな音楽。だから聴いたことがある方も多いはずだ。

わたしが今でも忘れることができない、1990年頃に流れていたすごいCMがこれ!


「タイソン・パワー!」に耐えられる音楽としてチョイスされたのが「カルミナ・ブラーナ」なのだ。

パワフルで憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれる「カルミナ・ブラーナ」。

でも、最初のパワフルでキャッチーな部分を過ぎると、音楽は徐々に迷走しだしてヘンテコなリズムや旋律が続くようになる。

そうなると、最後まで聴き続けることができず、離脱してしまう方も多いかもしれない。

そして、この曲の歌詞はラテン語なのだが、その内容もヘンテコで、実は、大声で歌うにはふさわしくないような内容も含まれる。

男と女が誘い合ったり、賭け事や、酒場での大騒ぎなど。。。
黒焦げになって皿の上で歌う白鳥、なんてものも出てくる。

わたしもかつて合唱団で歌ったことがあるが、そんなこと、あまり気にして歌った覚えはない。

日本語訳で歌え、と言われたら、なんか気恥ずかしい思いもしただろうけど。

昔から人間というものは、今と変わらず、そんなところはパワフルだったわけだ。

この歌詞の元になったものは、ドイツの修道院で保管されていた写本に書かれていたもので、聖なる場所でこのようなものが長く守られてきたというのも興味深いことだ。


前置きがすごく長くなってしまったが。

今回紹介するのは、通常のオーケストラ演奏ではなく、2台のピアノと打楽器、そして合唱と声楽ソリストで演奏されるバージョンである。

これは作曲者カール・オルフが、オーケストラが無い学校や音楽団体が演奏できるように、オルフが作曲を教えていたヴィルヘルム・キルマイヤーという人物に編曲を依頼したものである。

もっと、幅広く、このパワフルで、ヘンテコで、人間臭い音楽を演奏してもらいたい、という作曲者の企みがあったわけである。

確かにオーケストラは呼べないけど、ピアノ2台と打楽器だけ呼ぶなら、なんとかなりそうだ。

聴いてみての印象だが
あのパワフルでキャッチーな冒頭部分、拳は相手を捉えることができず「空振り!」みたいな印象。

「タイソン・パワー!」に完全にノックアウトされてしまうような弱さだ。

そりゃあ仕方がないのだが。

「うーん、物足らない」と思ったが、ふと気が付いたことは
「合唱が凄くクリア」に聴こえることである。

合唱団で歌った経験によると、オーケストラに負けないように、とにかく出だしからパワーが必要な曲で「いい声で歌いましょう」なんてこと、すっかり忘れてしまう。

最初のラウンドでもう、バテバテになってしまうのだ。

でも、2台のピアノと打楽器だけならそんなに頑張らなくてもいい。

パワフルの代わりに「美しさ」で勝負、できるのだ。

そして、さらに聴き進んでいくと、打楽器の明瞭さも際立つ。

打楽器はオーケストラ版と同じなので、ドンチャカドンチャカと鳴らされるのだが、これがじっくり聴けてなかなか楽しい。

そして、オーケストラ版でも登場して結構活躍するピアノは、当然ながら伴奏のメイン楽器なので、意外に違和感がなく聴くことができるのは「なるほど」とうなずける。

ドンチャカと演奏され、パワフルなカルミナ・ブラーナもいいけど、合唱をメインで聴きたいのなら、こちらがおすすめです。


やっぱりパワフルなオーケストラ版を楽しみたい方はこちら


オルフ(ヴィルヘルム・キルマイヤー編曲)/カルミナ・ブラーナ(2台のピアノと打楽器版)
指揮:ルペルト・フーバー
合唱:シュトゥットガルトSWRヴォーカルアンサンブル、シュトゥットガルト州立歌劇場児童合唱団
S)レンネケ・ルイテル、T)クリストフ・ゲンツ、Br)シュテファン・ゲンツ
P)グラウシューマッハー・ピアノ・デュオ


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