メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話。前田シェリーかりんこ作。
はじめに
あなたは鼻にフォークを刺されること想像出来ますか?
Instagramで連載がWEBによる連載が始まって以来、私はパスタを食べる時などフォークを手に取る時に、これが鼻に刺さるか?と身震いしてしまう。
そして作者が無事に生き延びて、登場人物たちの人生が大きく動いていく展開についていくのに必死だった。
SNSで拡散されて鼻にフォークが刺さった1枚絵はシュールを越えてくる。
内容について
以下、若干のネタバレを含みます。まだ読んでない人やこれから読むよと言う人は一旦ブラウザバック推奨です。
メンヘラ製造機という言葉は知っていた。
NHKのねほりんぱほりんで特集されていた。
そして作者である前田シェリーかりんこさんは強メンタルで身体能力も高いまるで兵士のような女性だ。とにかく強い。
そしてお子さんの年齢と当時の流行りの服装からして私と同年代か少し年下の女性だと思う。
事件の概要(おおまかなあらすじ)
かりんこさんは、理不尽な喧嘩を発端に突き飛ばされてテレビ台で強打し、後頭部からどくどくと血が流れるほどの傷を受けても、クズ谷彼ピッピ(以下、クズ)にタックルをかまして、ち〇こに蹴りを入れて脱兎の如くクズ部屋から逃げて、隣のカップルに助けを求められる行動力がある。
しかし、警察官が到着した時に少し目を離した隙にクズが隣の家に侵入し、主人公に詰め寄り、カップルの方は女性にも怪我(過剰防衛と言われるが納得いかない)を負った。
苦しい治療や記憶障害のシーンは辛かった。
綺麗な顔が痛々しく膨れ上がり、鼻は少し曲がってしまい触っただけで出血する。もう鼻くそ一つ満足にほじれない。そう発言されていた。
誰もが知るような大グループに所属するクズの親族が病室に弁護士を引きつれて示談交渉にやってくる時もそうだ。
席を外した際にとんでもない侮辱的なことを言う。読んでいて同じ女性として震えるほど腹が立った。
そして、作者は示談金を一切受け取らない代わりに、名前や場所を分からない形でエッセイや漫画にして世間に公表すると契約を結んだ。大金で頬をはたかれても姿勢を歪めない決断だ。
この作品が書籍化する未来が見えていたのだろうか。
私だったら揺らいでいる、もしくは可能な範囲で毟り取れるように契約を有利に持っていこうとすると思う。道端に落ちている1円だって広いたくなる。
発端は何だったんだろうと疑問に思う
そもそもクズと付き合うきっかけは何だったんだろう。
最近の日常のエピソードに出てくる旦那様は穏やかでクズ要素が全くない。
あの事件を若気の至りなんて言葉で済ませて欲しくない。
パート2が読みたい。
クズとの出会いであるエピソード0や過去の負傷歴をかりんこさんの漫画で見たい。
法律的に傷害罪の訴えられる期限は10年間
ちなみに法的には傷害罪で訴えられる期限は、10年である。この意味が理解出来るだろうか。殺人未遂でもあるとまた話はかわってくる。
このコミックエッセイはきっと広がる。
コミックエッセイが大ヒットするのには難しいと言われる世界であったとしてもこれは映像化されてもおかしくないと思う。
鼻にフォークを突っ込むシーンや脳震盪のシーンはどう再現するのかが気になる。
そして同時に私はこうも思うのだ。
この出来事は10年以内の出来事で、それも数年前のことだ。
当時関わった警察官を含め、医療関係者など当時の守秘義務を負っている人たちはピンとくるはずだ。InstagramやTwitterで話題に上がっている。
この事件に関わっている世代の人は目に触れる機会が多いのではないだろうか。…そしてその周囲の人には守秘義務などない。
これからのこと(特定&晒しという恐怖を与えられるのでは?)
そして、ネット社会には、特定という行為が得意な人がいる。それだけだ。
この漫画の加害者である「クズ谷彼ピッピ」はいつか本名を特定されて晒されるのではないか。示談契約として、かりんこさんが本名や場所を特定されないようにすると言っていても人の口に戸は立てられないと本作でも言っていた。そこが妙に気になっている。
この作品の裏表紙には「この体験を漫画にする。それが私の復讐です。」と書かれてある。そのあとには「些細なことで始まった彼氏との喧嘩が、周りをも巻き込む大事件へと発展するーーー。次々と襲う問題や困難、でもやられっぱなしじゃ終われない。
そうハッキリと書いてあるのだ。
もしかしたら、第3者からの制裁を受けるのかもしれないと思うのだ。
ネットタトゥーとして魚拓として張りつけにされてもおかしくない。
作者の意図としては、不本意かもしれないが、それくらいのことをクズはやっている。
本当の怖さはこれからだとクズ谷彼ピッピは知って欲しい。
過去に起こした過ちを書籍という形に残るもので世間に公表した前田シェリーかりんこさんには改めて敬意を表したい。
前田シェリーかりんこさんへ
事件から数年、幸せな家庭を築き、可愛い娘さんもいるかりんこさんの生活が幸せなものであることを願っている。
どうか穏やかな日常を送って欲しいと同時に、あの時お隣さんが証拠として録画・録音した音源データはきっと武器になると思う。警察で取った調書だって残ってあるはずだ。
世間という大きな意見で背中を押されたとしたら、本気で闘う覚悟があると私は信じてる。家族を守りながらも自身の尊厳を傷つけた相手を許さないはずだ。
加害者がしかるべき社会的制裁を受けて、被害者は救済されました。そんな勧善懲悪な展開ではないからこそ、この作品は多くの人の目に触れてもらって、いろんな視点から意見や議論をされるべき一冊だと思う。
クズはあの事件のあとも、権力に守られて普通に生活しのうのうと生きていた、かりんこさんが死ぬ思いでリハビリを受けている時も、事件の時のことを思い出して、何度も嘔吐していた時も、ジグソーパズルの存在そのものも忘れてしまう一時的な意識喪失に陥ったときですら、普通に飯食ってクソして寝ていたと思うとありえない程腹立たしい。ブタバコ行って番号で呼ばれて数年間、服役したっておかしくない出来事なのに。執行猶予なんてつかねぇよ。裁判員制度なめんなよ。
静かな水たまりに小さな石を投げ入れた時に起きる波紋のようにじわじわとネット世代以外にも波及してほしい。
近年稀にみる素晴らしい作品だと思う。ありがとうございました。