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読書メーター 2024年9月 

9月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1738
ナイス数:8

情報哲学入門 (講談社選書メチエ 793)感想
情報に関する著者の考察というよりは、著者が情報に関係していると考えているものを考察している哲学者たちの思想の紹介集。たたき台や整理として扱ってほしいとのことだが、Ⅰ部がしっかりしている割にⅡ部は迂遠的でⅲ部に至っては「かもしれない」という表現が多く、執筆準備段階の想定より構想が大きすぎて手に負えなかったのかなあという構成と完成度。「情報哲学」の整理としてはやや物足りないが、示唆に富む箇所は多く、おおまかには流れも分かる。メディア論というよりは、未来への展望を意識した内容なのも良かった。
読了日:09月03日 著者:北野 圭介


時間の比較社会学 (岩波現代文庫 学術 108)感想
現在に意味を見いだせず未来への準備と認識し、虚無と帰無を生み出す価値観は近代精神に特有のものだという。原始社会の反復的な世界観から自然と自分を宇宙から疎外することで成り立つ現代世界はニヒリズムの源泉となっている。そこから解放されるには理知をもって自身の問題意識の構造を把握し、各々のやり方で共時性の確保、もとい他物への共感をもつことだという。 p168にあるように(円環と直線だけではなく)反復や線分の世界観という仕分けを知れて、よりものの見方を増やせた気がする。
読了日:09月08日 著者:真木 悠介


文庫 ソーシャル物理学: 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学 (草思社文庫 ぺ 3-1)感想
イデアは一人の傑物が生み出していくのではなく、チーム内、あるいはチーム同士の交流によって生まれる。個々人の特質よりもアイデアの流れ方の方が、あるチームが成功するかどうかの要因として大きいという。また人は本来競争的ではなく協力的な生き物であり、対面での交流の影響度(3章)や、親密な人の役に立ちたいという気持ち(7章)の存在を指摘している。p289「社会における主な競争は個人間に生まれるのではなく、グループ間に生まれ、グループ内では仲間たちと協力しあっている。」 著者は経済学が置く前提を嫌っている。
読了日:09月15日 著者:アレックス・ペントランド


じゅうぶん豊かで、貧しい社会 ――理念なき資本主義の末路 (ちくま学芸文庫)感想
足るを知る、がメッセージ。目的のない経済成長の弊害を指摘し、良い暮らしを目標とすることをすすめる。随所で(主に経済学の)中立的な言葉への言い換えに対して批判的な通り、一元的な指標で幸福や善を語ることを否定。6章では、良い暮らしを考えていく上での土台として七つのキーワードを提案している。最後の7章を中心に、際限のない競争と無理やりな需要の創出(欲望の掻き立て)を戒めている。 全体とテイストとしては、あとがきにもある通り歴史学的。 
読了日:09月23日 著者:ロバート・スキデルスキー,エドワード・スキデルスキー


エスノグラフィ入門 (ちくま新書 1817)感想
p98「その客観化の営みがいかなるやり方で可能になっているのか自体を反省的に検討する」。客観化の客観化という表現が印象に残った。 統計分析や潜入ルポではなく、調査地に出向いて、その地のコミュニティにおいて役割を得るというところまで入り込み、10年越しで調査するのだという。主観的な眺望を以て、独特の秩序や時間を軸にした生活模様といった、不可量なモノを描く。 主旨に反している気もするが、勇気を貰える読書だった。
読了日:09月29日 著者:石岡 丈昇

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