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フィードバック・リテラシーを形成する学生の特性:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、フィードバック・リテラシーを形成する学生の特性に関する論文です。

フィードバックリ・テラシーに関する詳細は下記にて!
今回は、スキルだけでなくプロセスも踏まえたリテラシーです。

今日の論文

Developing a learning-centred framework for feedback literacy
学習中心のフィードバックリテラシー枠組みの開発
Assessment & Evaluation in Higher Education, 2020
Elizabeth Molloy, David Boud, Michael Henderson

サマリ

  • 本研究では、学生がフィードバックを受動的に受け取るだけでなく、積極的に関与することを前提としたフィードバックリテラシーの特性を明らかにしている

  • 2つの大学で行われた大規模な調査とインタビューを通じて、フィードバックの目的理解、情報収集、感情管理、情報の処理と活用など、7つの主要なグループに分けられた31の特性が導き出された

  • この枠組みは、学生の能力開発やコース設計の改善に役立てることを目的としている

方法

  • 本研究は、オーストラリアの2つの大学における4514名の学生を対象にした大規模な調査と、28名の学生を対象にしたフォーカスグループ、20名のケーススタディインタビューを通じてデータを収集した

  • テーマ分析を用いて、学生が有益と感じるフィードバックの特性を特定

わかったこと:

フィードバックリテラシーを形成する学生の特性を7つの主要なグループに分類し、合計31の特性が明らかにされた。

1. フィードバックを改善の手段と捉える (Commits to feedback as improvement):

  • 特性:

    1. フィードバックを継続的な改善のために活用する姿勢を持つ

    2. 習熟や専門知識は固定的なものではなく、文脈や時間とともに変化するものだと理解する

  • 具体例:
    フィードバックを受けて不足を補い、技能を向上させることに積極的であるとの証言が挙げられている

2. フィードバックを能動的なプロセスとして捉える (Appreciates feedback as an active process):

  • 特性:
    3. フィードバックプロセスの役割を理解し、学びや判断力を磨く手段とする
    4. 自分の学習ニーズを特定し、他者に伝える能力を持つ
    5. 自分の学習ニーズを予測し、それを適切な人物に伝える
    6. 自分や他者の仕事を評価するために基準や標準の役割を理解する
    7. 他者から得た情報を活用し、フィードバックループを完結させる必要性を理解する
    8. フィードバックは評価判断力を構築し、長期的に学びを促進するものであると認識する

  • 具体例:
    事前にフィードバックを求め、課題提出前に内容を改善する「早期フィードバックループ」を導入している事例が報告されている

3. 学習改善のための情報を収集する (Elicits information to improve learning):

  • 特性:
    9. フィードバックは積極的に求めるべきものであると認識する
    10. 学習を助けるための適切な情報を他者から引き出すさまざまな戦略を用いる
    11. 教師、同僚、専門家など、複数の情報源からフィードバックを求める
    12. 利害関係者が異なる視点や投資レベルを持っていることを認識する
    13. 基準や基準となる良い仕事の性質について対話を行う
    14. 模範例を活用し、仕事の標準を理解する
    15. 環境やタスクそのものから情報を得る

  • 具体例:
    教師だけでなく、同僚や図書館員などからフィードバックを収集する事例が報告されている

4. フィードバック情報を処理する (Processes feedback information):

  • 特性:
    16. 基準や標準を認識し、それを活用して仕事の質を評価する
    17. 教育特有の言語を解釈し、タスクや成果に関連する重要な手がかりを得る
    18. 他者の意見を選択的に受け入れ、自分の評価に活かす
    19. 他者から得た行動可能な情報を抽出し、必要に応じて詳細や明確さを求める

  • 具体例:
    模範的な回答やサンプルを使って、自分の作業を改善する取り組みが述べられている

5. 感情を認識し、対応する (Acknowledges and works with emotions):

  • 特性:
    20. 他者に助言を求める際に適切な感情を持ち、対話を継続する
    21. 他者のコメントを防御的にならずに受け入れる
    22. 信頼を築き、誠実で有意義な情報交換を促進する
    23. フィードバック情報が異なる形態で感情に与える影響を認識する
    24. 受け入れがたい情報を扱う際の感情的な課題を管理する
    25. 高いステークスの評価が学習者の自己開示や情報の受容に与える影響を考慮する

  • 具体例:
    教師が親切で配慮のある対応を取ると、学生がフィードバックを受け入れやすいというコメントが見られる

6. フィードバックを双方向のプロセスとして認識する (Acknowledges feedback as a reciprocal process):

  • 特性:
    26. 情報の使用者としてだけでなく提供者としての役割を認識する
    27. 他者の仕事に関する有益な情報を作成する
    28. 他者が情報を受け取る際に異なる反応を示す可能性を考慮する

  • 具体例:
    ピアレビュー活動で、基準を用いて他者の仕事を評価し、積極的な学びを得たとの報告がある

7. フィードバック情報を活用する (Enacts outcomes of processing of feedback information):

  • 特性:
    29. フィードバックを受けて目標を設定し、将来の仕事に活かす計画を立てる
    30. 情報を適切な形式で記録し、それを将来的に活用する
    31. 自身の進捗を監視し、フィードバックの必要性を特定し、新たな学習目標の設定に影響を与える

  • 具体例:
    フィードバックを確認して次の課題に役立てるために、オーディオフィードバックを活用する事例が挙げられている

論文から得た学びと活用場面

学生がフィードバックプロセスにおいて能動的に関与することは、学びの質を向上させる可能性があるとされています。学生と社会人では、立場も大きく異なりますが、プロセスに能動的に関与するという点では応用ができそうな気がします。

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