目標志向、組織学習文化、発展的フィードバックの効果:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、目標志向、組織学習文化、発展的フィードバックがキャリア満足度、組織コミットメント、離職意図に及ぼす影響について研究した論文をご紹介します。
優秀な人材を獲得するため多くの企業が「選ばれる企業」になることを目指しており、従業員のコミットメントやエンゲージメントに注目が集まっています。これらにアプローチする研究のひとつとしてご覧いただけると嬉しいです。
今日の論文
Career satisfaction, organizational commitment, and turnover intention: The effects of goal orientation, organizational learning culture, and developmental feedback
キャリア満足度、組織コミットメント、離職意図:目標志向、組織学習文化、発展的フィードバックの効果
Leadership & Organization Development Journal, 2010
Baek-Kyoo (Brian) Joo, Sunyoung Park
サマリ
本研究の目的は、個人的特性(目標志向)と文脈的特性(組織学習文化と発展的フィードバック)が、従業員のキャリア満足度、組織コミットメント、離職意図に与える影響を調査すること
結果、キャリア満足度は組織学習文化とパフォーマンス目標志向によって予測され、組織学習文化、発展的フィードバック、学習目標志向は組織コミットメントの有意な予測因子であることが示された
また、組織学習文化、キャリア満足度、組織コミットメントが離職意図の予測因子となった
研究の方法:
韓国のフォーチュングローバル500企業4社から参加者を募り、個人の認識を把握するために自己管理型オンライン調査
500人の従業員のうち、241人から回答を得た(回答率48%)
調査項目は、性別、年齢、教育水準、職位、職種、リーダーと部下の関係の長さなどの変数を含んでいる
記述統計と階層的重回帰分析を用いて、結果変数の分散を説明
各概念の定義と根拠となる論文:
わかったこと:
目標志向、組織学習文化、発展的フィードバックがキャリア満足度、組織コミットメント、離職意図に及ぼす影響
キャリア満足度は、組織学習文化とパフォーマンス目標志向によって予測されることが明らかになった。また、組織学習文化、発展的フィードバック、学習目標志向は組織コミットメントの有意な予測因子であり、組織学習文化、キャリア満足度、組織コミットメントが離職意図の予測因子であることが示された。
RQに対する主な結果:
パフォーマンス目標志向はキャリア満足度に正の影響を与える。コンテクスト要因よりも個人的要因の影響が強かった
学習目標志向は組織コミットメントに正の影響を与える。コンテクスト要因が個人的要因よりも大きな影響を持っていた
組織学習文化はキャリア満足度に正の影響を与える。コンテクスト要因が重要な予測因子となった
組織学習文化は組織コミットメントに正の影響を与える。学習文化が高いほど、従業員は組織に心理的に結びつきやすい
発展的フィードバックとキャリア満足度には有意な関係が見られなかった
発展的フィードバックは組織コミットメントに正の影響を与える。高い発展的フィードバックは、従業員の組織コミットメントを高める
キャリア満足度が高いほど、離職意図は低くなる
組織コミットメントが高いほど、離職意図は低くなる
論文から得た学びと活用場面
この論文は、個人的要因(目標志向)と文脈的要因(組織学習文化と発展的フィードバック)がキャリア満足度と組織コミットメントに寄与し、それが離職意図に影響を与えることを示しています。特に、組織学習文化がキャリア満足度に、発展的フィードバックが組織コミットメントの両方に対して有意な影響を与えることが確認されました。
よくエンゲージメントサーベイとして組織コミットメントとエンゲージメントの測定が行われることがありますが、一度組織学習文化や発展的フィードバックの項目も併せて調査してみると、「選ばれる企業」に向けたステップが見えてくるかもしれません。