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360度フィードバックが管理スキルの開発に与える影響:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、360度フィードバックが管理スキルの開発に与える影響に関する論文です。

360度フィードバックとは:
管理者や従業員のスキルやパフォーマンスに関する評価を、複数の視点(例: 上司、同僚、部下、自分自身)から収集し、フィードバックを提供する手法。従来の単一評価(例: 上司のみ)に比べて、多面的で包括的な評価を実現する。

参考論文:

  • Van Velsor & Leslie (1991)
    360度フィードバックツールの比較と有効性の検証

  • Borman (1991)
    フィードバックと行動評価の成果への影響を分析

  • Hellervik et al. (1992)
    360度フィードバックを活用した行動変容モデルの提案

  • Tannenbaum & Yukl (1992)
    フィードバックを含むトレーニング手法の効果を総括

今日の論文

The Impact of 360-Degree Feedback on Management Skills Development
360度フィードバックが管理スキルの開発に与える影響
Human Resource Management, 1993年夏/秋号
Joy Fisher Hazucha, Sarah A. Hezlett, Robert J. Schneider

サマリ

  • 管理者が360度フィードバックを受けた後のスキルレベルの変化を2年間にわたり調査

  • 主な目的は、スキル開発、開発努力、および開発に対する環境的支援の関係を明らかにすることだった

  • 198人の管理者のうち48人が2年後に再度スキル評価を受け、開発活動や上司や組織からの支援の程度を調査

  • その結果、フィードバック後にスキルが向上し、自己評価と他者評価の一致度も高まることが確認された

方法

  • 参加者は大手電力会社の198人の管理者で、2年間にわたり「Management Skills Profile(MSP)」を使用して評価を実施

  • 評価には19のスキル次元が含まれ、上司、同僚、部下、自身による多面的な視点からのスコアが用いられた

  • 調査では、開発活動や組織の支援についてもアンケート形式で情報収集が行われた

管理スキルプロフィール(MSP)のスキル次元:

  • 管理: 計画、組織化、時間管理スキル

  • コミュニケーション: 聴取、口頭/書面でのコミュニケーション能力

  • 認知スキル: 問題分析、意思決定、数値的スキル

  • 対人関係: 人間関係構築、紛争管理

  • リーダーシップ: 目標設定、影響力、他者の動機付け

  • その他: 適応力、技術的知識、結果志向

マネジメント開発質問票(MDQ)の構造:

  • セクション1: 背景情報

    • 昇進状況: 最初の評価後、昇進、降格、または横移動があったか

    • 給与情報: 過去の給与とその変化率

    • 評価者の種類: 上司、同僚、部下など

  • セクション2: 努力と変化に関する評価

    • 努力:

      • 「過去2年間で特定のスキル開発にどれだけ努力したか」を評価

      • 自己評価と他者評価の両方で記録

    • 変化:

      • 「過去2年間で特定のスキルがどれだけ変化したか」を評価

      • 自己評価と他者評価の両方で記録

  • セクション3: マネジメント開発の環境

    • 管理開発活動:

      • フィードバック結果を受けて、どのような開発行動を取ったか

      • 例: 開発計画作成、トレーニング参加、フィードバック実施など

    • 上司からの支援:

      • 上司が開発をサポートするためにどの程度具体的な行動を取ったか

      • 例: フィードバック提供、計画への意見、進捗レビューなど

    • 組織からの支援:

      • 組織が管理者のスキル開発をどの程度サポートしているかを評価

      • 例: トレーニングプログラムの提供、開発計画の策定支援など

わかったこと:

360度フィードバックの効果

  • 参加者の管理スキルは2年間で自己評価・他者評価の両方で向上した

  • 自己評価と他者評価の一致度が高まる(自己認識の向上)

  • 360度フィードバックはキャリアの昇進や給与増加と関連している

スキル開発に影響する要因

  • 開発活動

    • フォローアップ(例: 計画進捗の定期的なレビュー)がスキル向上に最も効果的

    • トレーニング参加やフィードバックレビューも効果的だが、頻度が低い

  • 環境支援

    • 上司からの支援(例: フィードバック、コーチング)は自己評価の努力やスキル変化に関連

    • 組織全体の支援は、スキル開発に対する意識を高めるが、他者評価された変化とは一致しない場合がある

課題と改善点

  • 開発活動が他者から認識されにくい

  • 組織の評価基準には、自己開発や部下育成の重要性を反映する仕組みが不足

  • 長期的なフォローアップや報酬制度が、より持続的なスキル開発に寄与する可能性がある

個人差

  • スキルの初期評価が低いほど、開発努力が高くなる傾向がある

  • 性別や年齢による差異: 若年層や女性が昇進や給与増加で有利な結果を得る場合があるが、努力と成果の関係に差異はない

管理スキルプロフィール(MSP)に関連する知見

  • フィードバックは個別化されており、スキル開発の信頼性と妥当性が高い

  • MSPの「進捗レビュー」や「コーチングとフィードバック」は、最もスキル向上に貢献する

  • スキル向上は、個別行動計画と環境支援の両方によって最大化される

論文から得た学びと活用場面

360度フィードバックは、管理者のスキル開発ツールとして有用であることがわかりました。また、組織は、開発計画の継続的なレビューやフォローアップ活動を促進するべきであると主張されています。
360度フィードバックの活用についても参考になりましたが、管理スキルプロフィール(MSP)なども汎用性が高そうだと感じました。

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