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360度フィードバック活用に関する15の質問:論文レビュー

こんにちは、原田です。
今回は、360度フィードバック活用に関する15の質問に関する論文です。

360度フィードバックは、多くの目的(例:エグゼクティブコーチング、パフォーマンス評価、タレントマネジメント)で広く利用されている。しかし、方法論や心理測定的性質に関する統一されたガイドラインはほとんど存在せず、これが実施の効果と課題を複雑化させている。


今日の論文

Evidence-Based Answers to 15 Questions About Leveraging 360-Degree Feedback
360度フィードバック活用に関する15の質問へのエビデンスベースの回答
Consulting Psychology Journal: Practice and Research, 2012年
Kenneth M. Nowack, Sandra Mashihi

サマリ

  • 360度フィードバックの効果と実践について、目的・手法・導入プロセスなどの重要な15の質問に焦点を当て、エビデンスに基づく回答を提供する

  • フィードバックの目的と適切な状況、評価スケールの選択、トレーナーの認定要件、文化的違いの影響など、多岐にわたる問題が考察されている

方法

  • 文献レビューとメタ分析を通じて、360度フィードバックの設計と導入に関する「ベストプラクティス」を分析

  • データスケールの選択やフィードバックの解釈のガイドラインも提案されている

15の質問 (15 Key Questions):

  • 360度フィードバックは有害になることがあるか?

    • 実施が不適切な場合、従業員のエンゲージメントやパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性がある

  • どの条件下で誰にとって360度フィードバックが有益になるのか?

    • 適切な条件やベストプラクティスのもとで効果を発揮する

  • どのようなタイプの評価者を何人含めるべきか?

    • 評価者のタイプと数は、目的や状況に応じて異なるが、信頼性を確保するために多様なグループを含めることが推奨される

  • 評価者グループ間の評価は一致するのか?

    • 一部の不一致は期待されるが、意味のあるフィードバックを提供する要素として重要視される

  • 評価者グループ内の評価は一致するのか?

    • グループ内の一致度は解釈に影響を与え、信頼性を確保するための重要な指標となる

  • どの応答尺度が最適か?

    • 絶対評価よりも相対評価尺度や具体例を含むフレーム・オブ・リファレンス尺度が効果的である場合がある

  • 360度フィードバック尺度には何段階が適しているか?

    • 4~7段階が最適であり、信頼性が高く実用的とされる

  • レポートにグラフ、表、自由回答を混在させるべきか?

    • 数値的な結果と定性的なコメントを組み合わせると理解が深まり、受け入れやすくなる可能性が高い

  • 自由回答質問はクライアントに感情的なダメージを与えるか?

    • ネガティブなコメントが多すぎると、受容と行動改善が妨げられる可能性がある

  • 性格は360度フィードバックへの反応に影響を与えるか?

    • 自己効力感や学習目標志向性などの性格特性が反応と行動変化に大きく影響する

  • 過小評価者と過大評価者のフィードバックをどのように管理するか?

    • 過小評価者には強みを認識させ、過大評価者には現実的な見方を促すことが必要

  • コーチに必要なトレーニングや認定は何か?

    • 評価の解釈と活用に関する専門的な知識とスキルが求められる

  • 文化的な違いをどのように考慮すべきか?

    • 権力距離や集団主義などの文化的要因が評価結果と解釈に影響を与える

  • 360度フィードバックレポートのデブリーフィングは必要か?

    • デブリーフィングは学びの移転と目標設定を促進し、行動変化を支援する上で重要

  • 360度フィードバックの効果を最大化する方法は?

    • クライアントの感情的な反応を管理し、フィードバックを行動目標と実践に結びつける

わかったこと:

  • 360度フィードバックの効果:

    • 行動変化を促進するが、その効果は導入の質や実施状況に強く依存する

    • フィードバックの内容や手法が不適切だと、従業員のエンゲージメントやパフォーマンスが低下する可能性がある

  • ポジティブとネガティブフィードバックのバランス:

    • ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックの適切な比率(例: 3:1)が、効果的な行動変化に寄与する

    • ネガティブフィードバックが過剰だと、感情的なストレスや受容への抵抗が生じる

  • フィードバックの影響:

    • 受け手の性格(例: 自己効力感、目標志向性)や、フィードバックを受け入れる準備が行動変化の効果を左右する

    • 自分の評価が他者からの評価と一致しない場合、行動改善のモチベーションに影響を与える

  • 文化的背景の影響:

    • 文化的要因(例: 権力距離、個人主義対集団主義)が、フィードバックの解釈と反応に影響を及ぼす

    • 高い権力距離を持つ文化では、他者評価と自己評価の不一致が顕著になる傾向がある

  • 目標設定の重要性:

    • フィードバックを受けた後、具体的かつ測定可能な目標を設定することが行動変化を促進する

    • コーチングやサポートが、フィードバックの効果を最大化する重要な要因である

論文から得た学びと活用場面

360度フィードバックの適用には、受け手の性格や文化的背景を考慮する必要があることが示唆されていました。フィードバックの心理的影響を理解することで、より施策の成功に近づきそうです。

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