医療現場での教育における自己評価と他者からのフィードバックの関係:論文レビュー
こんにちは、原田です。
今回は、医療現場での教育における自己評価と他者からのフィードバックの関係に関する論文です。
今日の論文
I'll Never Play Professional Football and Other Fallacies of Self-Assessment
「私はプロのフットボール選手にはなれない」および自己評価のその他の誤謬
Journal of Continuing Education in the Health Professions, 2008
Kevin W. Eva, Glenn Regehr
サマリ
health professional educationにおける自己評価の定義とその機能について議論し、自己評価、自己指導的評価の追求、自己モニタリングといった関連概念を区別することで、それぞれの役割と教育的意義を明らかにする
また、「彼らでなく我々」という認識に基づく現象を指摘し、自己評価の信頼性に対する過信がどのように形成されるかを論じる
方法
自己評価に関連する文献の分析を通じて、自己評価(能力としての評価)と自己指導的評価の追求(教育的戦略としての評価)および自己モニタリング(環境に対する即時的な反応)を区別し、各概念の違いと教育的意義を考察
わかったこと:
自己評価の精度や役割についての提言
自己評価の正確性に対する限界
多くの研究結果により、自己評価が一貫して正確であるとする証拠は乏しく、実際には誤りが多いことが示されている。具体的には、人は自己の能力を過大評価する傾向があり、自らのパフォーマンスやスキルの正確な評価を行うことが非常に困難であるとされる自己評価と関連概念の区別
自己評価と以下の3つの異なる概念が区別されている自己指導的評価の追求(Self-Directed Assessment Seeking):自己の不足を特定し改善するために他者からのフィードバックを求める行為である
自己モニタリング(Self-Monitoring):実際の場面で自分のパフォーマンスが適切かどうか即時的に判断する能力を指す
反省(Reflection):過去の行動や結果について意図的に考察することで自己理解を深める手法である
「彼らでなく我々」の問題
「彼らでなく我々」という表現を用いて、自己評価の不正確さに対する過信が強調されている。多くの人は他者の自己評価の精度に懐疑的である一方で、自身の自己評価の精度に対しては楽観的である傾向がある。この認識のずれが自己評価の問題を助長していると分析される外部からのフィードバックの重要性
健康専門職における継続的な専門性の維持には、自己評価よりも他者からのフィードバックや外部評価が重要であるとされる。自己評価のみで自己の弱点を見つけることは難しく、他者の視点が効果的なスキル向上に必要であると結論付けられている教育的インパクトへの提言
本研究は、健康専門職教育において、自己評価の改善に焦点を当てるよりも、自己指導的評価の追求や反省、自己モニタリングの訓練に重点を置くことが有益であると提案するものである。これにより、自己認識と行動改善のためのより効果的な教育が実現される可能性が示唆されている
論文から得た学び
自己評価の正確性を過信することは教育上問題があると指摘されています。自己評価よりも自己指導的評価の追求や自己モニタリングを重視することで、医療現場における専門職のスキル維持が促進される可能性が示唆されました。
自己反省や外部からのフィードバックが重要であり、自己評価のみに頼ることは教育的に有効ではないと主張されています。その上で、自己評価の過信に関する問題を「彼らでなく我々」の現象として再定義し、自己評価を他の関連概念と区別する必要性を強調されています。
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