古米を美味しく食べる法その2
古米についての論点。
前回はどちらかと言うとやや後ろ向きな話でしたが、今回は前向きな話です。
同じ古米であっても、実は重宝される場合もあります。
ただご注意頂きたいのは、今回取り上げる「古米」とは「きちんと管理された一定の温度と湿度のもと保管されている質の良い古米」のことです。
前回取り上げたような「どのようにして食べれば良いのか」と悩むほどの「古米化」が進んだお米のことではありません。
ここで「古米」の定義について触れましょう。
法律的な定義はありませんが、業界的な定義はあります。
「古米」とは「梅雨を越したお米」を指します。新米は一般的には夏~秋に出るものですから、特に7月・8月は品種によっては「古米しか存在しない」状態が出てくるのです。
新米が出始める時期になると、米屋は古米の販売を意識的に早めるのが一般的です。この時期を「端境期」(はざかいき)といいます。
ただ、実は産地ではもっと早い時期から「古米」の販売を急ぐ傾向にあります。時期でいうと田植えが始まる前くらい…2月か3月頃です。
通常、田植え時に必要な資材(肥料や農薬など)を入れるため倉庫を整理するのですが、その際に場所ふさぎになっているお米を片付けます。
別途お米を保管するための定温倉庫を有している農家もいますが、それでも場所に限りがあります。例えば地元も集荷業者等に販売するのです。
そのように考えると、「古米」は「欲しくても手に入らない」時期があるのです。「古米」は実は貴重品なのです。農家なり米屋なりが意識して残しておかないと、この時期に売りつくされてしまうのです。そして、この「売りつくし」の意識は前述したような理由も含めて産地ほど強いのです。
ところが…消費地では「古米」について一定の需要があります。
そう、お寿司屋さんが欲しがるのです。
お寿司屋さんは古米を好みます。それは握りやすいからです。作業性の良さ、と言い換えても良いでしょう。時間が経過しても、シャリがべたつかず、ほどけやすい状態…。そういったお寿司屋さんが作りたいお寿司は、新米よりも古米のほうが実現しやすいのです。
お寿司屋さんがどこからお米を購入するかによりますが、仮に弊社のような米屋だとしたら、言われなくとも古米を確保しておく必要があります。新米が出たといってすぐに切り替えると、必ず怒られます。その辺りの感覚が、一般消費者とお寿司屋さんとでは異なるのです。
弊社の例で申し上げると、少なくとも年明けくらいまでは古米を確保しておきます。同じ品種でも新米と古米、両方を持つ時期があるのです。
新米は産地なり卸業者なりに問い合わせをすればいくらでも確保できますが、古米はこの時点では自分が確保するしかありません。そして少なくとも半年分は確保するわけですから、店内には収まりきれません。通常は業者や生産者に預かってもらうのです。
そして確保してある古米は、弊社にとっての既存顧客のお寿司屋さんの分のみ。新米時期にたまたま新規にお問合せがあっても、その時点では古米は準備できません。逆に7月くらいまでのお問合せであれば古米のご準備は可能です。
そして…「古米」は安くありません。むしろ高くなります。
それは前述したような古米確保のために必要な場所の家賃、そして夏を無事に乗りきるために入れておく定温倉庫の電気代。そういった経費が加算されるからです。
この話は少し意外と思われるかもしれません。
お店で時々古米を安く売っているところがありますが、それは前述のように新米が出る前に早めに売りつくしてしまいたいからです。そういった背景がなければ、古米はむしろ経費が掛かっているため高値になります。
それでも…お寿司屋さんは古米を必要とするのです。
古米が高く売れる…ということを米屋であれば知っているのですが農家は意外とご存じ無いようです。例えば「寿司米専用の農家」が存在し、常時古米を抱えているのであれば、恐らく問い合わせが多くなることでしょう。
きちんと保管されていれば、古米は極端に味が落ちることはありません。以前、お米が不足していた時に政府の備蓄米が市場に放出されたことがありました。そのとき放出されたのは「古米」どころか「古古米」だったのですが、それにもかかわらず非常に質が良いお米が出てきてため、米屋は皆、驚いたものです。
このように実は「古米には価値がある」ということをどうか覚えておいて下さい。
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「楽しくなければお米ではない!」
有限会社 小池精米店
三代目 小池理雄(ただお)
五ツ星お米マイスター
東京米スター
6次産業化プランナー(中央サポートセンター登録)
社会保険労務士
東京都米穀小売商業組合所属
東京都ごはん区メンバー
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