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新年度早々やる気にトドメを指してくるメール ついていけない田舎の公務員の憂鬱 

 4月3日(月)が今年度のはじめであった。
 よし、頑張るか!今日は電話での問い合わせも多く、異動して来たばかりの、トイレの位置すらわかっていない新人もいる。忙しくなるぞー!!
 メールチェックをすると異動してしまった上司から、一部業務の引き継ぎメールが入っていた。

「原田様
 昼間は忙しく、引き継ぎができなかったので、メールで連絡いたします。
1 この業務はこの段階まで終わりました。課題は〇〇と思います。
2 あの業務は一応すべて手続きは終わりました。
(略)

 つかぬことを伺いますが、原田様担当の業務について、〇〇法第○条第○号の特例の適用があり、20年間の適用が来年度切れますが、その処理は行っていましたでしょうか?」

 やっていない。というか、知らなかった。
 昨日まで隣りに座っていたんだから、ちょっと声をかけてくれればいいじゃないですか?
 もうデータは確定しちゃって、ゴメンナサイしかない。新年度早々最初お詫び電話か…やる気が失せるぜ。僕は暗澹とした。

 この場合、20年前に時限で適用した特例を、数多の過去の仕事の中から抽出し、外せばよかったのだが、前任者(20年前にいた担当者である)から言付けやらファイルの承継も受けてもないのに、ノーヒントでこの件を探り当てるのは無理だった。
 全件のデータから適用したデータを抽出すればいいって?そんな機能なんぞ、うちの不親切なシステムにはない。
 そりゃあ、代々引き継げって言うことだけど、どんだけ情報量があると思ってんの?小さくても町全体分である。
 
 それなのに、生まれる前の過去の遺産にも、今このときまでも町の担当者は責任を持てと言われる。
 3〜5年で毎回違うとこに異動で法律からシステムまで覚え直し、同じ部署だったとしても担当業務は毎年変わるのに。

 はぁぁ〜、疲れたな〜。疲れたよ。
 僕は年度初めの朝から嫌気がさしてきた。膨大な法律に、大量のデータに、変わらないであろうこの組織に。

 まぁ、(元になるが)上司は知っていたということは僕の能力不足なんでしょう!!はいはい、ゴメンナサイ!!さてと、謝るか…。

僕は電話を取り、ふとメールの送信時間に目が行った。

4月3日0:56。

4月3日0:56!!

 つまり、4月1,2日の土日、元上司は仕事をこなし、それでも終わらなくて4月3日(本日)未明までは役場に残ったのである。
 できる方なので、期待できない部下たちに割振るよりはと、一人でこなしたのだろう。
 そして、午前8時30分からは異動先の部署で何事もなかったかのように業務を行い、歓送迎会に行くのである。

 本日未明までで帰れたのか。僕には尋ねる勇気がなかった。
 はい、それは、言う時間がなかったのかも知れませんね……。ゴメンナサイ……。


 こうして、僕の僅かなやる気と使命感は、初日からボッキリと折れてしまったのである。


 
 
 

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