推薦図書について/穂村弘について

何から始めたらよいかわからないので、困ったときはお題に沿って書いてみようかなと思います。

タイトルの通り、推薦図書について。
推薦図書というか、推薦著者の話が多めになりそうだけどご了承頂きたい。
手元に置いておきたい、新刊を見るやレジに持って行ってしまう、そんな著者ってそれぞれいるかもしれない。私の場合はそれが穂村弘です。親愛なるほむほむ。

穂村弘との出会いは、大学時代。
歌人としてではなくて、私の場合はジャケ&タイトル買いしたエッセイ「もうおうちへかえりましょう」。
小さいころから本虫(ホンムシ)で、半ば何かに突き動かされるように、というか謎の使命感というかで本屋さんでは2-3冊(漫画含む)買っていて、内訳はたいてい「漫画新刊」「追ってる作家」「気になり本」(冊数前後あり)。
この回では「気になり本」がこの本でした。

文庫じゃないけどハードじゃない、紙のカバーにほむほむがカプセルホテルの一室(ひと穴)に座っている褪せた色合いのオシャレな写真。もちろんこの時この男性が誰かは知らなかったけど、クソサブカル文系本虫女子がジャケ買いするには十分すぎるジャケットでした。

そして中身ですよ。
ほむほむ、頼りなすぎる。視点が独特すぎる。絶望までの距離が近すぎる。人の目を気にしすぎる。かといって人に合わせる気はなくて、「ありのままの自分を好きになってくれる人しか求めてないけど惹かれるのはそんな僕に惚れたりしないはっきりとして芯の強い女の子」みたいなめちゃくちゃわがままでガチガチの自意識と自尊心に護られてる感じなんです。
こんな男に引っかかったらマジで超地雷、ダメ男、今の言葉では自覚なきモラハラというんですか、とにかく苦労しまくりそう。

なんですが、そうなんですが、ダメなんですよ。惹かれちゃうんです。当時はたち手前ですよ、そんな女子でも、おじさんなんですよ、そんなほむほむに母性感じまくりで惚れちゃうんです。
これってたぶん私がダメ男が好きってことを差し引いても結構多くの方が感じる感情なんじゃないかな。どうでしょうか。ぜひ読んでみて感想教えてほしいです。

一体なんなん、何がこんなにぐっとくるのこの人の文章、と思って調べてみたら、穂村弘は現代短歌の歌人だったのでした。
当時国語専攻で和歌や俳句なんかの授業をとってはいたものの、短歌、わからない。年寄りくさい。(歌人の皆様ごめんなさい)
でももう遅い。出会っちゃってるんですもん、穂村弘に。
エッセイストとしての穂村弘はすでに私の中で「追ってる作家」になっていました。中々置いてる本屋さんも少なかったですが、「世界音痴」「もしもし、運命の人ですか。」「現実入門」あたりを見つけ次第買って回りました。そしてどんどんほむほむに夢中に。


すでに穂村弘と見るやレジに持っていくサイクルができたころ出会ったのが、私の推薦図書(やっとここで本題です)「回転ドアは、順番に」です。

ほむほむほむほむ言っときながら、これは東直子さんとの共著なんですよね。しかもエッセイではなくて、短歌と短い文章で構成された連作。短歌入りの交換日記みたいな感じ。
何を隠そう、東直子さんも現代短歌の歌人で、触覚に訴えてくるような溶け合うような表現がブチクソしびれる歌を作る方なのですが、それはまた別の機会に。

こちらの本を私は、数か月ぶりに実家に帰省する夜行バスに乗る前の数時間の暇つぶしのために、東京駅の丸善で見つけてKITTEのベンチで読んでいました。
結論から言いますと、文章が入っていて読みやすくなっているとはいえ、殆ど歌集のそれにあまりにひりひりと感動し、私は泣いていました。
大荷物を持ったうら若き(当時)乙女が人の行きかう東京の夜に本を手に涙を流す、という自分の状況に酔いつつ、妙にしっとりした気持ちで東北行きの夜行バスに乗り込んだのを覚えています。

10に区切られた目次にそって、「出会い、恋に落ちて、好きになっていって、喧嘩して、仲直りして、一緒に風邪をひいて、結ばれて、そして…」が描かれています。文章なのですが、本当に「描かれている」という印象。
熱に浮かされるみたいにうっとりと、しんしんと胸に染みて溜まる感じは小説とはまた違った心の動きでした。

57577にこれだけ感情や情景が詠み込めることと、限られた字数でドンピシャな表現を仕掛けてくることに殴られたような衝撃を感じつつ、エッセイでの言葉選びがたまらないのはやっぱり歌人だからだったんだ…と実感、短歌を年寄くさいと思っていた自分を殴りたくなりました。

そこからは想像に難くないと思いますが、歌集を買い漁り、評論を買い漁り、どんどん出版されるエッセイも買い漁り、何なら東直子さんの作品も手を出しつつ今に至ると。
現状翻訳作品と絵本はまだ買い渋っていて、どうしたもんかと悩んでいるところです。

もし、「ストーリー性あるの読みたいけど小説って長いからちょっととっつきにくいんだよな~」とか「なんか少女漫画じゃないものでキュンキュンしたい」とか「短歌?しらんけど年寄くさいよね」とか思っている方がいたら、ぜひ一度読んでみてほしいなと思います。

回転ドアは、順番に。

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