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2回目のスタートライン☆

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#短編小説

【短編小説】2回目のスタートライン☆最終話

【短編小説】2回目のスタートライン☆最終話

エピローグ
アキの気持ち

ああ、驚いた。マサトったらとんでもないことを言い出すんだもん。
詳しく聞いたら、カスミに焚きつけられたようだし、タクミまで賛成したっていうんだから、みんなどうかしてる。

2人きりで話したいって言うから、ちょっとドキっとしたし、チエなんか「恋バナか恋バナか」と大騒ぎだったけど、マサトの話はそんなもんじゃなかった。

まさかの「オレ、独立しようかと思う」発言だった。

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【短編小説】2回目のスタートライン☆第9話

【短編小説】2回目のスタートライン☆第9話

チエの場合②~いろいろな幸せの形

トラブル?
「す、すみません。シバサキさんは今日、お休みなんです…」

無期雇用派遣社員として派遣された営業部。

サポート役のシバサキさんがお休みの時に限って、突発的なトラブル発生! どうしよ、ヤバくない?

どうやら前から依頼されていた書類があって、取引先の都合で約束していた日よりも早く必要になったらしい。

…って、今日中にほしいってこと? え、ムリムリ。

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【短編小説】2回目のスタートライン☆第8話

【短編小説】2回目のスタートライン☆第8話

チエの場合①

女の友情?

あ~あ。もうやってらんないよ。

結局、飲み会の勢いであの二人に強引に申し込みさせられちゃった、無期雇用派遣サービスの。

そしたら、書類選考に通っちゃってさ。これから説明会ってワケ。

だいたい勝手すぎるじゃん。別に本気で働きたくないんだし。友情の押し売りじゃん、好意の押し付けじゃん。

あ、いちおう自己紹介しとくね。私、チエ。

特技は笑顔。趣味は買い物とネイル。

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【短編小説】2回目のスタートライン☆第7話

【短編小説】2回目のスタートライン☆第7話

マサトの場合②

自己開示

「マサトおまたせ~。」

陽気な声でタクミが到着した。

まったく、こちらはお前が気を遣って席を外したと聞いたばかりなんだよ。「おまたせ」は白々しすぎて、俺は思わずそっぽを向いた。

カスミはあいかわらず、シレっと「遅いじゃない」などと返している。

「じゃあ、3人そろったところで、恋バナでもする?」

「『乾杯する?』みたいな勢いで言うなよ。で、タクミ、仕事辞めたん

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【短編小説】2回目のスタートライン☆第6話

【短編小説】2回目のスタートライン☆第6話

マサトの場合①

密かな想い

…どうして、タクミまで来ることになってんだ? 俺はカスミと二人きりで話をしたかっただけなのに。

タクミがぶっ倒れたって知ったのは、徹夜明けでやっと会社の仮眠室に入った時だった。

カスミは俺たちグループのメンバーに片っ端から連絡を入れていたらしい。

グループLINEで「タクミが倒れた。実家の連絡先、だれかおしえて!」

そして、深夜に俺あての不在着信が3件。

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【短編小説】2回目のスタートライン☆第3話

【短編小説】2回目のスタートライン☆第3話

アキの場合②~歩き出すと見えるもの
はじめての転職活動

「…では、当サービスを利用しようと思ったきっかけはありますか?」

「ネットで調べて…、今の会社の働き方がちょっと疑問だったので、とりあえず相談だけしたくて…」

「分かりました。初めての転職なら、まずは情報収集したいですよね」

「転職した方がいいかどうかもまだ、決まっていないんです」

「いいんですよ、ゆっくり決めましょうね」

高い天

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【短編小説】2回目のスタートライン☆第2話

【短編小説】2回目のスタートライン☆第2話

アキの場合①
再会

夜の繁華街、私と同じくらいの年代のグループが楽し気に行き交う。目指す店は学生時代に仲間と遊び歩いたエリアにあった。

今日は、高校時代に仲の良かったグループが集まる日だ。

私は二年くらい会わなかったが、グループの中でもっともマメなチエが声をかけ、定期的に会っているらしい。

安っぽい格子戸を開けて、店内に足を踏み入れると、店員さんの「いらっしゃい」の掛け声と同時に、甲高い声

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【短編小説】2回目のスタートライン☆第1話

【短編小説】2回目のスタートライン☆第1話

プロローグ~別れと再会の時
突然の別れ

私の目の前にいるこの男はいったい誰だろう。

ちょっと茶色がかった優し気な瞳、その色に合わせたように染めたゆるいウェーブ付きの髪。

この2年間ほど、一番近くで見続け、見慣れた彼の姿が、まるで他人のように見えた。

「だから、もう終わりにしたいんだよ、アキ。君には悪いけど」

私が何も反応しないから、彼はちょっといらだったように少し大きな声を出した。

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